第32話 匂わせ大事件
次の日、俺は憂鬱だった。溝口に何言われるか分からなかったからだ。教室を前にして入るかを悩んでいた。いや、入らない選択肢なんて無いんだけど。俺は決意を固めてドアを開けて自分の席に向かう。
「おはよう」
「む、来たな」
いつものように溝口は先に登校していて席に座っている。何故か今は腕を組んでいるが。
「なんだよ」
「昨日はって……、なにそれ……」
溝口は俺の鞄を指さした。その先を見ると昨日のアクリルチャームが付いていた。あ、やばい。
「これはそのプラネタリウムで買ったというか、何と言うか……」
「そんなの戸松、付けるの?女子が付けるような可愛いやつじゃん」
こいつ、目ざといな。すぐに気付いたし。俺が買わなそうってことも分かってやがる。
「いや、それはだな……」
「おはようございます」
ここで竹之内さんが来てしまった。やばい、最悪なタイミングで来てしまった。竹之内さんの鞄にも同じアクリルチャームが付いているのがバレる。
案の定、竹之内さんの鞄を見て溝口が固まる。これはまずい。俺は溝口の腕を引っ張って教室の外へ連れ出す。
「……、何よ」
教室の外へ連れ出したはいいものの、溝口は下を向いてしまっている。何て説明するんだ。ていうか何で俺はコイツに事情を説明しようとしてるんだ?ええい、先に説明してから考える。
「あれはだな……」
「何よ。アンタ達匂わせのつもり?」
案の定、誤解をしている。いやプレゼントを渡しあったのは本当なんだけども。
「違うよ。俺はチケット代の代わりにアクリルチャームを買って渡したんだよ。そうしたら竹之内さんも同じのを買ってて俺に渡してきたんだよ」
「……、何も違くないんだけど?」
これだけ聞くとそうかもしれないな。俺は頭を抱える。本当にそういう事じゃないんだよ。
「いや、お揃いにするつもりなんて無いんだよ。ただ、竹之内さんが外したら駄目って」
「何?女の子のせいにするつもり?」
め、めんどくせ〜。いや、実際そういう事情なんだから仕方がないだろ。
「だ、だから俺達は別に何でも無いんだよ」
「……、さっきから思ったんだけど。何でそんなに必死に弁明してるの?」
言われてみたら確かに。俺達が誤解されても問題は……。いや、滅茶苦茶あるだろ。俺クラスの連中から刺されるだろ。それに……。
「み、溝口に誤解されたく無いから……」
「……」
俺は頭に浮かんだその言葉が口からもれていた。何故そんな事を思ったのかは分からないがそう考えてしまった。
「はあ〜、分かった分かった。そういう事なら私は信じてあげる」
「溝口……」
溝口は深い深いため息をついて俺の肩に手を置いた。何だか分からんが誤解は解けたようで何よりだ。
「戸松って本当、私の事好きだよね」
「は、はあ?お前、何言ってんだ?」
俺は心底呆れるが、溝口はそれを気にせず俺の方を叩き続ける。こ、こいつ、調子に乗るとうぜ〜。溝口は「まあ、良いから良いから」と呟きながら教室へ戻っていく。いや、何も良くないんだが。
俺達が教室へ戻ると竹之内さんは心配そうな顔をして俺達の席の近くで待っていた。そういえば、竹之内さんの事を放っておいちまった。
「やってくれるじゃん。竹之内さん」
「……、何のことでしょう?」
ん?何故だろう。二人の目線で火花が散っているようにみえるのは俺だけか?俺は訳が分からんまま二人の様子を眺める。
「ペアルックなんて今どき、そんな事やるんだ」
「ふふっ、ごめんなさい。私、そういうのに疎くて……」
何か険悪な雰囲気になってない?仲良くしようぜ。
「二人共、何があったか分からないが、落ち着いたほうがいい」
「峻君、今は私達の話なので」
「峻君?」
溝口が怪訝な顔をしている。あ、そういえば昨日からそう呼ばれるようになったんでしたね。溝口は俺の顔を睨んできたので俺はすぐ目をそらす。俺のすねに溝口のローキックが入っていた。
「そんなに仲良くなったんだね?」
「ええ、一緒に寝た仲ですので」
竹之内さんの衝撃的な一言でクラス中がシーンと静まり返る。太田さんの顔を見たら真っ青になっていた。
「ち、ちがあああう」
俺は手をブンブン振りながら慌てて叫ぶ。語弊がありすぎるだろ!!
「じゃあ、どういうことよ……」
溝口は鬼のような形相でプルプル震えながら俺に問いかけてきた。
「プラネタリウムのペアシートで並んで座っただけ……」
「あんた、ふざけてんの?」
いや、そうだよね。俺もそう思うもん。今、考えると何で俺達あんな事しちゃったんだろうね。その後はみんなの予想通りだ。教室は地獄絵図になった。ああ、何でこんな事に……。
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