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「ベンジャミン様、いつも話を聞いてくださってありがとうございます。ベンジャミン様と一緒にいるとなんだか落ち着きます。貴族の令嬢や王太子の婚約者なんてやめて、どこかでのんびりと平和に暮らせたらいいのに……」


『…………』


「ふふっ、ベンジャミン様にはつい愚痴を言ってしまいますね」



無機質な仮面に見つめられて、沈黙に耐えかねたマティルダはクッキーが載った皿をベンジャミンの前に差し出した。



「今日は料理人に交ぜてもらってクッキーを焼きましたの。ベンジャミン様は甘いものがあまり得意ではなさそうだったので、甘さ控えめにしてみました」


『…………!』


「お口に合うかはわかりませんがどうぞ」


『……いただきます』



ベンジャミンはカップを持ち上げて仮面の前へ。

すると一瞬でカップの中身がマジックのように消えていく。


(いつ見ても不思議ね……)


仮面に阻まれているにも関わらずに液体は消えて、食べ物も瞬間移動するように口の中へといっているようだ。


仮面を外したくないという頑なな意志を感じていたため、マティルダも特に突っ込むこともなかったが、今回のクッキーが大きめだったせいか、ベンジャミンの頬がリスのように膨らんで動いていることがわかり、マティルダは笑わないように口元を押さえていた。


ベンジャミンに『どうしたの?』と問いかけられてマティルダは言ってもいいか迷ったが口にすることにした。



「大きなクッキーを頬張るベンジャミン様が可愛らしくて……ふふっ」


『僕が……かわいい?』


「はい、とっても」


『……………』



やはり失礼かと思い、ベンジャミンの表情を窺おうとするが黒いウサギの仮面に阻まれてわからない。

ベンジャミンは特に自分から何かを言うことはないが意思表示はしっかりとしてくれる。



「ごめんなさい、嫌でしたか?」



首を横に振るベンジャミンにマティルダはホッと胸を撫で下ろした。

ベンジャミンの隣に『ありがとう、とても美味しかった』と文字が浮かぶ。

マティルダは嬉しくなり満面の笑みを浮かべた。

そんな時、侍女がこっそりと肩を叩く。



「大変……!もうこんな時間だわ。わたくしはそろそろ城に行っていつもの仕事をしなくちゃ」



マティルダは毎日王城に向かい、金色の玉に手を当てて電気を送っているのだが、それが城や町を支える電力となっている。

以前はガルボルグ公爵やライボルトと順番に行っていたのだが、何故かマティルダが毎日任されるようになってしまった。

ガルボルグ公爵夫人は風魔法を使うレラ伯爵家から嫁いできたため、この仕事はしていない。

由緒正しきガルボルグ公爵家にとっては異例の事態だったらしい。

その理由は今のところ知らないが、ライボルトはガルボルグ公爵夫人を恨んでいるようでマティルダと同様、夫人にも態度は冷たいままだ。


(二属性でもいいと思うんだけどな……便利だし)


ライボルト自身はガルボルグ公爵家のしきたりや『完璧』であることに縛られている。

他にも様々な魔法属性がある貴族達が城に集まり、魔法を使いつつも民達に恩恵を届けている。

侍女に準備をするために声を掛けると目の前に光る文字が浮かんで足を止めた。



『ねぇ、マティルダ』


「なんでしょうか?」


『どうしてライボルトやガルボルグ公爵は、君の仕事を手伝わないんだい?』


「うーん……どうしてでしょう。お忙しいみたいで、最近はわたくしが毎日、城に行ってますね」


『…………ふーん。でも普通は協力してやるんだよね?』


「えぇ、まぁ。ですが皆様が快適に暮らせるのなら、わたくしは嬉しいので構いませんわ」


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