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『そうなのよ!でも力を使いすぎて死にかけてるから、思いきりやっちゃって頂戴』


「わかった」



トニトルスの言葉にベンジャミンが頷くと、窓の側の木枠にイグニスと呼ばれた赤い鳥を置いた。

そしてパチンッと指を鳴らした瞬間に赤い鳥が燃え上がるのを見て、マティルダは悲鳴を上げた。



「──きゃあああ!焼けちゃいますっ!ベンジャミン様、やめてくださいっ」


「なんで?」


「だ、だって……!このままだと焼き鳥に!」


「ヤキトリ?」


「とにかく、今すぐに手を止めてくださいっ」



マティルダはベンジャミンの腕を押さえてみたものの、火は轟々と燃えている。

慌てて手を出して鳥を救おうとするものの、何故かトニトルスに嘴で思いきり突かれて制止されてしまう。



「痛っ、何をするの!このままだとこの鳥が焼け死んじゃうわ」


『何言ってるのよ。大丈夫に決まってるでしょう?』


「でも、でもっ……!」



マティルダがベンジャミンに助けを求めるように視線を送ると、彼は何故かキョトンとして首を傾げている。


(わたくしがなんとかしないと……!)


そう思い、再び炎の中に手を突っ込もうとするとトニトルスがマティルダの前に出る。



『アタシもお腹空いたわ。マティルダ、早く電気を頂戴よ』


「今はそんな場合じゃ……!」


『馬鹿イグニスを助けるために、大量の魔獣を追っ払って、だいぶ力を使っちゃったんだもの!まったくアンタのせいだからね!』



トニトルスがそう話している間に赤い鳥を包んでいた炎がゆっくりと消えていく。

黒焦げになった鳥を見たくなくて、マティルダは手のひらで目元を覆っていると、トニトルスに『早くしてよ!』と頭を突かれる。

手を使って払っていると目の前で赤い鳥がゆっくりと起き上がって羽根を広げているのが見えた。

マティルダはその姿を見て目を見開いていた。



『はぁ……今回はさすがに死ぬかと思った。まぁ、死んでも生き返るんだけどな』


「え……?」


『おぉ、あの時の嬢ちゃんじゃんか!いやー、あの時は助けてくれてありがとな!』


「???」


『オレだよ、オレ!羽根をむしろうとしてナイフを持っていた男に追いかけ回されていた時に助けてくれたじゃんか。結局、ビルから落ちちまってビックリだったよな」


「…………?」


「姿も違うし、わからなくとも無理ねぇか』



あの時、ビル、ナイフ、追いかけまわされていたという単語を聞いてマティルダになる前のことを思います。

それと尾の長い赤い鳥を助けた時に追いかけられて背中から落ちてこの世界に来たのだ。



「も、もしかしてあの時の……!?」


『オレ様の力で生き返って、この世界に送ったんだぞ!感謝しろよな』


「……も、もしかして、あの時の赤い鳥っ!?」


『おう!オレはイグニスだ』


「……………」


『アンタいい加減にしなさいよっ!そこら中で勝手に力を使って……!』


「いだっ!やめろ……!」



トニトルスがイグニスを嘴で突いているのを呆然として見ていた。


(わたくしがマティルダになれたのは、イグニスがいてくれたからってこと?)


赤い羽根がバサバサと目の前を舞っている。

ベンジャミンがそれを制すると、トニトルスはフンと首を背けた後にマティルダの頭の上に止まった。

頭皮に鋭い爪が食い込むが、慣れてしまえば気にならない。



『ひでぇ……』


『自業自得よ!今度は探してあげないんだから』


『ごめんって……けどさ、長い時間生きてると刺激が欲しくなるじゃん?』


『お黙りっ!』



威嚇するようにトニトルスは羽根を広げている。

マティルダにとって二人の会話の内容はいまいち理解できない。




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