第57話 関西弁の彼女
「さっきはほんまにありがとう」
「いや、大した事はしてないから……」
あの後、流れで一緒にハンバーガーショップに立ち寄る事になってしまった。そしてこうやって向かい合って座っている訳なのだが。ていうか本当にこの人、美人だな。すらっと長い金髪にキリッとした目つきの美人で店内で滅茶苦茶目立っている。
「何で助けてくれたん?」
「いや、困っている様子だったから」
泣きそうな女の子を黙って見過ごすほど廃れてはいない。そう答えると桑原さんは「へえ」と言いながら腕を組む。
「流石、美人を三人侍らせてるだけあんね」
「……、侍らせているわけではないです」
傍目から見たら、溝口、竹之内さん、太田さんの三人を横に侍らせている男に見えるのか。ちょっとだけショックだ。
「まあ普段の様子を知らんからあれやけど、あの中の誰かと付き合ってるん?」
「……、いや付き合ってないよ」
まあ二人から告白されているのだがそれを伝える必要は無いだろう。大騒ぎになっても困るし秘密にしてた方が良いだろうな。
「そうなんか。ウチ、初めて学校来たから状況知らんねん」
「そういえば見たこと無かったもんな。そんなに仕事忙しいの?」
「あ、モデルってことは知ってるんか。撮影でアメリカに行ったり地方周ったりやな」
「あ、アメリカ……」
本当に凄いみたいだ。海外でも活躍してるようなスーパーモデルと俺は向かい合って話しちゃってるのかよ。
「勿論、通信教育とかは受けてたんやけど。流石に全く学校に行けへんのもマズイからって仕事休みにしたんよ」
まあ、実際七月まで学校へ来てないわけだし。全く通わないというのも嫌だよなあ。
「それで初めて登校したら誰とも話せんくて辛かったんよ」
「そうなの?女子が話しかけに行ってたのをあしらってたじゃん」
そうなのだ。流石に初めて登校した子を不憫に思ったのかクラスメイトが話しかけに行っていたが桑原さんは「別に……」といった具合で一蹴していたのを見た。
「あれはただ、緊張しとっただけで……」
「ええ……、でも俺とは普通に話してるじゃない」
先程から俺とは滞り無く話しているから会話が苦手という訳では無さそうだが。
「助けてくれたし優しい人だって分かってるから平気」
「それは良かった」
そう言って貰えると素直に嬉しいな。人助けをするというのは気分が良いし。
「助けてもろてあれだけど、お願いがあるんやけど」
「ん、何?」
桑原さんのお願いというのは何だろうか。俺は彼女の言葉を待つ。
「君の仲良うしとる女の子達と私を友達になれるよう紹介してくれへん?」
その後、話を聞くに学校へ行っていなかったので友達がいない。それで丁度俺と話をしたのだから友達を紹介して欲しいという事らしい。当然、断る理由はないな。
「おっけー。良い奴らだから仲良くなれると思うよ」
「ほんま?楽しみやね」
見た目はプライド高そうな美人だが話してみると話しやすい関西人って感じだしみんなと仲良くなれそうだ。
「そうだ。自分、連絡先教えてくれへん?」
自分?ああ、関西の人って相手の事を自分って言うらしいから、俺の連絡先を教えて欲しいという事か。俺はスマホを取り出してメッセージアプリで俺のQRコードを出して桑原さんのスマホで読み取った。
ピコンと音がしたのでスマホを見ると連絡先に桑原由香里という名前が追加されたのを確認する。
「ありがとうね。で聞きたい事があんねん」
「俺が答えられる事だったらなんでも」
俺は彼女の言葉を待つ間、喉が乾いたのでジュースを飲む。
「であの三人の中で好きな子誰なん?」
「……」
俺は返答できずに下を向く。いや、友達としては三人共好きなんだよ?でも桑原さんが聞きたいことって絶対それじゃないだろうなあ。
「おっ、やっぱり好きな子いるん?」
「いや……、恋愛的な意味で好きな子は……、まだいない」
まだと付け加えたのはこれからどうなるか分からないからだ。実際の所、みんなに惹かれているのは否定しきれない。ただ俺がそれに見合っていないと思ってるだけで。
「へえ、そうなんや」
桑原さんはジュースを音を立てて飲む。あんな可愛い子達を前にコイツは何を言ってるのかなどと考えているのだろうか。
「じゃあ、ウチにもチャンスがあるって訳やな?」
「ハ、ハア?」
「あはは、冗談に決まっとるやん」
桑原さんは笑っている。なるほど、これが関西ジョークというやつか。
「まあ、でも助けてくれた時は格好良かった」
「……」
桑原さんがニコッと笑いながらそう言っているのを俺は直視できなかった。
とまあ次の日、桑原さんをあの三人に紹介する事になったのだが俺の想像とは違いすんなりとはいかないのだった。
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