第5話 いざ、再戦
その後、一日俺は針の筵状態だった。それはそうだ。誤解が解けないままクラスメイトから一方的に恨まれている。更に辛いのは溝口までもちょっと不機嫌な感じがする所だ。え、もしかして俺って味方がいないのか。
授業中、俺はその元凶である竹之内さんを見る。すると彼女もこちらを見ていたのか笑いかけたように見えた。気の所為か?と思ったら舌打ちが隣の席から聞こえてきた。音の方向を見ると溝口がこちらを睨んでいる。他のクラスメイトは兎も角、何で溝口までそんな感じなんだ。おかげで昼休み、俺が食堂へ行く時、何時もついてくる溝口が机から動かなかった。
そんなこんなしている内に放課後の時間になってしまった。俺はため息をついて竹之内さんの方をチラッと見る。すると彼女がこそっと教室の外へ指さした。なるほど、外へ出ろという事か。
「溝口、じゃあな」
「リア充。滅びよ」
お前は魔王か。溝口は立ち上がって教室を出ていった。そのまま部活に向かったのだろう。では俺も用事を済ませなければな。竹之内さんが外へ出たのを見計らって少し経ってから追いかける。流石に校内は目立ちすぎるから外で合流にしてくれたのか。助かるなと思って学校の外へ出る。
歩いていると何故か校門の辺りがざわざわしている。何だとよく見てみると校門の前で待っている竹之内さんが見えた。え、校門前で待たれるのはやばすぎる。何なら教室より目立つ。俺は竹之内さんに必死に指で外を指して出てくれと合図を出す。彼女はそれに気付いたのか、ニコッと笑い俺の方へ近付いて来た。いや、そうじゃない!!
「戸松君!!」
「ひゅ〜」
俺は鳴らない口笛を吹いて自分じゃないと誤魔化そうとする。だが、竹之内さんは俺の腕を引いてきた。
「さっ、行きましょう」
「ああ、うん」
俺は諦めてなすがままに引かれる。当然、周囲は天下の竹之内さんが俺のような得体のしれない男を連れているのかガヤガヤしている。校門を出て駅の方向とは逆の道を少し歩くと周りの芦月学園生も減ってきたのか落ち着いてきた。
「竹之内さん、何で校門で……。おかげでめっちゃ目立ってたよ……」
「ふふっ、お友達と待ち合わせやってみたかったんです」
そこには満面の笑みの竹之内さんがいた。なるほどね。悪意は無いと。
「待ち合わせるのは良いんだけど何処か目立たないようにしてもらえると」
「それだと合流出来ないじゃないですか。連絡先知らないんですから」
確かに〜、すっかり失念していた。あらかじめ、合流場所を決めておかなければいけなかったのが俺のミスか。
「まあ、今日は昨日のお店に行くのでそこで待ち合わせでも良かったんですけど」
「え?竹之内さん、二日連続になっちゃうけど良いの?」
確かに美味しい店だが二日連続で行くほどハマったというのだろうか。
「何言ってるんですか。戸松君が昨日食べ損なっているじゃないですか。今日はその分ご馳走いたします」
確かに朝、そんな事言われたが本気だったのか。そんなのいつでも行けるんだから気にしないでいいのに。だが、全く引く気が無さそうなので俺も言うのを辞める。
「分かった。奢ってもらうのはそれで最後だっていうならありがたく頂くよ」
「……、ああ、もう着きましたね」
いつの間にか、ハンバーガーショップに着いてしまったようだ。俺達は並んで店に入ると相変わらずセルフレジには列が出来ていた。
「昨日、戸松君に教わった方法でやってみますから横で見ていて頂けますか?」
「おっけー」
列で並ぶ時、ふと会話が止まる。こういう時って男の方が話を振ったほうが良いんだろうか。溝口ならあいつからマシンガンの様に話しかけて来るからなあ。あいつ、あのまま俺と話さなくなるのか。それは少し淋しいなと思う。
「戸松君!!」
「な、何?」
耳元で大きな声で呼ばれたのでビクッと揺れてしまう。竹之内さんが大声を出すなんて珍しいな。教室だと大人しい感じなのに。
「このお店はよく来られるのかとさっきから聞いていたんです。お疲れですか?」
「いや、大丈夫。ごめん。竹之内さんと折角来てるのにボケっとしちゃって」
申し訳ないと頭を下げようとすると、竹之内さんにすぐに大丈夫ですからと止められた。竹之内さんに気を使わせてしまうなんて情けない話だ。そんなこんなしているうちに俺達の順になった。竹之内さんは普通にセルフレジで注文を進めている。俺のを一回見ただけだろうに覚えがいいな。
「動画で見てきたのでバッチリです」
いや、滅茶苦茶頑張ってたわ。セルフレジ覚えるのに動画まで見たのか。そう考えると竹之内さんの普通に対する熱量はちょっと凄いものがあるなと感じる。その後、俺はてりやきバーガーのセット。彼女はエビカツバーガーを頼んでいた。これメニューも確認してきてるな。
そうしてレシートを持って受取カウンターまで行く。しばらくすると俺達の番号が呼ばれた。
「すいません。フォークとナイフを頂いてもよろしいですか?」
「!?」
商品を受取る際に竹之内さんはフォークとナイフを頼んでいた。店員は一瞬、えっという顔をしたが、すぐにプラスチックのものを持ってきてトレイの上に乗せる。
「昨日も店員さんがフォークとナイフを忘れていたんですよ」
「そ、そうなんだ」
普通、この店は使わないよと言いたいが使って食べている様子が見たい。よし、後で種明かしをすることにしよう。




