プロローグ
男性向けで書いてますが、女性にも楽しんで貰えるように頑張ってみました。
初のラブコメなので、温かい目で応援して頂けたら嬉しいです!
よろしくお願いします!!
俺は〈人間関係を壊す悪魔の歌唄い〉。
名前は「塩原 詩」である。
何故、こんな名を付けられてしまったのか。答えは簡単。俺が、喧嘩っ早いヤンキーだからじゃ。
喧嘩をする理由も簡単。友達や、家族を守る為。
だがしかし、そんな事をして誰かを傷付けてしまえば、俺にどんな理由があろうとも、社会や他人からの評価は下がる。
にも関わらず、俺は殴り合った。
守って、守って、守り抜いた。
でも――いや、だからこそ、俺に残ったのは、社会の底辺というレッテルと、数少ない友人と、家族だけ。
色々な遊びを教えてくれた仲間達は、俺にビビって逃げていったのじゃ。関わると、ロクな事が無いと思ったのじゃろ。
何度も言うが、俺に残された物は数少ない友人と家族だけ。
この人達を失ったらもう、俺にはなんにも残らない。
空っぽなまんま、ただそのまんま。社会の底辺というレッテルだけを持って生きていく事になる。
――だから俺は……決心した。
変わろう、って。喧嘩ではなく、まともな解決方法で、家族や友達を、守ろうって。
俺は、俺は……普通の人として、認められたい。
もう2度と。この、悪意のある通り名のせいで、家族や仲間達を、悲しませたくない。
じゃから俺は、普通の人として認められるような、そんな助け方を、生き方を、目指すのじゃ。
モノローグが長くなってしまったが、この名前の付いた由来、もとい、俺の忘れられない体験を、ここで今話そう。
っ? なにゆえ、そんな話をするのじゃと?
ううむ、そうじゃな。
それは目の前に、彼女が居るから、かの。
ほんじゃあ……話を始めよう。
たった数分の回想による、クラシックからロックへと移り変わった交響曲第一章、その独りよがりのプロローグを――。
○●○●
――あれは、高校に入学して間もない頃の事。
放課後の昼3時半頃、親友の『天音 鈴』と一緒に、レンタルビデオ店に着いた時の事じゃった。
「ねぇねぇ、そこの君。お兄さんと遊ばない?」
「ちょ、ちょっと。やめてください」
正面から見た店の両脇には、事務所みたいな建物が並ぶ。
その左側の細い路地のほうで、怪しい男2人組のナンパ現場を発見した。
口説かれている女子の対応を見る限り、それに応じるつもりはない模様。
黒髪ロングの眼鏡、薄緑色のブレザー、黒のロングスカート。真面目なのが目に見えて分かる。
ん、薄緑色……なんかどこかで……。
とにかく、多分、これはピンチじゃの。可哀想じゃ助けてやらねば。
――それにしてもなんじゃ、その一昔前に言ってそうな口説き文句。
今は令和じゃぞ? 令和。
ネットでのナンパが増える昨今でも、そんな風には言わんぞい。
スベってもいいから、せめて『君は僕達という指輪に選ばれた美しい指だ』みたいな、よう分からん洒落の1つでも垂れんかいの。
あぁ……今はそれどころじゃなかったの、いかんいかん。
「ねぇ……詩。あれちょっとやばそうじゃね?」
鈴が、まだシワのあまりついていない、黒い長袖の裾を引っ張る。
「確かに……あれは見過ごせないのじゃ。もうこれ以上、揉め事を起こすのは嫌じゃから、威嚇で追っ払おう」
そうじゃ……この制服も、俺のお母さんやお父さんがなけなしのお金で買ってくれた物。
安易にケンカをして、制服を破りでもしてみろ。2人の悲しむ顔を見ることになってしまう。
それだけは嫌じゃ。もう2人に迷惑をかけんと決めたんだからの、上手くやり過ごさなきゃいけない。
「またあれやるの……? 詩、イケメンなのに、なんかモヤるなぁ」
「それでも、しょうがない。やるしかないのじゃ」
「でも……俺もたまにはそっちの役をやるよ!」
鈴は、元気一杯の明るい奴で、見た目がかなり幼い。タレ目じゃし。力技に関しては、あまり意味がないじゃろう。
「とにかく、俺があの2人と話してる間に、彼女を助けてくれ。鈴のすばしっこさは光る物がある」
そう告げられた鈴は、戸惑ったような表情をしていたが、直ぐに子犬のような笑顔を作り応えてくれた。
「おぉけぇ! 詩に任せたよ!」
美しく、それでいて、どこまでも甘い金。
まるで体を酔わせてしまいそうな程に、動きの少ない、彼のミディアムヘアーの金髪は見事じゃ。
運動するのに気になるからと、その細く釣り上がった眉よりも、少しだけ上に揃えた前髪。
前から見た時に耳の外側だけが見えるように揃えた横髪の長さも、まるで女子かと思えるような麗しさを持つ襟足も、彼の無邪気さにぴったりである。
「ありがとう。じゃあ……行こうかの」
信頼出来る友に、感謝を。
「気を付けてな!」
力強い鈴の声を背に、出発。
俺達は、レンタルビデオ店の入口から少し離れた場所――つまり、事件現場よりも更に離れた場所に居たのじゃ。
いきなり走ると、警戒されて『キャー! 怖いわぁ変態よぉあのお兄さぁん!』なんて事にもなりかねない。
ので、ジュースを買うフリをして、自然にゆっくり近付こうと思う。
少し小走り気味にして、まるで忍者(隠密活動って少し憧れるのじゃ)の如く、華麗に忍び足ダッシュを。
小走りをする度に、カーテンのように目に映る景色が巻かれていく。
視線がブレる。道路、ビデオ店の近く、その入口、自販機の近く。そして、自販機に辿り着いた。
このすぐそばが、事件現場。ちょいと緊張する。
「私、これから用事があるので、帰らないといけないのです!」
「えぇーいいじゃーん、そんなのばっくれようぜ!」
「そうだそうだ! その身長の高さを活かして、クラブで踊れば注目されるぜ?」
「そ、そんなっ。私、そんなの興味無いです。そんな、チンピラみたいなのっっ」
「チンピラだぁー? てめぇ、このクソガキ! 骨みてぇにスカスカな体を、俺達が良いように使ってやるって言ってるのに! 感謝もしねぇで!」
「くっ……ちょ、調子乗らないでこのブス! 私は中身重視だけど、あんたらは中身もブスよ!」
「あぁんだとこのアマァ!!」
ガタンッ。
「あれ〜。なんか、ジュース2つ出てきたのじゃ〜。もう1個いらないな〜。誰か欲しい人居ないかの〜」
「なっ、なんだ今のっ!」
タイミングを伺ってる間、俺はどんな顔をしてやろうか考えていた。
何故そんな事が必要か。答えは簡単、俺の見た目が……ヤンキーだからである。
髪型は、ジェットモヒカン。ゴリゴリにかきあげた髪の毛が、ジェット機の離陸角度のように反り上がっている事からその名が付けられた。
ツンツンとした見た目なので、髪の毛で人を殺せるのではないかと思える程。
色は、俺から見て左側が水色。右がネイビーブルの色合い。
両耳共に、ガンガンのピアス。多分4つは開いてる。
頬にはわざと、切り傷のように見えるメイクを施した。
首にはドクロと十字架のネックレス。
身長は183。時折、色んな所に頭をぶつけて痛い。
これで顔も怖ければ、ケンカの時もナメられずに済むのじゃがなぁ。
「な、なんだお前!! ひっ、ひぃぃっ」
なにせ、顔はお母さん譲り。女性的な顔と言われている。
目元、鼻筋、唇、顎の輪郭、そのどれもが透明感のある大人な女性をイメージする物になっているのじゃと。
「あ、兄貴! こ、コイツ!」
違うのは、眉毛だけじゃ。強く見えるように、位置も細さもこだわって、釣り上げてもらった。
目も、一応少し釣ってはいるのだが、大きいし2重もパッチリじゃ。柔らかく見えてしまう。
俺は、家族を、友達を守りたかった。大事な人達の笑顔の為なら、こんな事、造作もない。
じゃから、俺はこの顔を編み出した。
そうすれば、こういう方法であれば、この街に轟いた、あんな最悪な名前を消せるんじゃないかっ、て。
じゃが、この考え、まだまだ生ぬるかったみたいじゃのぉ。
「間違いねえ! 〈人間関係を壊す悪魔の歌唄い〉だ!! めっちゃ目が激細でこえぇ!!」
恐れおののく表情の、チンピラちゃんA。
ご名答。ふぅ、名前ってのは、そんなすぐに変わるもんではないみたいじゃの。
「にっ、逃げようぜ兄貴ぃ!!」
王道タラコ唇でお尻を向けて逃げようとする、チンピラちゃんB。
「おりゃー! 女の人ー! 大丈夫ですかぁー! あんた達もあっち行った行ったぁ!」
そして若干遅れ気味に登場した鈴。サササッと間をくぐり抜け、彼女を救出。
「「ひぃぃ!!! なんだあいつらー!!」」
あ、逃げていった。じゃあの〜。
――色々と考えたけど、結局いつもの、ガンガンに白目をむいて、メチャクチャに目を細める顔にするしかなかったか〜。
相手からしたら、お昼になんとなく付けた、日曜劇場に出てくるホラー映画の、怖すぎる幽霊並みのトラウマを植え付けられた事じゃろう。
可哀想に、今度ご飯でも奢らなければ。
「ふぅ……大丈夫かの2人共」
ポカーンとした顔で、鈴の腕に掴まる彼女。
そりゃそうじゃろうな、いきなりナンパをされたと思ったら、今度はヤンキーが白目向いて現れるんじゃ、何事かと思う。
じゃが……あれを見たんじゃ、この人も怖がって立ち去るじ――。
「あっ……ありがとうございます!! 凄い、かっ、カッコいいいい!!」
んえ? …………こっ、怖がられないじゃと!?
「私、10分ぐらいあそこで粘られてたんですよ! 本っっ当に嫌で嫌で、つい暴言吐いちゃって……。あなた達が来てなかったら、私殴られる所でした!」
ものすごぉく嬉しそうな顔で、俺達を交互に見つめてきた。まるで、小動物のように無邪気な笑顔を振りまいている。
はぁ、なんだか、中々の変わり者というか、優しいというか。
……ん? なんじゃ、この人の目、碧色? それに、なんか顔の造りが。
――違和感を覚えるな。
彼女、少し幼いが美人系の顔をしてる気がするし、何故そんなに自信無さそうにしとるのか。もっと自分の綺麗さをアピールしても良さそうなものじゃ。
「いやぁ〜! お礼はこっちの、詩って人だけでいいよ! 俺は特に何もしてないしっ」
頭をポリポリとかき、自分の活躍は大した事無かったと苦笑を浮かべる鈴。
「そんな事ないぞ。鈴が居なければ、彼女は今頃あやつ達に連れ去られていたかもしれん。ありがとうなのじゃ」
「っマジ!? やぁったね! じゃあ嬉しく思っとくね!」
褒められたらすぐ、コロっと顔を変えて喜べる。その素直さは鈴の良い所じゃろうな。
彼のそういう心の大らかさ、清らかさには、本当に尊敬の念しかない。
「とにかく、助けるのが遅くなってすまなかった。お詫びと言ってはなんだが、このジュースを受け取って欲しい」
そう言って彼女に近付き、缶のオレンジジュースを手渡した。
「それから鈴、君にも同じ物を。手伝ってくれたお礼じゃ」
彼にも同じように、それを手渡す。
「イエェーイ! やったやったぁ!」
「あの……私、貰えないですよ、こんな」
「良いのじゃよ。俺のあの顔を見て、怖がってくれなかったお礼だと思っておくれ」
柔らかい笑顔を作り、彼女に微笑む。実際、わざととはいえ、最初はあの顔で嫌われていくのが辛かったからの。
ほんのささやかなお礼じゃな。
「えっ……? あなた、すっっごくイケメンじゃないですか。それに、助けてくれたし、あのくらいじゃ何も変に思いませんよ!」
んぐっ……なんじゃろう、なんか凄く自分が偉くなった気分じゃの。
なんかこう、キラキラキラ〜って感じの音が鳴ってて、ミュージカルで流れそうな音楽が流れて、城に居る感じ。
ベタじゃが、舞踏会でもしたら良さそうな! 周りには可愛い動物ちゃん達が踊ってて……。
これもこれで悪い気はしない(いや妄想がメルヘンチック過ぎる)。
「ごほんっ。ありがとうなのじゃ。そういや君は、俺達と同じ学校なのかの? 制服が似ておる」
俺達の通う『音山田高校』の指定制服は、男子は薄緑色のブレザー、ズボン、赤ネクタイ、白Yシャツじゃ。
まぁ、生徒の民度がそこまで悪い訳じゃないから、校則自体はユルユル。髪色も制服も割と自由で、とても素晴らしい。
肝心の女子じゃが、確か、そっちもおんなじような感じ……の、はず。
「私っ、音山田です!」
メガネをくいっとあげて、誇らしげに言う彼女。
「うわぁお! てことは俺ら、同じ高校じゃん! 凄い偶然! 今度、顔合わせたら、挨拶するね♪」
「そうじゃの。なんだか、友達が出来た気分じゃ。せっかくだし、君の名前でも教えてくれんかの」
「えっ……あっ……」
「??」
なんじゃ? 名前の話になった途端、急に顔が曇り始めたの。いかん、まずい事だったのじゃろうか?
「そ、その……」
レンタルビデオ店の裏のほうから、車の音が聞こえる。
その音が、彼女のか細い声をかき消した。
それが通るたびに、全員の心は次第に轢かれていく。
何度も、何度も。圧迫された。
このままじゃいけない、切羽詰まったこの空気を切り替えよう。
「俺の名は、『塩原 詩』。こっちの元気で良い奴は『天音 鈴』。またなんかあったら、俺らの所に来て話しておくれ」
「えっ……?」
「君があまり話したくないというのなら、しょうがないさ。隠したい事の1つや2つ、あると思うし」
のじゃ言葉を消して、ちょっとオシャレにカッコつけてみた。きらりん。まぁ、あまりカッコよくないかもしれないが。
「そうだね〜。また今度話そっ、バイバイ!」
俺と鈴は、彼女に背を向け、目的であったレンタルビデオ店に戻ろうとする。
これで良い。俺にも、もう2度と掘り起こされたくない過去はあるからの。
「……あっ、あの!」
「……?」
振り返ると、彼女が両の拳を握りしめ、前のめりで何か伝えようとしていた。
「私の名前! 『ソフィア・ドルチェ』って言います!! やっ、優しくしてくれて、あ、ありがとー!」
「っっ……」
少し、驚いた。まさか、名前を言ってくれるとは、思ってもいなかったからの。呆気に取られてしまった。
なるほど……さっき感じた、目や顔の違和感はこれか……。ハーフかの? それにしても……。
「おお……綺麗な名前……」
隣で鈴が、少年のようにキラキラとした目で、嬉しそうに呟いた。
あぁ、綺麗じゃ。本当に。その名前から、音楽が聴こえてくるみたいに……とても甘美に。
そう思った瞬間にはもう、ソフィアさんの手を取って、言葉を連ねていた。
「ソフィアさん……名前っ、教えてくれてありがとうっ。とても綺麗じゃ……何度だって、君の名を呼びたいくらいだ」
「へっ、あっあっ…………」
ん? なんじゃ、なんか彼女の顔が赤いぞ? どうしたのじゃ、急に熱でも出たのかの?
「すっ……」
「す??」
夕日に照らされ、映し出されていたその紅潮は、影に隠れる事になる。
照らされた彼女、成りを潜めた俺、その構図は覆り、両方を暗闇に誘った。
「好きです、詩さん……付き合ってください……」
え? なんで告白された?
「あ……ごめんっ。むりっ」
そしてなんで断った?
「あっ……あっ、あっ、あぅえっえっうっ」
あっ……これ絶対あかんパターンのやつじゃ。なんで? 何故断った? というか、なんでこの展開になったの?
えっ、嘘じゃろ……いやまっ、これこの後にメチャクチャに気まずいや――。
「ずびっ、うっっ、うっ」
終わった。確実にアウト。
「ごめんなさぁぁぁぁぁい!!!!!」
そう叫んだソフィアさんは、一直線に逃げていく。
「あっ、ちょっと待つのじ……いやめっっちゃ足速っ!!? えっちょ……」
点となったソフィアさん、たたずむ俺、気まずそうにする鈴。
何故……またこんな嫌な歴史が生まれるのじゃ……。
「あっ、あははは。レンタルビデオ、俺が奢るから……そのぉ……げ、元気出そうぜっ」
「うん……ありがとっ……」
○●○●
そんな感じで、高校入学初期の頃に、淡く辛い思い出を残した俺。
そしてこのプロローグが終わった事により、発生するイベントと言えば……。
「『塩原 詩』! ずっと待ってたぞ! アタシの前に姿を現すのを!!」
めーーーーちゃくちゃ垢抜けてヤンキーになった、『ソフィア・ドルチェ』に再会するという、楽しそうかっこ笑いというイベント。
「アタシの通り名、あんたは知ってるか?」
頑張って黒髪にしてたじゃん……めっっちゃプラチナブロンド色なんですけど……。
えっっなんでっっ??☆
「んん? お〜い、詩〜?」
前髪重かったじゃん……めっっちゃ前髪かきあげて、片耳のピアス見せてるんですけど……。
しかも、髪めっちゃ長かったのに、ショートカットになってるんですけど……。
えっっなんでなんでっっ??☆
「詩ぁぁ〜、聞いてんのか〜?」
そんでもってめっっちゃ校則守って、指定制服だったじゃん……なのにめっっちゃ改造してるんですけど。
なんか凄い地雷系の制服になってない?
えっっなんでなんでなんでっっ??☆
「シカトすんなよ〜」
困惑しすぎて語尾に☆マーク付けた言い方してもうた。完全にめっちゃウザい奴になってもうてる、ホンマすんません。誰に謝ってるんか知らんが。
ロングスカートだったのに、真逆のミニスカになっとるやん……。靴下もくるぶしら辺までしか履いとらんやん……色は白だけど。
「アタシの通り名! 知ってるのかって聞いてんだけど! 無視しないでくれます!? 全く……頼みたい事もあるってのに……」
「あぁっ! いやっ、あの……分かりません……」
謎に圧倒されて敬語になってもうた。そしてなんやこのエセ関西弁。怒られるでほんま。
「じゃあ教えてやるよ!」
それにしても、何度見ても垢抜け過ぎてて驚くのじゃ。
キレイにまとまったその髪は、風になびいた時にサラサラ〜という音も出してしまうんじゃないかと、そう思わせられる程の潤沢に満ちた艶を見せている、凄いのぉ。
首元にも届かない、顎のライン辺りまでの髪の長さ。
昔に比べたら、相当にバッサリ切ってしまっておるの。
――おっ、この黒の靴、よく見るとリボンある。
ヤンキーとギャルと地雷とかいう、謎ファッション生み出してるけど、本人メチャクチャ可愛くなってるから何も言えないのじゃ。
……って、待って? 通り名を教えるって何?
「アタシの通り名はな……」
「えっ、あっ、はい」
その日……音山田高校に、新しい音楽が、かき鳴らされる事になる……。
「〈騒音のソプラノモンスター〉だ――」