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先ずは順番に問題を解決していかなければならない。
両親の反応はローリーの思ったような形ではなかったが、まだまだ挽回の余地はある。
それにシエナとの関係を完全に否定されたわけじゃない。
「シエナ、ライボルトのところまで明かりを頼む」
「…………チッ」
「シエナ……?」
「っ、なんでしょうか?ローリー殿下」
「ライボルトのところに行きたいんだが、明かりを頼んでもいいか?」
「えっ、でも……さっきので魔力がなくなっちゃって」
「嘘だろう!?少し光を浮かべただけだぞ?」
「でも私……長い時間、頑張ったんですよ?」
「シエナ、冗談はやめてくれ!」
「ひどいっ!光魔法のこと何もわかってないくせに!!」
「シエナ!?おいっ、シエナ待ってくれ……っ」
「ローリー殿下なんて知らないっ!」
暗闇の中、手を伸ばしてシエナを引き止めようとするが何も掴めないまま彼女は走り去ってしまった。
(シエナは何を怒っているんだ……?あんな子供が使えるようなレベルの魔法で限界がくるわけないだろう?)
とりあえずシエナを後回しにして、ローリーは仕方なく壁を伝ってライボルトが待機しているであろう部屋へと向かう。
その部屋からは明かりが漏れていた。
ライボルトではなく、騎士団長の息子であるバルーゼが手のひらに炎を浮かべていた。
赤い短髪がぼんやりと暗闇の中でゆらめいていた。
彼は眉を顰めて困惑した様子だった。
「ローリー殿下、これは一体どういう事だ?何が起こっている!?」
「説明は後だ。バルーゼはその火で城の蝋燭をつけて回ってくれ」
「わかった!」
「ライボルト、城や町に明かりを届けるために一緒に来てくれ」
「…………っ」
「ライボルト?」
「あ、ああ……そうだな」
苦い表情を浮かべるライボルトと共に、電気を城や町に届けることができる蓄電室へと向かった。
他にも城には貯水庫や火種を貯められる場所があり、城下町に届けられている。
城下町以外では少し生活の質は落ちるが、魔法が篭った魔石などを買うことによって生活を豊かにできる。
恩恵を直接受けることができる城下町は人気ではあるが、納める税金が高い。
ローリーも日課として水魔法を魔石に込めたり、城の貯水庫に水を出して民達のために魔法を使っている。
魔法を使わないほどに力は落ちていき、魔力は弱まってしまう。
しかしそれは辛い訓練や作業を繰り返さなければならず、面倒であることには変わらない。
限界はあれど身にたまる力を発散させてポンプのように循環させていくことで魔力の容量を増やしていく。
貴族たちはその力を分け与えることで生計を立てていた。
より便利な魔法の爵位が高くなるのは必然だろう。
そして生活するのに便利な魔導具などを動かす雷魔法も同じで、かなり重要視されている。
(父上はこの現象はマティルダがいなくなったからだと言っていたが、同じ力を持つライボルトがいればなにも問題ないはずだ……!)
暗闇の中、バーゼルがつけた蝋燭を持って部屋に到着したローリーはホッと胸を撫で下ろした。
「これでパーティーが再開できるな!」
「…………」
「ライボルト、どうしたんだ?」
「いや……久しぶりだからうまくできるかどうか、わからなくて」
珍しく歯切れの悪い返事をするライボルトを不思議に思っていた。
しかしローリーは急かすように声を上げた。
「早くしてくれ!町の人間が城に押し寄せているんだ」
「……っ!?」
「大変だと思うが、町に行き渡る量を頼む!」
そう言うとライボルトは恐る恐る腕を上げて、目の前にある金色の球体に手を翳して力を込めた。
パッと部屋が明るくなる。
城の灯りがついたことにローリーは安堵していた。
(これで大丈夫だ……!)




