第26話 工藤さん、襲来。
「びゃっくしょい」
太田さんと図書室で勉強した日から土日を挟んだ週明け、登校中の俺は思い切りくしゃみをする。誰か俺の噂をしているのか?いや、それよりは悪口を言われていると考える方が自然か。クラスメイトから死ぬほど嫌われているからな。駅から学校までの道を歩いている。他の芦月学園の生徒達も歩いている。まあ竹之内さんみたいに毎日車通学している人は珍しいよな。
「あれっ、真由子の彼氏じゃん」
後ろから声がするが、俺の知らない真由子さんの彼氏がいるのかと思ってそのまま歩く。少し歩いていると俺の肩にちょんちょんと誰かに触られた感触があった。
「ん?」
「ねえ、無視しないでよ〜」
どうやら先程の声の主が俺の肩を叩いたようだ。姿を見ると芦月学園の制服を着たショートカットの女子だ。俺と同じ赤のネクタイをしているから同じ一年みたいだが誰だ?
「えっと、誰かと間違えてません?」
「ええっ、私の事見たこと無い?私、工藤岬って言うんだ。真由子と話をしに一組に行ったこと何回かあるんだけど」
そういえば、真由子って誰かと思ったがそういえば溝口の下の名前だわ。苗字でしか呼ばないからすっかり忘れてた。そういえば溝口と話しているのを見たことがある気がする。
「溝口の友達か。俺になにか用?」
「特に無いけど真由子の彼氏に興味があるからさ〜」
彼女はニヤニヤ笑いながら俺を見ている。この子は何を言っているんだ。俺と溝口とは付き合った事実は過去にもないんだが。
「いや、やっぱり人違いだよ。俺は溝口と付き合ってない」
「そうなの?偶に見るけど真由子と仲良さそうに話してるよね?」
「え、それだけで彼氏認定してたの?」
あまりに短絡的過ぎるだろう。普通に友達なだけの可能性が高いだろう。俺がそう返すとそれだけじゃないと続ける。
「いや、真由子がいつも君の愚痴を言ってるからさ〜」
「あ、あいつめ……」
何で他人に俺の愚痴を言う必要があるんだよ。俺がアイツにそこまで酷いことをした記憶がないんだが。
「あ〜、でも付き合ってないなら言わないほうがいいか〜」
工藤さんは口を抑えて黙ってしまう。一体、何だっていうんだ。その後、彼女は「それじゃ、また今度。お話しようね〜」と言って走り抜けてしまった。忙しない子だなあと思いながら歩いていると今度は背中をばちーんと叩かれた。
「いたあああああ」
「ねえ、岬と何話してたの?」
今度は先程話題に出た溝口が立っていた。立て続けにお前らは何なんだ。岬ってさっきの工藤さんの事か。そういえば名乗ってたな。てかこいつ、工藤さんが話している時見てたんなら話に入ってくればいいだろうに。
「え、何かお前が俺の愚痴を言ってたって話」
「み、岬〜」
溝口はギリギリと歯を鳴らして怒っている。怖いので下手に口を挟まない。俺は何も悪くない。
「その内容は聞いたの?」
「ん?いや、愚痴を言ったことしか聞いてない」
溝口はそれを聞いてはあとため息をつく。お前は俺の事でどんな酷いことを言ったんだと問い詰めたくなるが我慢する。
「俺ってそんなに酷い事してるか?」
「そ、そういう訳じゃないけどさ」
何かモジモジしながら照れてるけど、これ俺への悪口の話だよね?照れる必要あります?
「岬の言う事、信じなくていいから」
「そうなのか」
彼女は虚言癖というわけじゃないだろが、まあ適当な事を言うような子なのかもしれない。
「そういえば、溝口。部活の朝練無かったのか」
「ああ、うん。テストも近いし疲労抜きの為に朝練休みなんだって」
まあ毎日、早朝も放課後も頑張っているのだ。休みだって大事な事なのだろうなと思う。しかし、よく考えたら俺達がこうやって一緒に登校するの初めてだなと思う。
「こうやって登校中、会うの初めてだな」
「あっ、うん。そうだね……」
何かまたモジモジしだしたんだが。俺と並んで歩くのが恥ずかしいのだろうか。まあ、こんなThe 普通の俺と一緒にいるところなんてリア充女子からしたら迷惑なのかもしれん。
「嫌だったら先行こうか?」
「は?なんで?」
先程、モジモジしていた溝口が今度はキレだした。溝口さん、顔が大変怖いですよ。女子の考える事、本気で分からん。
「私と並んで登校が嫌なわけ?」
「いえ、溝口様と一緒に歩めて大変光栄でございます」
「ふん、分かればいいのよ」
溝口は腕を組んでご満悦な表情だ。こいつ、俺がおべっかしたら悪ノリして調子いいこと言い出しやがった。こいつ、いつか覚えておけよ。
「そういえば、竹之内さんとのデート中、私の話題出したんだって?」
「ん?そりゃ共通の友達なんだし話題にすることもあるだろ」
溝口はそれはお大きなため息をして呆れた表情をしていた。
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