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「……ありがとう」



ずっと一緒に過ごしてきたけれど、どこか遠くに感じていた距離がやっと近づいたような気がした。


ベンジャミンは自分の髪にある花を一本取ると茎を丸めて指輪のような形を作る。

そしてマティルダの左手の薬指に花の指輪を通した。

ベンジャミンの瞳の色と同じ紫色の花が綺麗に咲いている。



「……綺麗」


「マティルダ」


「はい、なんでしょうか」


「君を一生、大切にする……だからずっと一緒にいてください」



花の指輪を見ていたマティルダはその言葉にゆっくりと顔を上げた。

驚きと、戸惑いと、恥ずかしさ、色々な感情が混ざって上手くは言えなかったが、やっと一歩踏み出せた……そんな感覚だった。



「はい!こちらこそよろしくお願いします。ベンジャミン様」



ベンジャミンの言葉に笑顔で頷いた。

マティルダの髪にある黄色とオレンジが混ざった花を取り、指輪の形に作りベンジャミンの左手の薬指に入れた。

並べてみると偶然にも同じ花の色違いだということに気づく。



「マティルダが選んでくれた花も綺麗だね」


「ふふっ、なんだか恥ずかしいです」


「本物の夫婦みたい」


「そうですね」



空は青々と晴れ渡り、先程よりも太陽の光が眩く感じた。

二人で手を繋ぎながら互いの話をしていた。

この世界に来てから、一番楽しい時間になったような気がした。


(ベンジャミン様が好き……大好き)


今は心からそう思った。

彼と出会って一年以上経つが、まさかこんな関係になるなんて、あの時は思いもしなかった。


それからは以前よりもずっと恋人らしい距離感で彼に接することができていた。

そして少しずつ行動範囲も広がっていき、森の中を歩いていても魔獣を一瞬で焦げつかせることができるマティルダの魔法の威力を見たベンジャミンは更に広範囲の探索を許可してくれた。


そして次の日から塔は消えて、以前と同じ屋敷に戻っていた。

マティルダが寝ている間に元に戻したらしいが、ベンジャミンの魔法には驚かされてばかりである。


相変わらず過保護なことには変わらないし、隙があればドロドロに溺愛してくるが、以前のような違和感はなくなり、心地のよい自由でのびのびとした時間をベンジャミンと共に過ごしていた。


 

そんなある日のこと、トニトルスが小さな赤い鳥を咥えて戻ってきた。


スズメサイズの赤い鳥とは違い、久しぶりに見たトニトルスは孔雀くらいのサイズ感だったのが、久しぶりに家に帰ってきたと思いきや、カラスくらいのサイズに戻っていて驚いていた。



「トニトルスってば、一体どこに行っていたの?」


『マティルダ、話は後にして!先にコイツを手当てしたいの!ベンジャミンはいる!?』


「この鳥は……?」


『アタシがずっと探していた馬鹿野郎よ!やっとこの世界に戻ってきたと思ったら、力なく倒れているんですもの……!心配はないでしょうけど、一応早く回復するように炎に焚べてあげて。ベンジャミンに伝えてくれる?』


「???」



トニトルスがなんのことを言っているのか、よく理解できなかった。

手のひらに乗っている小さな赤い鳥を火に焚べたら焼き鳥になってしまうのでは、ということで頭がいっぱいになっていたところでタイミングよくベンジャミンが現れる。

マティルダの背後から抱きしめるようにして擦り寄るベンジャミンの端正な顔にも大分慣れたような気がする。



「ベンジャミン様……!」



最初はマティルダにあった視線がトニトルスの方へ向いた。

そしてベンジャミンは僅かに目を見張った後に声を上げた。



「トニトルス、やっとイグニスを見つけたんだね」


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