第二話 受付嬢勇者への道
「えっ? お前が受付嬢勇者に?」
おとんが目を丸くしてそう聞いた。ここはおとんの入院する医者で、今は秋。
「うん。あたしは受付嬢勇者になるよ」
あたしはおとんの言葉をオウム返しにして答える。
「いいか。——まず受付嬢勇者って、なんだそれ」
「え? 受付嬢を兼ねし、伝説の勇者……」
あたしはおとんの平手打ちをよけながら説明する。
「いいか。勇者は物語みたいに、世界からもてはやされる人物じゃないんだ。こつこつこつこつと、有害なスライムを、討伐するだけの仕事なんだ」
スライムにも有害な奴と無害な奴があるっていう話は、もう耳に肉刺ができるくらい――いや、実際にできた――聞いた。
「スライムか……」
とつぶやきながら、あたしは空を見つめた。
ため息をつきながら病院を後にし、ホテルにチェックインをする。
ホテルを満喫して翌朝ホテルに別れを告げる。帰りは、一方通行のトロッコがあって、(まるで人力馬車みたいだよ!)ぼろいけれど、確かに速い。あたしは、月一でトロッコに通う数少ない常連として八人のトロッコ会社の人と顔見知りになっていた。全社員は十三人だと聞いているから、あたしはもう半分以上の顔と名前を思い出せるのだ。
三時間十二分後にギルドに到着した。トロッコの終点だった。洞窟内の退屈な景色に飽き始めてきたころに、ギルドの地下——ちっちゃなダンジョンに入ってくる。唯一いた有害なスライムは数年前おとんが滅ぼさせたのだけれど、どうやらあいつ、隠し部屋を作っていたらしく、今ダンジョンは、増殖した有害なスライムがうじゃうじゃいた。
あたしが、百均で売ってる包丁でスライムを何匹か斬ると、レードの魔法を発動した。
レードの魔法で瞬間移動をし、あたしは、誰もいない冒険者ギルドに「ただいま」を告げた。
自分で「おかえりなさいませ」と返す。
もう、わたしは立派に受付嬢なのだ。