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『マティルダ、欲しいもの決まった?』


「ひ、久しぶりにお店にきたので迷ってしまって……!もう少しだけよろしいでしょうか?」


『うん、もちろんだよ。あ、これなんかどう?』


「わぁ……!素敵ですね。可愛い髪飾り」


『きっとマティルダに似合うよ』



仮面はつけているが、ベンジャミンが微笑んでいるような気がしてマティルダも笑みを返した。

店員に呼ばれたマティルダは慌てて側に向かう。


そして宝石を売ったお金でベンジャミンへのプレゼントが買えるのかを聞くと店員は笑顔で頷いた。

お金が足りたことに安堵してマティルダはホッと息を吐き出す。

男性店員の耳元でベンジャミンと自分の名前を彫ってもらうように小さな声で頼んでいた。


「すぐにできますので少々お待ちください」


時計に二人の名前を掘ることはブルカリック王国では夫婦がずっと同じ時間を過ごせるようにと願いが込められて贈られるらしい。

プレゼントと用に包んでくださいと頼んで、バレないように先程、ベンジャミンが勧めてくれた髪飾りを一緒に包んでもらうように頼む。

ベンジャミンに「包んでもらっているのでもう少し待っていてください」と言いながら、店員が帰ってくるのを待っていた。


そしてマティルダは店員が戻ってきたのを確認してすぐに駆け寄る。

ベンジャミンに見えないように手元を隠しながら作業している店員に「ありがとうございます」と御礼を言っていた時だった。


すぐ後ろに音もなく立っているベンジャミンの姿に気づいてギョッとする。

慌てて体で隠すようにすると、ベンジャミンは店員にグッと顔を近づけた。

宝石店の店員は背中を逸らして両手をあげている。



「ひぃっ……!?」


「ベ、ベンジャミン様!?」



ベンジャミンは店員をマティルダから引き剥がすようにして腰に手を回して背に隠す。

いつもは他人に印象が残らないようにしているベンジャミンだが、今は周囲に見えるようになったようだ。


マティルダは初めからベンジャミンをバッチリと認識していたため、他の人にはどんな状態で見えているのかはわからない。

突然、はっきりと見えるようになったベンジャミンの姿に店員は震えている。


(突然、黒い鳥の仮面をつけたベンジャミン様が現れたら怖いわよね……)


このままにしておけないとマティルダはベンジャミンを制すように腰に回された腕に手を添えた。



「ベンジャミン様、どうされましたか?」


「マティルダとの距離が近い。離れてくれ」


「も、申し訳ございません」



男性店員がすぐにマティルダと距離を取った。

ベンジャミンはマティルダを抱きしめたまま動かない。

彼がこのまま近くにいるとプレゼントの話ができないため、戸惑いつつ声を掛ける。



「あのー……ベンジャミン様」


「…………」


「店員さんと、もう少しお話ししたいのですが……」


「この辺がモヤモヤする」


「え……?」



ベンジャミンは胸元を押さえている。



「それって……」


「これ以上、近づいてほしくない」


「!!」



マティルダは思っていた。

ベンジャミンが言っているモヤモヤはヤキモチではないかと……。

しかしベンジャミンには、その気持ちを現す言葉が分からないのかもしれない。

マティルダは怯えている男性に「申し訳ありません」と言ってからアイコンタクトを取る。

男性はベンジャミンとマティルダを交互に見て頷いた。



「で、ではそろそろ行きましょうか!」


「何も買わないの?」


「ベンジャミン様が勧めてくださった髪飾りを買いましたわ!少し手を加えてもらったので時間が掛かったのですよ。それよりも他に寄るところはたくさんありますから早く行きましょう!ねっ?」


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