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シエナは事が落ち着くまで城で軟禁されていたそうだが、なんと部屋から抜け出して逃亡したそうだ。

黒く焼け焦げた鍵と、護衛の魔法騎士を痺れさせて発見を遅らせた。

彼女の脱出を手助けした者…ライボルトもガルボルグ公爵邸を抜け出したのだと大騒ぎになっているらしい。


(まさかシエナにライボルトお兄様まで……どうなっているの?こんな展開、ゲームにはなかったはずなのに)


ハッピーエンドどころか、本人達にとっても最悪な展開になっているようだ。

それに加えて、ガルボルグ公爵がマティルダのために怒ったというのも意外だった。


(あのお父様が……わたくしのために怒ったというの?本当に?)


お前の失態だと責められそうな気がするのだが、思い出すのはガルボルグ公爵邸にて今まで厳しく接されてきた日々だ。

マティルダがケーキを食べる手を止めて、無意識に顔を歪めていると、ベンジャミンがこちらを不安そうに見ていることに気づいて顔を上げた。



『マティルダ、ごめんね』


「……え?」


『君がこれを聞いて嫌な思いをしてしまうのではないかと思ったんだ。今も悲しそうな顔をさせてしまっている。あんな辛い出来事を思い出させたくなかった』



マティルダはベンジャミンの言葉に首を横に振った。



「いいえ、違うのです……!わたくしがいなくなり二人は…皆は幸せになると思っていたので、予想と違っていて驚いていただけですから」


『マティルダにあんなことをして、幸せになれるはずないだろう?本当なら僕がこの手で跡形もなく消し炭にしてやりたいのに……』



ドス黒いオーラが漏れ出ているベンジャミンを諌めるようにしながらもマティルダは苦笑いを浮かべた。

それにベンジャミンは心配していたが、マティルダはこの話を聞いてもガルボルグ公爵邸に戻ろうとは思わなかった。


貴族として窮屈な日々を送るよりも、ベンジャミンとのびのびと過ごす方が自分にはあっているとわかっていたからだ。

それによくよく考えてみると、マティルダが娘として可愛いからではなくて、まだまだ使えるから失うのは惜しいという解釈ができると思った。


(心配しているのは公爵家の未来とわたくしがどう利用できるか……とかなのよね)


マティルダが一番、恐れていることはベンジャミンが王家の思惑に巻き込まれて利用されてしまうことだ。

無茶な条件でもベンジャミンはマティルダのためなら飲んでしまうことだろう。

そうなることだけは避けなければならない。


(それだけは絶対に嫌。わたくしはあの場所でベンジャミン様と一緒に暮らしたい。この件が落ち着くまで暫くブルカリック王国には行かない方がいいわね)


そんな決意を胸にレストランをあとにして目的の宝石店へとベンジャミンを誘導することに成功した。

ベンジャミンには椅子に座って待っていてもらい、宝石店にいる男性店員に声を掛けて「内密に」と告げて宝石を査定してもらう。

その間、ベンジャミンにプレゼントしたいもの自分が欲しいものを選んでいるフリをしながら見ていた。

しかしベンジャミンは男性店員をずっと視線で追いかけている。


(これこれ!ベンジャミン様に似合いそうだとずっと思っていたの。まだあってよかったわ)


マティルダはお目当ての懐中時計を見つけて喜んでいた。


ベンジャミンはここでもマティルダにプレゼントする気満々なのか度々「いいものはあった?なんでも選んでいいよ」と声を掛けてくれる。

ショーケースを見てまわりつつも、店員が戻ってくるのをソワソワしながら待っていると、ベンジャミンは立ち上がるとマティルダの側に顔を寄せて宝石やアクセサリーを見ている。




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