第33話 二人きりの避難
「何でこうなるんだ〜」
「いや、ペアルックなんかで来たらそうなるでしょ」
俺と溝口は昼休み、校舎外のグラウンド前のベンチで飯を食べている。ちなみに購買で売っていたパンなどを買ってきた。竹之内さんも一緒に来たがったが教室で質問攻めにあっているが放っておいて逃げてきた。
「流石に竹之内さん一人置いてくるのは可哀想だったかな」
「じゃあ、戻る?地獄絵図になると思うけど」
俺は手を合わせて竹之内さんの無事を祈った。あの後、教室は大騒ぎになり俺は休み時間になる度に教室の外へ逃げた。トイレの個室は落ち着くんだよな。
「まあ、たまには私と二人きりって言うのも悪くないでしょ」
「まあ、前に戻った感じはあるな」
竹之内さん達と仲良くなる前は俺達二人で昼ご飯を食べる事が多かったからな。今みたいに騒がしくなかったし落ち着くと言えば落ち着く。
「まあ、私も戸松と竹之内がペアシートでイチャイチャして、その上ペアルックのアクリルチャーム付けて、更には下の名前で呼ばれて匂わせてきたの許してないけどね」
「うっ。そこを何とか許してください」
俺は溝口、いや溝口さんに頭を下げて味方でいてくださいとお願いする。みっともなくてもいい。俺には味方が足りない。
「アンタも厄介な人に好かれたもんだね」
「……」
溝口曰く、竹之内さんは俺のことを好きだと断定するのだがイマイチ実感がわかない。まあ嫌われているとは思わないし仲良くしていると思うのだが、恋愛的な意味で好きだと思われているのだろうか。
「まあ、戸松は竹之内さんみたいな凄い人じゃなくて、私みたいなのがお似合いだよ」
「いや、俺からしたら溝口も凄いんだが」
竹之内さんほどの規模ではないとはいえ、会社の社長令嬢で全国レベルのフェンシングの選手って超人の域だろ。しかも俺とお前がお似合いってどういう意味だ。
「いやいや、竹之内さんは更に雲の上の人じゃん」
俺は二人共、雲の上の人なんだがまあ本人からしたら自覚はないんだろう。俺は大人しく買ったメロンパンを食べる。うう、食堂も行き辛かったらパン食ってるけど何時もみたいに腹いっぱい食べたい。
「私のサンドイッチ食べる?」
「え、良いのか」
俺は溝口の持っているサンドイッチを見るともう既に口をつけてある。
「いや、もう食ってんじゃん。いいよ」
「良いから良いから美味しいよ?」
溝口は食べていたサンドイッチを俺の顔に前に突き出す。いや、これ間接キスになっちゃうじゃん。
「戸松、人の口つけたもの食べれない感じ?」
「いや、そういう訳じゃないけど、俺が口つけて嫌じゃないのか?」
俺が食べずに止まっていると溝口が俺の顔を覗き込んできた。俺はそういうの気にしないけど女子の方こそ嫌がるもんじゃないのかよ。
「私は気にしないよ。部活のみんなで回し飲みとかするし」
そりゃ、同性同士だからだろ。もしかして俺の事、男として見てないのか?
「じゃあ、一口貰うよ」
「はい、あ〜ん」
え、しかもあーんするのかよと思ったが、俺は諦めて目を瞑って口を開ける。口の仲にサンドイッチが入った感触が下ので黙って噛む。美味しいんだろうけど緊張で味が分からんぞ。
「美味しいでしょ」
「そ、そうだな。ありがとう」
溝口は「どういたしまして」と言いながら笑顔になって持っているサンドイッチを食べ進める。マジで俺が口つけた所、気にしてないじゃん。俺は何だか恥ずかしくなって持っていたメロンパンをガツガツ食べ進める。
「こ、こんな所にいた」
「た、竹之内さん……」
俺達の眼の前には息を切らしている竹之内さんが現れた。もしかして俺達を探すために歩き回ったのだろうか。
「私が困っているのに二人で逃げるなんて酷いです!!」
「ご、ごめん。竹之内さん!!」
「まあ、でもその原因、竹之内さんなんだから仕方ないんじゃない?」
溝口の容赦のない一撃に竹之内さんは「うぐっ」とうめき声を出してヘロヘロと崩れていく。本当に大丈夫か。
「それはそうですけど、峻君は助けてくれたって良いじゃないですかあ」
「すみません」
俺は素直に頭を下げる。まあ、女子一人置いていって逃げるのはまずいよな。竹之内さんの一言に溝口は「あっ、そうだ」と呟く。
「私も戸松の事、峻って呼ぶからよろしく」
「へ」
「ええ?それは私だけの特権ですよ!!」
溝口の衝撃的な一言により竹之内さんが強く主張する。俺はもう何でも良いです……。あと、竹之内さんの特権なんかじゃないです。親は俺の事、峻って呼ぶし。
「散々、イチャイチャしたんだから竹之内さんも我慢して!!」
「そ、それは……」
珍しい、いつもビビっている溝口が竹之内さんをやり込めている。こんな事もあるんだなあと眺めていると二人は急に俺を睨みだした。
「ていうかアンタは何で他人事みたいな顔してるの」
「元々、峻君の事でこうなってるんですよ」
ええ、俺が怒られてるけど俺何もしてないんだけど……。
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