第38話 平穏な日々
「さっきのは何だったんだ……」
先程の竹之内さんのお母さんの言葉が気になる。周りの人を泣かせるかもしれないってどういう事だ。俺は首を傾げながら廊下を歩いている。すると扉の前で竹之内さんが立っていた。
「あっ、峻君!!遅いから迷っていたのかと」
「いや、ちょっとお腹が痛くて」
何となく先程の話を竹之内さんに話さない方が良いと思って嘘を付く。彼女の言う事が正しいとしたら俺は竹之内さんを泣かせることになるのだろうか。
「大丈夫ですか?」
「あ、ああ。トイレ行ったら収まったから」
彼女の心配そうな顔を見て嘘を付いていることに罪悪感を覚える。竹之内さんごめん。
そうして俺達は応接室に入る。するとテーブルにはティーカップやらティースタンドが置いてある。俺がトイレに行っている間に運び込まれたのだろう。溝口と太田さんはゆったりお茶を飲んでいるようだ。
「峻、遅い〜」
「紅茶、冷めちゃいますよ」
溝口達は俺を手招きしている。まあ、分からないことを考えすぎてもしょうがないよな。俺は椅子に座る。
「で溝口、勉強の調子はどうだ」
「えっ、休憩してるのに勉強の話するの?」
今日、勉強会だぞ。まあでも休める時に休んだ方が良いのは事実だし勘弁してやるか。
「じゃあ、フェンシング……」
「ねえ、休憩してるって言ってるよねえ?」
溝口のこめかみがピクピク動いてる。これ本気で苛ついてるやつだ。俺は大人しくすることにする。俺は竹之内さんに断りを入れてティースタンドにあるマカロンを手にとって食べる。
「うまっ」
「ふふ、それは良かったです。海外で人気のお菓子なんですよ」
値段とかは聞かない方が良いよな。勿体なくて食べられなくなりそうだし。マカロンを食べた後に紅茶を飲む。美味すぎてもうよく分からん(?)
「じゃあ、何の話すれば良いんだ?」
「今やってるドラマとか?」
「私、あまりドラマは……」
竹之内さん、ドラマ見ないんだ。普段、何して過ごしてるんだろうか。いや、俺も勉強時間以外は動画とか漫画見てるからテレビ見ないのは変わらないが。
「え、じゃあ『恋と青い空』とか知らないの?」
「知らないです。太田さんは知ってます?」
「私も見たことないです」
「え〜、面白いから見ようよ。今度映画やるし!!テスト終わったら見に行こうよ」
どうやらガールズトークが始まってしまったようだ。俺は恋愛映画など興味がないし隅で大人しくしよっと。女子達が盛り上がっている横でお菓子と紅茶を堪能する。うーん、美味い。
「ねえ、聞いてんの?」
「はへっ」
ガールズトークが始まって少し経った後、溝口に肩を掴まれて意識を戻される。やばいやばい、ボケっとしてた。
「あんた、話聞いてなかったでしょ」
「いや、どう考えても今の話俺いらなかっただろ」
「やっぱ聞いてないじゃん。ここにいる皆で映画見ようねって話なのに」
え、それ俺も頭数に入ってるの?恋愛映画に全く興味がないんだが。
「え、俺も恋愛映画見るの?」
「男子も見たら泣けるってネットに書いてあったよ」
う、嘘くせ〜と思ってしまう。泣ける恋愛映画なんて殆どの広告で書いてあるだろ。
「あっそ、じゃあここにいる女子達で行くから」
「は〜、女心が分かってないですね……」
「戸松君らしいですけどね……」
女子達が呆れてため息をついている。だって俺が見たって面白くないだろ……。映画だったら鬼退治のアニメ見たい。
まあ、でも女子達三人が前より仲良くなっている気がする。正直、勉強の効率は良くないだろうが意味のある会になったな。代わりに俺の好感度が減っている気がするけど。
その後、休憩が終わり夕方まで大人しく勉強をした。ふとスマホを見ると夕方の六時を回っていた。
「あ、俺そろそろ帰ろうかな」
「え、もうそんな時間?うわっ、私こんな勉強したの久しぶりだ」
溝口、受験どうしたんだと思ったらそういえばスポーツ推薦だったわ。
「そうですね。じゃあ皆さんそれぞれ車を用意させましょう」
「待て待て。俺は大丈夫だ。電車とかバスとか使って帰るから」
ていうか三人にそれぞれって三台の車と運転手を付ける気だったのか?規格外過ぎるでしょ。
「私もそうするよ。わざわざ用意してもらうのも悪いし」
「はい。私もお二人といっしょに帰ります」
「そうですか?では駅まではお送りしますよ」
竹之内さんも中々頑固なので駅までは送ってもらう事にした。相変わらずデカい黒いリムジン君で駅まで送ってもらった。
「竹之内さん、今日はありがとう」
駅に着き俺達は竹之内さんとドライバーの人に感謝を述べる。
「いえ、もっと峻君と一緒にいたかったです……」
「もしかして峻を送る予定の車、竹之内さんも乗る予定だったでしょ」
溝口の指摘に竹之内さんはバツが悪いのかそっぽを向く。それを見て俺達は笑った。
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