最近の大人ってやつは……
スマホのロックを指を滑らせて外した。お気に入りの壁紙が貼られたホーム画面には、流行りのゲームに少しだけ触った創作ツール、めったに通知の来ない連絡アプリが並ぶ。
自己紹介するなら名刺なんかよりこの画面を見せれば早いじゃないかと常々考えていた。ホーム画面に、僕の世界のすべてが圧縮されている。つまり僕はその程度の小さな人間なんだ。
大人たちは「最近の若者は達観してる」なんて言うけれど、
手のひらに収まる科学が僕の行く末を見せつけてくるんだよ。
見たくなくても、人の呻きが、叫びが、悲しみが、小さな箱から溢れてくる。
「努力は裏切らない」これが絵空事だって知ってるんだ。
だって、今、流れてきた誰かの涙声は、昨日、確かに努力していた声だったから。
なんでも教えてくれる手のひらの魔法。
今、僕の道にはたくさんの標識があって。
その下にはズラリと何キロも先の風景まで書かれている。
僕が立ち止まると大人は「今の子は贅沢だ、悩めるほど選択肢があるんだから」と言うけれど。
足りない、見えないからこそ存在できたものって、きっと、絶対にあったと思う。
だけど僕は、知らない時代に産まれ直すわけにいかなくて。
望む以上の情報に翻弄されながら生きていく。
゛僕゛が゛俺゛になって゛私゛になって゛ワシ゛になってもきっとこの気持ちは忘れないでいようと思う。
僕が「最近の若いものは……」と言い出す頃に、産まれるであろう幼い友人へ、片目を瞑る裏技を教えるために。