理想を抱いて溺死しろ
この物語は、フィクションです。
現実世界とは、ぜーんぜん、関係ありません。
べっ別に、国政なんて、気にしてないんだからね(ツンデレ作者)
大企業はグローバル化が進むものの、それから取り残された人達がナショナリズムにすがりつく。そんな21世紀のどこかの国の話です。
「核兵器は安上がり」
と、街頭で叫んでいた立候補者が当選し、議員となりました。
そういう国家の右傾化を、よろしく思っていない泉止水という男がいました。
「言っていることはわかる。だが、これは、俺が、止めないとな」
そういって、彼が取り出したのは、資金繰りが困難となった暴力団からの横流し拳銃。そして、大量の弾丸。
選挙から1ヶ月が経過し、泉止水は、前述の議員に、そっと近づいたのだった。
「やぁ、議員先生。核兵器よろしく、確かに安上がりだ。こうしてトリガーを引けば、アンタを止められる」
タァン と火薬の弾ける音がした。
議員先生は血を吐きながら、助けも呼ばずに言った。
「ケホッ。ね?安上がりでしょう。延々と行われる生産性のない会議と違って、時間もお金もかからない……ケホっ。鉛玉数発で、私を始末できるのだから……」
「!?本気でそう思っていたのか」
「国民よりも……国家……わかって……」
「理想を抱いて溺死しろ」
タァン タァン と 二発、火薬の弾ける音がした。
泉止水は、議員の著書や主義・主張を全て把握し、危険人物と考えていたが、死の際まで、このような最期を迎えさせたことに、思い悩むのだった。
「この人間は違った。居眠り議員を散々避難しておいて、自身が議員になった途端に居眠りするような、目糞・鼻糞の人間たちとっ」
彼は考える。自分を育てた組織も、また耳糞なのだろうと。
「その生きざま、清らかな水のような、何という美しさだったのだろう。嗚呼、俺は、どうすれば」
生まれてはじめて、主義主張と一貫した、その美しさを知ってしまった彼に、狂気が宿るのだった。
「そうだな、俺が実現しよう。澄んだ水のような世界を」
彼は暗躍をし始める。
議員の議席数を半数に。
兵器でやれば安上がりだ。鉛玉の数百発の金額なんてたかが知れている。
国家のために。そして税金が助かる。
寝たきり老人に引導を。
呼吸器をつけて寝たきりの老人を、ことごとく始末していく。
鉛玉数発の金額なんて、健康保険の費用に比べたら安上がりだ。
国民よりも、国家のために。そして税金が助かる。
無職ニートに異世界転生を。
生産性のない人間を始末していく。
生活保護対象者も含めて、誰もかれも。
国民よりも、国家のために。そして税金は助かる。
高校生から妊活を。
女性が16歳~36歳の間に10人近く子供を出産させていく。
自由恋愛?ジェンダーフリー?知るかボケ。石女は不要。
多夫多妻にして、幼児の面倒は10歳~15歳の子達と学校で見ればよい。
国民よりも、国家のために。そして人口が増える。
障害者や能力の低い人間を排除
かつては、自然淘汰されたのだ。
仕方ないから俺達がやろう。
国民よりも、国家のために。そして税金は助かる。
生産能力のない人間を減らし、生産能力大きい人間と子供を増やす。
ああ、そうだ、国家のために。弱者は、死ね、シネ、しね。
国民なんてどうでもよい。国家ファーストだろ。
そうして10年も経たないうちに国家の財政は健全化し、
核兵器も手に入り、自国製造にまでこじつけたのだった。
「核保有国なめんな。使った方が早くて安上がりだ」
そうして、反撃の核ミサイルが飛んでくる。
(おわり)
銀河英雄伝説で皇帝ルドルフは、劣悪遺伝子排除法を制定し、知的能力や身体機能に異常がある者、あるいは学習・労働意欲が希薄な者を処分していました。その後、自身の子供が障害者だったので、自らの優生学的思想に後悔するのです。処分されかけた人の中に目が悪いパウル・フォン・オーベルシュタイン(絶対零度の剃刀)がいたりしましてね。
え?そうそう、ライトノベルの話です。思慮深さがサブカルチャーにすら劣る人達の主張は、どうなんでしょう。あっ、そうか、優生学的思想の下、処分されるのか。
「美しい国、日本」とか言ってウェーイしているオッサンが煙草のポイ捨てしたので、火ばさみと塵取りで掃除して静かに去って行った私です。