第7話 君はどうしたい?
「えっ、戸松君って溝口さん以外友達がいないんですか?」
「そうハッキリ言われるとダメージが凄いんだけど……」
学校の話をしていると友達の話になり白状させられた。事実なんですけど、しかも今無視されてて実質、友達0なんですよね。いや、中学まではいたんだよ。本当だよ?
「どうしてです?他の方とは合わなかったのですか?」
「……、他の奴らと価値観が違いすぎて」
「?」
竹之内さんは心底不思議そうな顔をして首を傾げている。まあ、これだけじゃ意味が分からないよなあ。俺はため息をついて続きを話す。
「いや、俺の家ってなんというか普通なんだよ。でもこの学校の人達って、……言い方が悪いけど、お金持ちの家の人が多いから、それで話についていけないっていうか」
正直、お金持ち連中の中でも、更に別格の竹之内さんにこの話をして伝わるかは分からないけども……。俺の話を聞いて口元に手をやって考えているようだ。何と返事をするか悩ませてしまっただろうか。
「気分を悪くさせてしまったら申し訳ないのですが、それは戸松君が諦めてしまったせいではないでしょうか」
「え?」
俺は予想外の返答が来たので素直に驚いた。俺が諦めた?何を諦めたっていうんだ。
「周りの人達と話が合わないからといって交流することをです。勿論、それは周囲の人にも言えることだと思いますけど」
「……」
確かに、俺は周囲の奴らがボンボンだって馬鹿にして距離を作っていた。それで話の合う溝口とばかり話していた。だから俺の周りに人がいないのは自分のせいなんだ。竹之内さんの一言に俺はハッとさせられた。
「すみません。でもそれを責めている訳ではないんです」
「というと?」
「私達はまだ高校生。気の合う人とだけ付き合っても何も悪くありません。そうやって友達と付き合う人が多いと思いますし気になさらなくても良いかと」
「……」
俺は竹之内さんを馬鹿にしていたわけではない。だが、こう話してみると俺が思っていたより大人な考えを持っている事に気付かされる。
「ですが私達の様にこうやって一緒にいれば話は出来ますよ。今日私と一緒で退屈でしたでしょうか?」
「いや、結構楽しかった」
竹之内さんはそれは良かったですと言ってお茶を飲んだ。こうやって話してみると分かる。彼女には敵わないなあと感じた。もしかしたら勉強は俺のほうが出来るのかもしれないが考え方が進んでいる。そんな気にさせられた。
「それに友達は溝口さん一人じゃないでしょう?」
「え?」
「私達です。もう友達でしょう?」
そう言って彼女は微笑んだ。俺はそれにつられて笑う。
「ああ、そうだな。友達だ。だから無理に奢る必要は無いんだ」
「ふふっ、なら仕方がないですね。ですが私が付き合わせる事は間違いないので、無理が出たら言ってくださいね」
俺達はその後、片付けをして外に出る事にした。竹之内さんは昨日店員に片付けをしてもらったらしくこの店のゴミの捨て方などを教える事となった。
「この後は竹之内さんどうするの?」
「今日は帰りましょうか。戸松君の勉強時間を減らすのも抵抗ありますし」
そういえば、俺が新入生代表の挨拶をしたから俺の成績の事、暗にバレているのか。入学式の新入生代表の挨拶は成績優秀者がなることが多いと聞くが芦月学園も例に漏れずそうだったのだ。おかげで入学式は無駄に疲れた記憶がある。
「じゃあ、また明日!!」
「ええ、またあし……、あっ」
竹之内さんは何かを思い出した様にスマホを取り出した。一体何の用だろう。
「すみません。連絡先を交換したいです」
「えっ、ああ。そういえばそうだったね」
そうだ、待ち合わせ場所決めてないせいでエラい目にあったんだった。これで連絡すれば色々やりやすくなる。メッセージアプリを出してお互いの連絡先を交換し合う。
「……、ところで溝口さんの連絡先って知っているんですか?」
「ああ、知ってるよ。といってもあんまりメッセージ送らないんだけど」
俺がそう答えると竹之内さんは一瞬、何かを考えたのか真剣な顔になった後、ぱあっと笑顔になった。
「じゃあ、私が友達と連絡先二号ということですね!!」
「えっ、俺、友達少ないって煽られてる?」
その後は少し話をした後、解散になった。俺は明日から他の奴らとも交流してみようかと思った。だが、その前に話をしなきゃいけない奴がいる。
「溝口、ちょっと話いいか?」
「なんですか。リア充」
次の日、朝礼の前に溝口に話しかけた。そう、俺が話をしなきゃいけない相手はコイツに決まってる。
「俺が何かやっちゃったんだと思うんだよ。悪かった」
「別に戸松は何も悪いことしてないじゃん」
そう言いながらも何故かそっぽを向いている。じゃあ、何でそんなに不機嫌なんだよ。だが俺は諦めないぞ。竹之内さんにそう教わったんだ。
「そうなのか?でも俺さ、お前と話せなくなるの嫌なんだよ」
「は、はあ?」
俺は本当に思っている事をぶつける。
「この学校では溝口が数少ない友達なんだよ。だから機嫌直してまた俺と話してくれないか?」
「な、恥ずかしいこと言うね……」
溝口はちょっと引いているが反応は悪くない。これならいける。
「溝口、お前が必要なんだ!!」
何故か、溝口にすねを蹴られた。




