第36話 竹之内さん宅にお邪魔します
「これが家……」
周囲の広大な庭と眼の前の宮殿みたいな建物を眺めてそう呟くしか無い。俺と溝口は開いた口が塞がらない。太田さんを見ると落ち着いている。
「太田さんは来たことがあるのか」
「あ、はい。相変わらずとてつもないお家です……」
太田さんはマジマジと家を眺める。来たことがあってもここは慣れないんだろうな。
「皆様、お迎えにあがりました」
家の扉からメイド服の女性が現れた。髪を三つ編みでまとめているTHEメイドって感じの人だ。二十代だろうかかなり若そうに見える。それにかなりの美人だ。
「メイドさん見つめすぎ……」
「うわっ」
いつの間にか俺の真後ろに立っていた溝口が俺の耳元で囁く。俺は驚いて飛び上がってしまう。竹之内さんは俺達を見てクスっと笑う。うう、恥ずかしい。
「榊、今日お母様は?」
「いらっしゃいます。御学友が来るということで玄関まで来られるかと」
あのメイド服の人、榊さんっていうのか。まあ格好からしてこの家のメイドなのか。ていうか金持ちの家って本当にメイドいるんだ凄いな。
「はあ、仕方ないですね。では皆さん外にいるのもなんですし中に入りましょう」
俺達は竹之内さんを先頭にゾロゾロと中に入れさせてもらう。扉の向こうにはエントランスホールが広がっている。大した事ではないが基本土足らしく俺達は靴のまま中に入る。
「あら、いらっしゃ〜い」
奥の扉から綺麗な女性がこちらに駆けてきた。竹之内さんに似ているしお姉さんだろうか。
「お、お母様……」
竹之内さんが恥ずかしそうに止める。ていうかなんて言った?お母さん?俺は竹之内さんのお母さんを二度見する。どう見ても二十代なんだが。
「あら男子がいる」
俺とお母さんの目が合った。あ、そういえば竹之内さんって男子と遠ざけられてるんじゃなかったっけ。その事を思い出した俺は嫌な汗が出てきた。
「あ、あの、俺は」
「きゃ〜、可愛い!!男子高校生だ」
お母さんは俺を思い切り抱きしめてきた。え、どういう状況だ。俺は意味が分からずフリーズしてしまう。
「お、お母様、恥ずかしいから今すぐ離れてください」
竹之内さんは大慌てで俺とお母さんを引き離す。力を思い切り込めているからか滅茶苦茶痛い。俺含め三人はポカーンとしてしまう。
「え〜と、この子って美帆の彼氏?」
「違います。それ以上おかしな事をするようなら今すぐ自室に戻ってください」
竹之内さんがブチ切れている。自分のお母さんに対して鬼のような形相で睨んでいる。
「え〜、男子なんて連れ込んだこと無かったから気になっちゃって」
「本当に黙ってください」
竹之内さんが二度目の忠告をするとお母さんは「こわ〜い」と言いながら奥に下がっていった。なんだったんだ、今の。
「峻君、大変申し訳御座いませんでした」
竹之内さんは頭を深々下げる。俺は慌てて顔を上げるように促す。別に俺は悪い気はしてない。抱きつかれた時いい匂いしたし。
「ていうか竹之内さんのお母さん何処かで見たことある気がするような」
溝口はう〜んと唸る。何だ、溝口と竹之内さんのお母さんって何か関係があるのか?
「もしかしたらお母様、モデルをやっていたのでそれで……」
「ああ!!雑誌で見たことある。え、サイン貰えば良かった〜」
は〜、なるほど、モデルね。そりゃあれだけ美人な訳だ。そしてそのDNAをしっかり受け継いだ竹之内さんって事ね。
「そんな事より日が暮れてしまいますので勉強会をしましょう。榊!!」
先程のメイドさんを呼ぶ。二人で話し合っている。何処でやるか決めているのだろうか。数秒で話が終わったようで竹之内さんは俺達の方に振り返る。
「応接室が空いているようなのでそこに行きましょう」
竹之内さんのお母さんというハプニングはあったが、そのまま竹之内さんに着いていき大きな扉がある部屋にたどり着く。すると長テーブルが置いてあり十人まで座れるみたいだ。まあ、勉強会なので手前側だけ使わせてもらおう。
「席ですがどう座ります?」
「私、峻の隣ね」
「溝口さん、勝手に……」
「いや、コイツに教わらなきゃいけないから隣になった方が良いでしょ」
溝口の割にはそれらしい理由だな。確かにコイツに教えるということなら隣同士の方が都合がいい。
「私も峻君の隣が良いです!!」
「いや、そうしたら太田さんの隣居なくなるよ」
片側に三人座って、向かい合う形で太田さんだけ座るの可哀想でしょう。結局竹之内さんを説得して俺、隣に溝口、向かい合う形で竹之内さん、太田さんが座ることになった。
「ふふん」
「くっ」
何故か勝ち誇る溝口と歯ぎしりをする竹之内さんがいた。いや、溝口お前が俺の隣なのアホだからなの忘れてんのか?
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