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一般生徒Aの俺が学園のお嬢様達から好かれている。何で?  作者:


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第9話 激情

「わ、私達を笑いに来たの?」


 すっかり怯えた溝口は声を震わせながら竹之内さんに問う。お前はビビりすぎだ。竹之内さんは天使だぞ。


「そんな事は無いですよ。華道の経験が無い方もいますので見回っているんです」


「そうなのか。悪い、俺達まさに華道やったことないから助けて欲しいんだ」


 ああ、それならと言って竹之内さんは俺の後ろに周った。俺は一瞬、何が起きたか分からず反応が遅れる。


「え、何で後ろに?」


「私が後ろについて一緒にやった方が分かりやすいかと思いまして」


「そ、それなら、お願いします」


 俺が答えると竹之内さんは何故か後ろから椅子に座っている俺に抱きつくように覆いかぶさり俺の腕を持った。


「え、ええ、何で?」


「?この方が教えやすいかと思いまして」


 案の定、俺は一部の気が付いているクラスの奴らから睨まれている。ここに太田さんがいなくて良かった〜。ちなみに彼女は茶道の方に行っているらしい。って言ってる場合か。また俺はクラスメイトを敵に回している……。


「ちょっと、何やってんの?」


 俺の隣の席の溝口が立ち上がって抗議している。お前も止めてくれ、目立っちゃうだろ。


「戸松君に教えているんですよ?」


 竹之内さんは天然なのかわざとなのか分からないが俺を惑わすのを止めてくれ〜。


「!!じゃあ、先に私の方でやって戸松はその様子見てれば良いでしょ」


 溝口は何故か慌てて自分の方からやって欲しいと喚いた。何で焦ってんだ、コイツ。


「分かりました。溝口さんの方からやりましょう。戸松君、見ていてくださいね」


「はい……」


 竹之内さんは溝口の時は何故か正面に周った。え、何で俺の時と違うんだ。ああ、溝口がフェンシングで大事な手に触れちゃいけないからかと納得する。


「まず、色が目立つ華を真ん中に配置するようにしましょう」


「ほうほう」


 その後、竹之内さんは俺達に親身になって教えてくれた。勿論、先生にも前もって教わっていたがこうやって少人数で教えられるとぜんぜん違う。溝口の後はまた竹之内さんは俺の後ろに立って教えようとしていたが溝口の必死の抵抗と俺も横で見ていたから大丈夫と伝えて事なきを得た。問題はその授業後にあった。


「なあ、溝口」


「何よ?」


「いつも俺が睨まれているのは気の所為か?」


「なわけないでしょ」


 休み時間、俺が一番後ろの中央の席だから教室中を見回たせるのだがそれが良くなかった。おかげでクラスの皆から睨まれているの分かるからね!!じゃないわ、これどうするんだよ。竹之内さんに言われたように友達作るの無理じゃないか。


「戸松のせいで私まで居心地が悪いんだけど」


「それは知らん」


 溝口は足を伸ばして俺のすねを蹴る。お前、まじでそれ急所だから止めてくれ。溝口は俺を蹴って満足(?)したのかスッキリした顔をしている。


「まあ、別にどうでも良くない?」


「え?」


「よく知りもしない奴から嫌われてるのなんて気にしなくて良いじゃん」


 お前、さっき居心地が悪いって俺に文句言ってたじゃんと思ったがそれは言わない。今、俺のことを励ましてくれているから。やっぱ口は悪いがコイツは優しいな。俺の涙が頬を伝う。


「おお、心の友よ」


「え、泣いてるの。キモ」


 やっぱりコイツの事許せねえかなあ!!まあ、気を使ってくれてありがとよ。


「いえ、戸松君は迂闊なので気にしてください」


「あっ、太田さん」


 太田さんは俺達の席まで来てメガネをキランと光らせた。溝口はまたゲッと嫌そうな顔をしている。お前は露骨すぎるから自重してくれ。


「入学早々、溝口さんを籠絡したと思ったら次は美帆様とは許せませんね」


「戸松、ろうらくって何?」


 溝口がアホで助かった。意味を知ったらそんな訳無いでしょってブチギレるだろうからな。まあ、いいや溝口はほっとこ。


「コイツを籠絡なんてしていないし、竹之内さんはもっとあり得ないだろ」


「フッフッフッ、だったら私と美帆様の憩いの時間にアナタの話題が出るの止めていただきませんか」


「それ、俺じゃなくて竹之内さん本人に言って欲しいんだが」


 何故、竹之内さんが俺の話をするのかは知らないけど、それこそ君たちの問題なのでは無かろうか。


「いえ、ここの所、あなたと仲が良くなってから美帆様は変わってしまわれた」


 何かドラマの姑みたいだなと思った。息子の結婚相手に嫌味ばっか言うだろ。


「そこでお願いです。竹之内さんと距離を空けてくれませんか?」


 太田さんは頭を下げてきた。まあ、彼女だけじゃなくクラスの総意なのだろうということは分かる。今もクラスメイト達が心配そうに太田さんを見ているからな。


「頼む相手が違うだろ」


「え?」


 だが、そんな事、俺には関係無い。勝手に恨まれてこっちが苛ついていないとでも思ったのか。


「それなら竹之内さん本人に俺と近付くのを止めたほうが良いと伝えるべきだろ」


「うっ……」


 太田さんは顔を上げて俺の顔を見る。そして俺の表情を見て少し怯えているのか目を逸らした。


「結局、お前らは彼女に嫌われたくないけど俺との距離を離したいという考えなんだろ。甘く考えすぎなんじゃないか」


「そ、それは……」


 太田さんはどうすればいいのか分からないのか慌てふためいている。


「別に俺と彼女が友達でお前らに何があるっていうんだ。別に付き合ってるわけでもあるまいし」


「……」


「クラスのお前らもだ!!」


 俺は教室のやつらに向けて叫ぶ。太田さんを代表にさせて代弁させているのだろうが彼女一人に嫌なことを言わせるコイツらもクソだ。


「戸松!!」


 俺が話している所で溝口が俺の腕を引っ張る。溝口が苦い顔をしているのを見てハッと我に返る。あれ、俺今、何を言った?そして太田さんの方を見ると彼女は泣き出してしまっていた。


「ご、ごめん!!泣かせるつもりは無かったんだ。み、溝口どうしよう?」


「ええ!?私に振らないでよ!!」


 俺と溝口は太田さんを必死に泣き止ませる事になったのであった。

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