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【コミカライズ企画進行中】ヤンデレ最強魔法使いと国外追放された悪役令嬢の幸せな新婚(監禁)生活〜元婚約者達は勝手に破滅したようですが、わたくしは知りませんから!〜  作者: やきいもほくほく
一章 悪役令嬢が幸せになるとは限らない!

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ブワッと体を持っていかれるような突風が崖の下から噴き上げてくる。

その風に煽られたのかマティルダの体の重心がグラリと傾いて足がもつれてしまう。

舞い上がる砂埃に目を閉じる。

踏ん張ろうと足を前に出したのだが、いくら経っても足先に何かが触れることがない。

ドレスの生地がパサリと大きく音を立てて目の前を舞った。



「え……?」



マティルダは小さく声を漏らした。

目の前には先程まで見ていた空があった。


(もしかして、わたくし落ちているの……?)


そう意識した瞬間に、一気に恐怖が押し寄せる。

マティルダになる前も鳥を助けながらビルの屋上から落ちた時のことを思い出していた。

咄嗟に魔法を使おうとするものの手が固まったように動かなかった。

マティルダはギュッと瞼を閉じた。

体が真っ逆様に落ちていく中、聞き覚えのない男性の声が聞こえたのと同時に浮遊感が消える。



「…………マティルダ」


「!?!?」



名前を呼ばれて薄っすら瞼を開くとそこにはパープルグレーの髪が靡いていた。

マティルダの体はベンジャミンによって抱え上げられているのだと気づいて驚きに声が出せずに彼をじっと見つめていた。



「もしかして身を投げて死ぬつもりだった?」


「へ……!?」



死ぬつもりなど全くなく、ただ足がもつれただけだと説明しようとしたが、ベンジャミンが怒っているような気がしてマティルダは口を閉じた。

いつもと同じで表情が見えない黒いウサギの仮面がじっとこちらを見ている。



「ベンジャミン、様……?」



ここにいるはずのないベンジャミンが何故かマティルダを空中で抱え上げている。

想像もできなかった状況に首を捻ることしかできなかった。

それよりももっと驚くべきことはいつもは話さないベンジャミンが声を出したことだろう。

想像していたよりもずっと若々しい声だった。

彼の名前を呼ぶが、こちらを見ていることはわかるが表情は窺えない。



「そんなにあの男が好きだったの……?」


「あの男って?」


「君の婚約者……ああ、元婚約者だね」



マティルダはベンジャミンの言葉の意味を考えていた。

そしてすぐにローリーの顔を思い浮かべて首を横に振った。



「好きじゃないの?」


「えぇ……特に恋愛感情はないですが」


「……ふーん」



そう言った後、ベンジャミンは何かを考えているようだった。



「あの……ベンジャミン様、どうかされましたか?」


「ねぇ、マティルダ」


「は、はい!」


「もうアイツの婚約者じゃないんだよね?」


「そう、みたいですね」



先程、ローリーに婚約を破棄されて国外に追放されたことを思い出したマティルダは頷いてそう答えた。

するとベンジャミンの仮面からフッと音が漏れたような気がした。


(笑った……?ベンジャミン様が?)


意外な行動に驚いていると、ベンジャミンは崖の上へと降り立って、マティルダを地面を下ろす。

そして手を伸ばして、マティルダの頬をなぞった。

切り傷があったのか触れられた部分がピリピリと痛んでマティルダが眉を寄せる。

いつもと明らかに違うベンジャミンの姿に戸惑いを感じていた。



「捨てるつもりならマティルダの命、僕に頂戴」


「…………!」


「ねぇ、いいでしょう?」



マティルダはベンジャミンの言葉に大きく目を見開いた。

夕陽が完全に沈んで夜空には月が上り始める。

そして、ベンジャミンのハーフグローブをつけた長い指がゆっくりとウサギの仮面に伸びていく。


パカリと外れた仮面……。

ベンジャミンの端正な顔立ちが見えて、濃い紫色の瞳と目が合った瞬間、視界が真っ暗に染まった。


ここまで読んでくださり、大変嬉しく思います!

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