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「…………」



これ以上、店員に迷惑を掛けたくはないのと不審に思われたら困るとマティルダはベンジャミンの背を押した。

丁寧に包んである二つの袋はしっかりと箱の中に入っているようだ。

マティルダは振り返って、店員にお辞儀をしてから店を出た。


(よかったわ……!ちゃんと買えた!これでベンジャミン様にお礼ができるわ)


マティルダは箱を持ちながら密かに喜んでいると……。



『……ねぇ、マティルダ』



ベンジャミンが急に足を止めたため、マティルダはそのまま彼の背中に勢いよく激突してしまう。

そしてぶつかった鼻を押さえた。



「いたた……」



鼻を押さえていると、ベンジャミンは振り返ってマティルダを包み込むようにして抱きしめた。



「急に立ち止まって、どうしたのですか?」


『…………』


「ベンジャミン様?」


『やっぱりマティルダが他の人に触れられるのは嫌だ。マティルダを誰にも渡したくない』



暗い雰囲気をどうにかしようと、マティルダは「今度から気をつけますね」と言って声をかけるがベンジャミンは大きく首を横に振ってマティルダを包み込むように抱きしめている。


(これは、噂のやきもちという奴ではないかしら……!)


やきもちを妬かれたことに感動していたマティルダだったが、ここは道の真ん中である。

ベンジャミンの気持ちは嬉しいが、このまま目立ってしまうのはよくないような気がしていた。

マティルダは彼を諭すように声を上げた。



「わたくしは、ベンジャミン様しか見ておりませんから!」


『マティルダ……』


「それに一緒に買い物できてとても楽しいです。ここに連れてきてくださってありがとうございます」



マティルダの明るい言葉を聞いてかベンジャミンは顔を上げた。

固くなっていた雰囲気が少しだけ元に戻ったような気がした。



「後でゆっくり話しましょう。ベンジャミン様の気持ちを聞かせてください」


『僕の……気持ち?』



とりあえずマティルダはベンジャミンの気持ちを聞いて、これから、人と話すだけでやきもちを妬かないように改善していこうと思っていた。

再び屋敷の外に行くのを制止されたり、ベンジャミン以外の人と話すのを禁止されてしまっては堪らない。



「はい。例えば先程はどんな気持ちになったかとか、どう思ったのかがわかれば……」


『……店ごと吹き飛ばそうかと思った』


「!?!?!?」


『やっぱり僕以外、マティルダに触れるのは許せない』



そう言ったベンジャミンはまるで何かを補給するようにマティルダを暫く抱きしめて、そのまま動かなくなってしまった。


(ベンジャミン様って、愛が重いタイプなのかしら……)


今更気づいたマティルダは顎に手を当てて考えていた。

恋愛経験に乏しいマティルダは「わからないからいっか!」と、結局考えることを放棄してしまうのである。


(けど、愛されるのはいいことよね!)


マティルダはポジティブに考えることにした。

ベンジャミンの背を叩いてマティルダは話題を変えるためににっこりと微笑んだ。

このまま買いたいものを買えずに森に戻るのはごめんである。



「ベンジャミン様、気分を変えて次の店に行きましょう!」


『…………』


「まだまだ買い物がありますから……!」



マティルダの声に小さく頷いたベンジャミンの手を引いて急いで店を回っていき、買い物を終えることができた。

あの後、ベンジャミンがやきもちを妬くことはなく、本人も不思議がっていた。


思ったよりも大量の買い物をしてしまい、どうやって運ぼうかと悩んでいるとベンジャミンは箱を飛ばして先に家に届けるらしい。


魔法はとても便利なのでベンジャミンのようにほとんどの魔法属性を使えるようになったらどれだけ楽しいのだろうと思いつつ、空を飛んでいく箱達を眺めていた。


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