低い月
掲載日:2021/06/10
『低い月』
やっぱり
いつだって
ずっと
ここにいたのだった
赤茶けた泥にまみれて眠り
纏わりつく腐臭のうちに目覚め
立ちあがれば一面の葦原
黒々と枯れ折れて
どこにも湖はないのだった
音符のように煌めく波も
滑らかに吹き渡る風も
ここには届かないのだった
鮮やかな白樺の林は
くすぐったい葉擦れの音は
止まった夢の中にだけ
在るのだった
気づけば
いつだって
ここにいる
「そうだった そうだったな」
つぶやきながら
私は
灰色の空を見る
ぼんやりと滲んだ月が
低くかかっている




