何故犯行に及んだのか
「近代スマホの普及により、人々は考えることを止めたとは思わないかね?」
齢8歳の少女が生えてもいない口ひげを整えるような動作をする。
「考えることを止めたとまでは思わないけど、知識を覚えなくても、すぐに聞ける環境になったとは思うわ」
一理あると女性が首肯し、少女の言葉を待った。
「そこなのである。私が憂いているのは‼」
ズビシッ‼ と効果音の入りそうな勢いで少女が女性を指差す。
「我々はただ、与えられる情報に満足しそれを組み合わせて考えることを放棄した。
日常に潜む数々の”なんで?”は子供の言うことだから……で見過ごされる。あろうことか、最近では、”スマホで調べなさい”等と言い出す始末‼」
「うっ……」
心当たりがあるのであろう、女性は気まずそうな顔をして目をそらした。
「嘆かわしい‼ 実に嘆かわしい‼」
女性の前を少女が腕を組んでウロウロと歩く。
「……だからといって‼」
女性の反論しようとする動きを少女が人差し指をたてて制した。
「君はこの事件で胸の高鳴りを感じたはずだ。スマホに載っていない謎の気配を、それを紐解く高揚感を‼
それを得るための代償だったのだよ……アイスクリームは」
少女はアイスクリームの残骸を指差した。
「誰がやったのかはわからない。だがその謎を解くという経験をもたらした犯人は称賛されるべきだとは思わないか?」
少女は心酔しきった顔でそういった。
「……ほっぺにアイスクリームついてるよ」
女性もとい、母親の呆れた声が部屋に響いた。