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マティルダはその言葉に瞼を閉じたあとに真っ直ぐにライボルトを見据えた。

もうマティルダが何を言ったとしても彼に届くことはないのだろう。



「お二人の要望はわかりました」


「よし……!なら早くっ」


「ですがライボルトお兄様とシエナ様には、わたくしをここから連れ出すことはできませんわ」


「なに……!?」


「どういうこと?」


「お二人が力を合わせたところで、わたくしを連れ戻すことは不可能だと申し上げているのです」



マティルダの言葉にライボルトとシエナは動きを止めた。

そして意味を理解したのだろう。

怒りから歪む顔、シエナの口元からはギリギリと歯軋りの音が聞こえる。

マティルダは二人を迎え撃つために左手で髪が邪魔にならないように耳にかけた。

しかしそれの行動とあるものが目に入ったシエナは大きく目を見開いた。



「その花の指輪……っ!どうしてアンタが!?それは私のものよっ」



マティルダが一ヶ月振りに塔の外に出た時に、ベンジャミンと互いに作った指輪を彼に保存してもらい、常につけていられるように加工した薄紫色の花の指輪のことを指さしているのだろう。

シエナはマティルダの左手の薬指にある花の指輪を見て動揺を隠せないのか、震える手を伸ばしながらこちらに近づいてくる。

指輪を奪おうとしているのだと気づいたマティルダは花の指輪を隠すようにシエナから遠ざけた。



「これはわたくしがベンジャミン様から頂いた大切なものですわ」


「それは本来、わたしがもらうものよ!?お揃いの花の指輪は……ベンジャミン様からこの花畑でもらうの!」


「シエナ様は一体、何を言っているの?あなたはベンジャミン様とどこで知り合ったの?」


「私から奪ったのね!許せないっ」



マティルダの話は無視でこちらを指差して地団駄を踏むシエナを見て溜息を吐いた。

どうやら彼女は自分の欲望のためだけに動いているようだ。

『奪った』とマティルダを責めたてているシエナだが、元々はシエナがマティルダの居場所を奪ったのだ。



「全ルートをクリアしてからベンジャミン様に魔法を教わるつもりだったのにっ!私の計画が台無しよ……!」


「……え?」


「こんなのって、あんまりだわ!」



シエナの言葉を聞いて、あることが思い浮かぶ。


(もしかしてベンジャミン様も乙女ゲームに出てくるの!?)


あれだけイケメンならば、あり得ない話ではないと思っていたが、ベンジャミンに魔法を教わるにも基礎ができていて魔力の底上げができていなければ意味がない。


本来の乙女ゲームでは学園で血の滲むような努力を重ねて、攻略対象者達と愛を育みながらヒロインが癒しの力を目覚めさせるのだが、それ以外に方法があるというのだろうか。


しかしシエナの今までの行動は、それが裏目に出ているような気がした。

それに先程シエナが使った魔法を見る限りでは少しも魔法訓練をしていないように見える。


(ローリーを選んだということは、シエナには特別な魔法講師がついていたはずよね…?)


光の玉を浮かべていただけのシエナはとても訓練を受けているようには見えなかった。



「……ベンジャミン様は返してもらうわ!」


「あなたのような人を、ベンジャミン様は好きにならないわ」


「違う!間違いなく好きになるわっ!これが正しい道なのよっ」


「その正しい道を踏み荒らしたのはあなたの方でしょう?」


「…………っ!」



俯いて肩をブルブルと震わせているシエナは唇を噛み、涙を浮かべながらこちらを睨みつけている。

ライボルトは自分に想いを向けられていないにも関わらず、まだシエナを守るつもりでいるようだ。

電気を纏った手をこちらに向けて「これ以上、シエナを傷つけるな!」と声を上げている。


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