24
(何を探しているのかは分からないけど、ベンジャミン様は探しもののついでに国を救っているということ……?)
それをブルカリック王国含めて、様々な国で行った結果がこれだそうだ。
ベンジャミンの噂が事実なことと底知れぬ力にも驚いていたが、彼は全くお金に執着していないことが質素な暮らしから見てとれる。
今、マティルダとの生活費は全てここから出しているそうだ。
とりあえずは一安心していたマティルダだったが、さらに「全部、マティルダにあげるよ」「欲しいものがあったら言ってね」「なんでも買っていいから」と言われて、驚きすぎて顎が外れてしまいそうになった。
マティルダは「特にありませんよ。今の生活に満足していますから」と言うと、まるでこの世の終わりかのようにベンジャミンは落ち込んでいる。
「べ、ベンジャミン様?」
「初めてお金があってよかったと思っていたのに……」
「!?」
「マティルダのために使うのを楽しみにしていたんだよ?それなのにマティルダに欲しいものがないなんて僕は一体、何のためにお金を貯めてきたんだろう」
ベンジャミンの紫色の瞳が悲しげに揺れ動いているのを見て、マティルダはグッと唇を噛んだ。
いつものベンジャミンとは違う、こういった可愛らしい部分にマティルダは弱かった。
その理由がマティルダを甘やかすためだと言うのだから嬉しいような恥ずかしいような……複雑な気持ちである。
「わ、わかりましたから!そんな風に悲しい顔をしないでくださいっ」
「じゃあ何か欲しいものがあるの!?早く言って……!」
「ぐっ……!」
キラキラと子供のように目を輝かせるベンジャミンは何故か自分のものではなく、マティルダのものを大量に買いたがる。
ベンジャミンと暮らし始めてから、どんどんと溜まっていくマティルダのもの。
ある一室には食材を買いに行くついでにと、マティルダのために買い与えられたドレスや宝石、ぬいぐるみや化粧品などが山のように積み上がっている。
それはベンジャミンがマティルダのためにと買ってきてくれるのだが、パーティーに出るわけでもないので使い道がない。
ベンジャミンにそのことを説明すると「ならマティルダが欲しいものを買うよ」と言って、大量買いをしなくなったのはよかったが毎回、欲しいものを考えるのが大変である。
「では、今回はベンジャミン様と楽しめる紅茶と甘いお菓子をお願いいたします」
「ん……わかった。少しの間、ここを離れるけれどすぐに帰ってくるから待っていてね」
「ふふっ、子供ではないのですから大人しく待っています」
マティルダが口元に手を当てて笑いながら言うと、ベンジャミンは嬉しそうに笑みを溢した後に跪いて、手の甲に唇を寄せた。
「マティルダ、大好きだよ」
「あ、ありがとうございます……!」
ベンジャミンの甘いセリフは日毎に増していくような気がした。
(わたくし、なぜこんなに甘やかされているの!?)
気になったマティルダはベンジャミンに「ベンジャミン様はわたくしのことが好きなのですか?」とストレートに聞いてみると「うん。僕はマティルダが好きだ」と普通に答えが返ってきたことに驚いていた。
それを皮切りにベンジャミンは毎日、マティルダに甘い台詞を囁いてくるようになった。
「ねぇ、マティルダ」
「なんでしょうか?」
「今度から唇にキスしてもいい?」
「えっ……!?」
「ダメ?」
「ダメというか、なんというか……こ、心の準備がっ!」
「わかった。マティルダがちゃんと僕のことを好きになってくれるまで待つから」
「~~~っ!?!?」




