第11話 溝口に対しての本音
「で、尋問って何の話だよ」
俺達は学校近くの喫茶店で向かい合って睨み合っている。理由も分からずここまで連れてこられたのだ。俺が気になるのは当然のことと言えるだろう。
「あんた、ハーレムでも作りたいの?」
「はあ?意味分からん事言うな」
俺は返事をしてアイスコーヒーを飲む。疲れているからかコーヒーが喉に沁みる。溝口も俺につられてゴクゴクと喉を鳴らしてアイスコーヒーを飲む。お嬢様の癖にコーヒーをそんな飲み方するな。
「何で太田さんにまで手を付けようとしてんのよ」
「手を付けるってなんだよ!?太田さんと友達になろうとしただけだろうが。言いがかりを言うな」
竹之内さんに諭された俺は人と関わりを持とうと考えているだけだ。それを手を付けている呼ばわりと言われて良い気はしないぞ。太田さんは下手したら俺が嫌いなままだぞ。
「そもそもハーレムってなんだ。口ぶりからすると竹之内さんと太田さんってことか?」
「その二人と、わ、わ……」
「わ?」
「……私とか?」
「プッ」
俺は思わず吹き出してしまった。だってコイツ、滅茶苦茶な事を言うもんだから。そして溝口の顔を見てみると顔を赤くして頬を膨らませて怒っている。
「悪い悪い。だって、ぷっ、お前がハーレム要員みたいな柄かよ(笑)」
「お、お前、笑ったなああ」
溝口はテーブルを乗り越えて俺に掴みかかろうとしてきたので両腕を掴んで必死に抵抗する。やばいやばい、溝口こんな所で暴れるな!!
「お、お前、ここ喫茶店だぞ。怒るのは分かるが大人しくしろ!!」
「ちっ」
俺が諭すと少し落ち着き取り戻したのか、ドスンと音を立てて椅子に座った。危ない、この店出禁になるところだったぞ。何なら今も店員や他の客はこっちを見ている。痴話喧嘩かなんかだと思われているのだろうか。
「……、竹之内さんとはどんな感じなの?」
「ん?いや、一緒に店行っただけだぞ。まあ、学校でもたまに話すようになったけど」
「ふ〜ん」
何か、コイツ歯切れが悪い気がする。結局、何を聞きたいんだろうか。溝口は何故か俺とは目を合わせようとしない。
「そういや、お前は部活は?」
「今日は休み。私が休んじゃいけない訳?」
溝口は頬杖を付きながら窓の外を眺める。俺を何だと思ってるんだ。
「そんな事は思ってない。溝口が普段どれだけ頑張っているか想像が付かない。それは俺には出来ないしそういう所は尊敬してる」
溝口を褒めるのは照れくさいものがあったが勘違いしてもらうのは困る。とはいえやっぱり恥ずかしいから顔が熱くなるのを感じる。
「また恥ずかしいことを……」
「本心だよ。フェンシング部って全国行くような強い部活なんだろ?そこで頑張ってる溝口は本当に……」
「も、もう、褒めなくていいから!!」
溝口は顔を赤くしてプリプリしているが先程の様な怒気みたいなものは無くなった様に感じる。まあ、機嫌を直してもらえれば何よりだ。
「……、ていうかさ戸松とどっか行くの初めてだよね」
「言われてみればそうかも。溝口は部活で忙しいし、俺も家とか喫茶店で勉強してるし」
そういえば、俺溝口だけじゃなくて竹之内さんとつるむようになって勉強時間減ってるんだよな。勿論、家に帰った後で勉強しているからそんな問題にはなっていないはずだが。
「ねえ、この後どっか行く?」
「おう、良いぞ。どっか行きたい所でも?」
「いや、別に。このままここでゆったりしているのも良いかも……」
溝口はぐでーとテーブルに突っ伏した。溝口は疲れているのかそのまま大人しくなってしまった。
「あれ、溝口疲れて寝ちゃったのか」
溝口は普段の部活に加えて今日は俺と太田さんの仲介までさせてしまった。一気に疲れが出てしまったのだろう。しばらくすると寝息まで聞こえてきた。
「溝口、今日は悪かったな」
俺は溝口が寝ているのを良いことに普段言えない事を言ってしまおうと思った。溝口は全く関係無いのに助けてくれた。俺一人だったらどうなっていたか分からない。
「クラス中から嫌われている俺と今まで接してくれてるの凄い助かってるんだ」
先程から話しかけているがピクリともしない。こうして大人しくしている溝口を見るととても可愛いなと思う。
「友達が全くいないからさ。お前が横で何時も話しかけてくれるの助かってるんだ。そうじゃなきゃ学校に行きたくないって思ってたと思う」
普段の溝口には言えない感謝が次々と溢れている。俺はこんなに助けられているんだ。
「だから溝口も困った時は俺に頼ってほしい。まあ、お前がそんな場面になることがあるとは思えないけどな」
だが、心からの本心だ。ここまで俺を助けてくれた溝口に対する恩は大きい。それを返したいって思っている。そういえば、さっきから溝口の寝息が聞こえないんだが寝てるよな?




