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「ごきげんよう、マティルダ様」


「皆様、ごきげんよう」


「遅れてしまいますよ。マティルダ様、早く参りましょう」


「えぇ、そうね」



友人の令嬢達に声を掛けられるまま門の中に足を踏み込んだ。


(つ、ついに学園に入ってしまった……!)


〝悪役令嬢には絶対にならない〟という固い決意を胸にマティルダは令嬢達と共に談笑しながら歩いていた。

すると前からローリーが仕方なさそうにマティルダを迎えに来ていた。



「おはようございます、ローリー殿下」


「…………あぁ」


「いい天気ですね」


「……だな」 



いつも笑顔で話しかけていたおかげか、ローリーが返事をしてくれるようになった。

それだけで数年の成果がみえるような気がした。

以前、マティルダの言うことは、ほとんど無視だったからだ。

最近になって挨拶をすれば返事を返してくれるのと睨みつけられなくなったという進歩はあったものの、友達のようにフランクな関係になることはない。


そして自分の役割は終わったと言わんばかりにスタスタと踵を返してしまう。

周囲にいる令嬢達は「信じられない!」「本当に婚約者なのでしょうか!?」「許せません」と次々に声を上げていく。

味方してくれている令嬢達に「ありがとう、いいのよ」と言って諌めていく。

令嬢達は心配してくれていたが、ローリーの冷めた態度に慣れきっているマティルダにとってはいつものことである。

彼の態度がこのままでもマティルダから咎めることもなかった。

無理矢理距離を詰めようとしても、嫌な顔をすることは知っていたからだ。

この癖のある攻略対象者達を惚れさせることができるヒロインはきっと素晴らしいのだろう。


(それか、わたくしがダメすぎるのかしら……)


今は落ち込んでいる場合ではないと「行きましょう」と声を掛けてから歩き出す。

周りにいる令嬢達は、乙女ゲームのマティルダの取り巻き令嬢達とは違うメンバーで、優しくて可愛くて、いい子達ばかりなので彼女達が大好きだった。

それに家柄関係なく接していたつもりだったが、何故か同じ公爵家や侯爵家の良識ある令嬢達の友人が多いような気がした。


仲良くなったきっかけは、婚約者との仲を取り持ったり、家同士を繋いだり、喧嘩の仲裁に入ったりと理由は様々だった。

勿論、味方は多い方がいいという打算的な考えもあったものの、単純に周りにいる人達には幸せになって欲しくて、マティルダはよく人助けをしていた。


『こんなことばかりしているから、お人よしって言われるのよ』と、マティルダになる前に同僚にも散々言われていたが、人の笑顔をみるとこちらも元気になる。

そんな癖はマティルダになっても変わらなかった。

だが、こうやって善行を繰り返しているおかげでお茶会に呼ばれたり、人脈ができたりと悪いことばかりではない。


令嬢達と歩きながらこっそりと辺りを見回してみるが、まだヒロインの姿はない。

ゲームの画面で見ていた立派な建物の中に入り、中ばきに履き替えて教室に入る。

そこにヒロインの『シエナ』の姿があった。


(関わらない関わらない関わらない……絶対に関わらない!)


今までのことを踏まえて、ゲームの登場人物にはなるべく関わらないように心掛けていたマティルダだったが、ふと突き刺さるような視線を感じて肩を揺らした。


(なに……?なんだろう。今、誰かに見られていたような)


違和感を感じていたが、後ろを振り返っても誰とも目が合うことはなく、特に気にすることはなかった。


次の日からシエナが怒涛の勢いで攻略対象者を攻略していたことも露知らず、マティルダは友人の令嬢達とのんびりとした幸せな学園生活を送っていた。


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