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『うじうじ悩んでないで、さっさと本人に確認した方がいいんじゃないかしら?』


「うーん……なにがあったのかしら」


『本人に聞いてみるのが一番よ?』


「トニトルス、いつもありがとう」


『はいはい、もう本当に人が良すぎて嫌になっちゃうわ』



トニトルスは友人のようにマティルダの話を聞きつつ悩み相談に乗ってくれているが、大体は『見ていてイライラするのよ…!さっさと本人に伝えなさい』と頭を突かれて終わる。

しかしいざとなった時は背中を押してくれる姉御のような面倒見のいい鳥である。

もうすぐ魔力が切れそうという時にマティルダは手を離した。



「今日はこのくらいでいいかしら?」


『ふぅ……ごちそうさま』


「スッキリしたわ」


『アタシもアンタのおかげでもうすぐ力も溜まって元の姿に戻れそうだし、やっとアイツを連れ返せるわ……ウフフ』


「???」


『アタシは満腹になったし、ベンジャミンももうすぐ帰ってくるみたいだから行くわね』



怪しく笑いつつ羽根を嘴で整えている姿を横目で見ながらマティルダは窓を開けて考えていた。

開けた窓の枠にやってきたトニトルスは再び『ありがとね〜』と言って、キラキラの薄紫色の羽根を広げて飛び立って行った。

バチバチと火花のように電気が散っている姿を見送りながら、マティルダは溜息を吐いた。


(やっぱり聞いてみましょう。ベンジャミン様が元気がないのは嫌だもの……!)


トニトリスと入れ違いベンジャミンは帰宅した。



「おかえりなさい。ベンジャミン様」


「ああ……ただいま、マティルダ」


「お茶、飲みますか?」


「いや、今はいらないよ。ありがとう」


「…………」



黒いウサギの仮面と買ってきた食材をテーブルに置いたベンジャミンは椅子に腰掛けて何かを考えながらボーっとしている。

数日前に出かけて珍しく何も持ち帰らずに帰ってきたと思いきやベンジャミンはこんな感じで物思いに耽っている。

心配でベンジャミンを見ていると両手が広がり、ベンジャミンの差し出されている手を掴んだ。

マティルダの存在を確かめるようにベンジャミンは体を強く抱きしめている。



「ベンジャミン様、どうかしたのですか?」


「なんでもないよ」


「でも……」


「マティルダは幸せ?」


「はい、幸せです」


「僕は、マティルダがここにいてくれたらそれでいい……」


「わたくしはここにいますけど」


「うん、知ってる」



ベンジャミンのサラサラとしたパープルグレーの髪をサラサラと撫でながら考えていた。

そしてこの状態のベンジャミンを見てあることが思い浮かぶ。


(……もしかして、愛情不足!?)


会社で働くママ達が言っていた言葉を今になって思い出す。

やはり忙しくて時間を取れないと子供は愛情不足になり、いつもと違った行動を取ったり、落ち込んで思い悩むことあると……。

マティルダはいつもとは違う行動を取り、マティルダに甘えているように体を寄せるベンジャミンを見てゴクリと唾を飲み込んだ。


(やはりベンジャミン様の元気がない……ということは愛情不足なんだわ!やっぱりわたくしがベンジャミン様の名前を愛称で呼ばなかったり、一緒に寝なかったりしたから落ち込んでいるのかしら。このまま放置していたら、わたくしの方が愛想を尽かされてしまうということでは……!?)


前まではベンジャミンに迷惑をかけないようにと思っていたが、今はベンジャミンと一緒にここにいたいと思う自分がいる。


(こ、このままだとベンジャミン様を悲しませてしまうわ。恥ずかしがっていてばかりじゃダメよね……!ここは、わたくしが少しは積極的にならないと!)



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