第59話 ハーレムに追加させて
その後、朝のホームルームが終わった後の事だった。桑原さんが俺の席まで来たのだ。桑原さんは何を考えたのか俺の顔に近付き耳打ちをしてきた。
「ウチの事、三人に紹介してもらえへん?」
「あ、ああ」
桑原さんが耳打ちしている間、溝口が俺の事を睨んできたのは言うまでもない。
「溝口、さっきも言ったが桑原さんを紹介したいんだけど」
「……、どうも」
溝口は警戒しているのか何処かよそよそしい。
「よろしく!!近くで見るとほんまにべっぴんやね」
桑原さんは溝口の周りをクルクル周って観察しだした。溝口は不思議そうな顔で固まっている。
「く、桑原さんってそんなキャラなんだね……」
「あ〜、見た目で判断したやろ?偏見やで」
俺にはグイグイ来る溝口だが圧倒的な陽キャな桑原さんにタジタジになっている。ぷぷ、おもしろ。
「ふふ、皆さん楽しそうですね」
「竹之内さん」
竹之内さんと太田さんがこちらの席までやってきた。どうやら俺達の様子を見に来たようだ。
「あっ、日本を代表する竹之内グループのお嬢さんやんな。知ってるで」
「ふふ、モデルで大活躍の桑原さん程有名ではないですよ」
おお、溝口とは対照的に竹之内さんは何処か余裕そうだ。まあ色々な相手と会ってきたんだろうなあ。
「そして太田さんはなんやっけ。茶道の家元のお孫さんやんな」
「……、よくご存知ですね」
へ〜、太田さんって茶道の家の人なんだ。とそんな事を考えていると一年一組を代表する女子四人が並んでいる形になる。何故か俺の近くで。
並んでいて分かったが桑原さんはモデルだけあって背が高い。俺と同じ170センチくらいありそうだ。ちなみに竹之内さんと太田さんが160センチくらいだろうか。溝口がそこの丁度真ん中くらいなので165センチといった所か。
「いや〜、こうも美人が揃うと壮観やね。な、戸松君?」
「は?そ、そうだな」
急に俺に振られて慌ててしまう。急に俺にそんな事を聞かないでくれ。そのせいで溝口と竹之内さんが俺の事を凝視している。
「三人にも聞きたいんやけど。ウチ初めて学校来たから友達おらんねん。このグループ入れてくれへん?」
「ああ、そうですよね。私も桑原さんとお話してみたいと思っていたので」
「そうですね」
竹之内さんと太田さんは笑って桑原さんと握手をする。そして黙っている溝口をチラッと見る。桑原さんを警戒していたみたいだが友達が欲しいという純粋な願いだと思ったのか最後に溝口も握手をした。
「よし、戸松君ハーレムに追加させてもらえて嬉しいわあ」
「待て待て待て」
桑原さんが急にぶっこんできて思わず突っ込んでしまった。笑いのハードルが高そうな関西人にツッコミをするなんてしたくないが聞き捨てならない。
「どうしたん?」
「どうしたんじゃないよ。何そのネーミングは」
何だ、俺のハーレムってこのグループはそんなんじゃないぞ。
「いや、男子一人に女子四人やから冗談やってんけど。もしかしてほんまにハーレムなん?」
「私は違います」
太田さんが即座に否定するが私はってなんだよ。
「わ、私は……えーと」
「ハーレムじゃない!!」
溝口と竹之内さんは照れているのか顔を赤くして否定している。君達、落ち着いてね?
「はは、思ったより面白いことになってるみたいやね?」
「……」
桑原さんは俺の顔を見て笑っている。ていうか今のやり取りで何となく察したというのだろうか。こわっ。
「ふむふむ、そしたらおもろい提案をしましょう」
桑原さんはふっふっふと笑いながら何かを言おうとしている。何かちょっと嫌な予感がする。
「もう今月から夏休みやな」
「そりゃそうだな。七月だし」
そう、二週間後には夏休みなのだ。俺は自宅で勉強を進める感じになりそうかな。一年から塾に通うようなお金無いだろうし。
「ウチら、五人で何処か旅行でもしたいと思わへん?」
「りょ、旅行?」
ていうか桑原さん、さっき友達になったばかりなのに旅行の提案をするだなんて陽キャ過ぎるだろ。わざわざ俺に頼らずとも友達出来ただろうに。
「泊まりで……」
「温泉……」
溝口と竹之内さんが何故か独り言を言い出してしまった。俺達が呼びかけても届かない程、トリップしてしまっている。その様子を見た桑原さんはまた俺の顔に顔を寄せて耳打ちをしてくる。
「これでドキドキハーレム旅行やね」
「……、ハーレムじゃない」
桑原さんは二人の気持ちを理解したうえでお節介をやこうとしているみたいだ。さながら恋のキューピット役といったところか。それを見て太田さんはため息をついている。それにつられて俺もため息をつくと女子四人から一斉に視線を浴びた。誰か助けて。
そして俺達の関係性が変わる夏が始まった。
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