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──転生した悪役令嬢が、必ず幸せを掴めるとは限らない。



そして、ついに〝あの台詞〟が耳に届いた。



「数々の証拠は揃っている。マティルダ・ガルボルグ、貴様との婚約を破棄をする……!」


「……!」



頭の中に鳴り響く『人生が終了』のお知らせ。

緊張で震える手をドレスをギュッと握りながら隠していた。


(どうしよう……!やっぱり断罪回避できなかった。このままだとわたくし、どうなってしまうの!?)


足は小鹿のように震えているが重たいドレスの裾で隠れている。

マティルダはギュッと手を握りながら意を決して壇上を見上げた後に反論するために口を開いた。



「わたくしは……っ!」


「長年、俺の婚約者として王家のために尽くしてきたことは賞賛に値するが、今回の件で父上と母上はがっかりするだろうな」


「違うのです……!ローリー殿下、わたくしの話を聞いてください!」


「うるさい。黙れ!」


「……………」



そう言うローリーの手は隣にいるシエナの腰にあり、体を寄り添うようにして密着させている。


(……裏切り者はどちらなのかしら)


仮にも婚約者に婚約の解消を迫るのに、他の令嬢と親しげにしているのはいかがなものかとつっこみを入れたくなってしまうのは致し方のないことだろう。


割り込みや弁解は許さないとばかりにローリーの口から一方的に語られていくマティルダを責め立てる言葉。

どうやらこちらの話は一切、聞く気はないようだ。


そんな時、ローリーの影から薄紫色のレースがふんだんに使われているドレスを着て、ホワイトゴールドの髪を綺麗に纏めているシエナが現れる。

眉毛は八の字になっていてピンク色の瞳は潤んでおり、今にも涙が溢れてしまいそうだ。

震える手を祈るように組んでいる。



「ローリー殿下、ですがマティルダ様は国にとって必要不可欠な存在ですわ!それに婚約を破棄するなんて……マティルダ様の立場が」


「心配するな、シエナ。これは致し方ないことなんだ」



マティルダを無視して進んでいく断罪のシナリオは止まることはない。

本来ならば、マティルダは怒りを爆発させて魔法の力を暴走させ、シエナに襲いかかるがローリーによって押さえ込まれてしまう。

そして最後には暴言を吐き散らしながら騎士に拘束されて退場する。

今のマティルダには呆れすぎてそれをする気力もない。


元々、そうならないために今まで頑張ってきたつもりだった。


それよりも今後、マティルダに待ち受けているであろう悲惨な結末について頭を抱えていた。


(ああ、詰んだわ……!なんでこんなに一方的なの!?わたくし、何も悪いことしていないのにっ)


あれだけ頑張ってきたのにも関わらず、それが報われないとなると、もうこうなってしまうのは『運命』とさえ思えてくる。


(こんなことになるんだったら、さっさと逃げて仕舞えばよかったのよ!もう、わたくしのバカッ)


しかしそんな思考を見透かすようにマティルダは追い詰められていく。



「ガルボルグ公爵にもこの件を伝えさせてもらう」


「……!」


「もうお前に逃げ場などない。マティルダ」



このことを父に報告されたらどうなるか簡単に想像ができた。

そしてマティルダはこうなる前の出来事を思い出していた。



* * *



ブルカリック王国では魔法を使うことができる。

『Hell of Love』という少々過激なタイトルの乙女ゲームは魔法学園が舞台に繰り広げられる『恋の地獄』である。


様々なイケメンが登場するのは当然なのだが、一番の見所はドロドロにぶつかり合う愛憎劇である。

かなり大人向けの内容となっており、恋愛耐性がないと顔面にパンチをされるほどの衝撃を受ける。


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