イントロダクション
「全く、これ、設定変えたほうが良さそうね。」
作者はメイザースの紹介を読みながら言った。
「どういうことですか?」
なんだか面倒になりそうな予感に私は聞いた。
「メイザースって、この人、結構、気のいいおっちょこちょいな人のように思えたんだもの。」
作者はは眉を顰めた。
「おっちょこちょい…まあ、否定はしませんが、それにしても、設定って、どう変えるのでしょう?」
「卯月の設定をメイザースによせるわ。丁度、100年の年の差にしてみようと思うの。」
作者は私を見て自分の意見がいいものなのかを値踏みしてから話を続けた。
「なんだか、アブラメリンより、メイザースが気になってきたの。この人、下町生まれで決して裕福な家の子ではないのよね。なのに、なんでこんなに翻訳の仕事が舞い込んできたのかしら?」
作者は眉間に皺を寄せて私を見る。
「才能があるからではありませんか?彼は数ヶ国語を扱えたようですし。」
「そうかしら?ドーンのメンバーは大卒のエリート金持ちが多いのよ?メイザースの言語能力以上の人間は他にもいたと思うわ。」
「確かにそうでしょうけれど。でも、図書館で本を探したり、翻訳する時間がエリートにはないのではないでしょうか?」
「そうね。確かに、暇人じゃなきゃ、そして、古本の山から目当ての本を探すセンスも必要よね。」
と、作者は少し考える。
「それと、卯月の設定と関係があるのでしょうか?」
先の見えない話に少し心配になりました。
「あるわ。私は一応、公募に応募しているのだから。書籍化か、漫画の原作になるものを考えないといけないもの。ひいては、読者離れをなんとかする策でもあるんだよね。」
「書籍化、ですか。」
次の言葉が出てきません。
「どちらかというと、漫画の原作かしら?これ、わりといいセン行きそうな気がするの。漫画の原作として。」
「漫画の原作ですか?」
「うん。今までメイザースって、なんだかすごい魔術師で、なんかわからない人って感じだったんだよね。
華もないし、自己完結しているような、浮世離れしているよくわからない人って感じで。
でも、この本を見ていたら、なんだか、メイザースの人となりで藩士が作れそうな気がしてきたの。」
と、真面目にいう作者にまだ、目次も読んでいないのに?と、ツッコミを入れられずにいる私。作者は無言の私に苦笑しながら続けた。
「1888年と1988年って、似ている気がするんだよね。猟奇殺人があったり、高度に社会の構図が変わってきたり。魔術とか、サブカルチャーが浸透してきたり。
だから、1988年の翻訳する人物を1888年のメイザースと同じ歳にして、1988年の時代を思い出しながら書いてゆくと、何かが見えてきそうな気がするのよ。」
作者は言った。
作者は考える卯月(もう、別の名前をつけて欲しい)は、メイザースと百年違いの1954年生まれの少女である。
「昭和29年生まれ現在71歳ですね。」
私は早見表で調べた。
「で、1988年は何歳になるの?」
「34歳ですね。英語の授業のネタは使えませんね。」
私は笑って、そして、この人物の名前を考えることを強く提案した。
「わかったわ。好きに名付けて頂戴よ。」
と、作者は諦めた。
「では、安直に英子にします。昭和29年生まれ34歳英子の物語で行きましょう。」
私は英子の人生を書き記した。
英子は、越地吹雪さんの『愛の讃歌』がラジオで流れる1954年、浅草に生まれた。
父はトラックの運転手をしていたが、事故で早くに亡くなり、母子家庭で育つ。
中学を卒業して先生の紹介で家から近い工場の事務職として働き始めた。
1969年アポロが月に行った年の話である。
地味だか勤勉な英子は会社でもマスコット的な存在として愛されている。
歌が好きで、度々同僚と歌声喫茶にゆく。
1977年気象衛生ひまわりの打ち上げがあり、アメリカではボイジャーが太陽系の惑星の探索を目的に打ち上げられる、宇宙が注目される年であったが、23歳の英子は舞い込む縁談で心がいっぱいなのだった。
そんな時、ふと入った占いの店にハマり、自分でも占いを始める。
そこで、オカルトの修行を重ねるうちに人望を集めてとうとう、1987年、会員制のスピチュアルサロンを創設する。
「なんだか、英子のこの後が心配だよ。」
作者はため息をつく。
「しかし、メイザースの経歴を模倣するとこんな感じになると思うのですが。」
「そうね。1887年マスターメーソンとか言われるとなんか、かっこいい気がしたけれど、スピチュアルサロンとか書くと、怪しい感じがするわね。」
作者は遠い顔をした。
1987年33歳の英子はオカルトブームに乗って、占いの太客をパトロンにサロンを開いた。
1887年33歳のメイザースがマスターメイソンとなった。
英子のパトロンの名前は知りませんが、メイザースはウイリアム・ウェストコットという検査官が面倒を見てくれたようだった。
メイザースは1882年にウイリアムと知り合い、1885年に母親が亡くなるとウイリアムと同居した。
英子も母親を失くすが、パトロンと住んでいるかは私にはわからなかった。
1887年あたりからメイザースは古書の翻訳をはじめ、100年後の1987年、英子も魔術書の洋書の翻訳をかじめた。まだまだ、情報が行き渡らない時代。外国の情報をいち早く入手して発表できるかがサロンの人気を左右することだった。
「なんだか、英子が霊感商法とかに流れないか心配になってきたよ。」
作者が少し寂しそうに呟いた。
「確かに流行りましたからね。でも、メイザースの人生とリンクしますから、騙されても、騙す方でなはいと思いますよ。」
私は慰めにもならないそんな言葉を作者にかけた。
「そうね。この辺りでクロウリーに当たる人物が英子にも登場するのね。そして、サロンが分裂するんだわ。英子、海外逃亡するのかな。アメリカとイギリス、どちらに行ったのかな。」
作者は心配そうに私に聞いた。
「それは私には分かりかねますが、まずはアブラメリンのページを開きましょう。」
そうです。まだ、目次も読めない状況で、ここまで話をもれるのだから、本当に。
呆れてもしまいますが、私も英子の人生が気になってきました。
その年に流行っていた曲は実名で出してもいいとは思うのだけれど(歌詞はダメだが)
キャラクターが好きとか嫌いとかになると、それは許可がいるのかな?そこはわからないわ。
英子が歌声喫茶でピンキラとか歌っているとかはやはり書けないんだろうな、と、思った。
懐かしいな。ピンキーとキラーズ。いい曲だった。




