第20話 溝口さん、怒ってます?
「今日はありがとう。運転手の方もありがとうございました」
俺は学校近くの駅まで送り届けてもらったので竹之内さんと運転手に挨拶をする。竹之内さんはもっと一緒にいたいと家まで送ると聞かなかったが俺が何とか止めた。
「むう」
「え、何でむくれてるの?」
車の窓を空けて横顔だけ見せている竹之内さんは頬を膨らませている。だって車で行くの大変だし運転手が疲れちゃうよ。
「もっとお話したかったです」
「明日も学校なんだから話せるよ」
何だか俺のことを気に入ってくれた様だがまるで駄々をこねる子供のようだ。竹之内さんの可愛い一面を知れた気がして嬉しくなる。
「学校では溝口さん達がいらっしゃるじゃないですか」
「二人より大勢で話した方が楽しくない?」
「……、はあ、今日は楽しかったです。また行きましょうね。二人で」
竹之内さんは何故か大きいため息をついた。俺間違った事言ってないよな?俺は首を傾げる。
「お、おう。また明日」
「ええ、また明日」
竹之内さんは車の窓を閉めて、車は走り出していった。さて俺も帰るかとふとスマホを見ると何件かメッセージが来ていた。宛先を見ると溝口だった。あいつも部活が終わった頃か。
『竹之内さんとのデート楽しい?』
『デートじゃない。それに今終わった』
『そうなんだ。今、どこ?』
『学校最寄りの駅近く』
『本当?じゃあ、今そっち行くから待ってて』
俺ここで待ってなきゃいけないのか。まあ、あいつ部活で遊びに行けなかったんだしそれくらい付き合うか。言われた通りに駅改札の前で待つことにする。それから十分後くらいだろうか。
「お〜い」
「おう」
溝口が手を振りながら小走りでこっちまで来た。部活終わりで疲れてるだろうにこいつ元気だな。俺から三メートルくらい離れた位置くらいで溝口は立ち止まった。ん、何だ?
「私、汗臭くないかな……。シートで拭いたしスプレーもしたはずだけど」
部活終わりで体臭が気になるのか溝口は自分の体中の臭いを確認しだした。今更、俺がそんなの気にするわけ無いだろと思いつつ、女子にも色々あるのかもしれんと思って黙って待つ。数十秒確認して満足したのか俺の元まで歩いてきた。
「ごめんごめん」
「別に大丈夫。で合流して何かする予定だったのか?」
「え?全然。話がしたいなって思って」
そんなの明日も学校あるんだから明日で良くないか?竹之内さんといい溝口といいよく分からんな。
「それより今日のデートどうだったの?」
「メッセージで送ったけどデートじゃない。まあ、自家用クルーザーで二人だけのパーティーよ」
「え、なにそれ……」
俺は今日あった出来事を簡単に説明した。溝口もまさかそんな事をするとは思って無かったらしくどんどん驚いているのか困惑した顔つきになる。
「流石、超お嬢様格が違うね」
「お前も社長令嬢だから似たようなもんだろ」
「竹之内グループ程ぶっ飛んでないから……」
まあ、それもそうか。溝口の家も儲かっているとはいえ流石に竹之内グループと比べると見劣りするということか。
「で、どんな話をしたのかお姉さんに話してみなさい」
「誰がお姉さんだ」
同い年だしお前のどこにお姉さん属性があるんだよ。でどんな話をしたかだっけか。え〜と。
「竹之内さんが今、こうして友達と遊べてるのが楽しいっていうのと竹之内グループで縁故採用してくれそうとか色々」
「よく分からん話題ばっかね。竹之内さん口説いたりしなかったの?」
溝口は首を傾げて話を聞いている。まあ、これだけじゃ意味が分からないよな。
「口説いて落とせるタマじゃないだろ。あ〜でも」
「でも?」
「竹之内さんが溝口や太田さん可愛いって話題したから、いやいや竹之内さんも可愛いじゃんって話はしたな」
「ハア?」
何か、そのまま『あんたバカァ?』と続きそうなほど綺麗なハア?だったな。溝口は頭抱えている。え、もしかしてこういうのってセクハラになったりするのかな。
「もしかしてこの発言やばかったのか?」
「ヤバいというかなんというか……」
溝口は苦虫を噛み潰した様な表情になる。ええ、でも竹之内さん嫌がっている様子じゃなかったんだよ。本当だよ。
「で、でも本人は嫌がってる感じじゃなかったぞ。褒められて嬉しそうだったぞ」
「それで私より竹之内さんの方が可愛いって言ったの?」
ん?そうか今の文脈だとそう捉えられてしまっても仕方がないのか。それでこいつ怒ってるんだななるほど。
「違う違う。誰と比べて可愛いとかじゃない。そりゃ他の人多数と比べてって意味ではあるが三人共美人だよって話なんだよ」
「ふうん。まあ信じてやるか」
ていうか何でお前の許可がいるんだと思ったが、まあ人と比べて誰の方が美人とか気分の良いもんじゃないよな。これは悪いことをしたのか。
「悪かったよ。お前は傍目から見ても美人だと思うぞ」
「へっ?いや、そんな事言われなくても分かってるから」
溝口は顔を赤くしてそっぽを向いてしまった。
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