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基本的構成とその例

 小説に望ましい四つの要素は具体的に且つ言語的に理解可能なように提示されねばならない。よってこれらの要素はそれぞれ出来事として、出来事において描写され、且つ論理的に理解可能な、因果関係で接続されている必要がある。然るに、前提としての性質故に真っ先に描写されねばならないのは「状況」であり、しかも当の小説の「価値観」が前提されていなければならない。尚、「状況」の描写には、「外圧」の始動因が含まれることも有り得る。この後には「意志」の描写が続き、後には「行為」か「外圧」が続き、「外圧」の後には「行為」が、そして「行為」の後にその「結果」が繋がることとなる。


ここで、例として、「リンゴを食べるのが良い」という「価値観」を想定してみる。

(以下、主人公とは、意志の主体を指す)


題名:「リンゴ食すべし」

状況:リンゴの果樹園がある。

(外圧の始動因:その果樹園を遠くから眺める怪しい集団)

意志:主人公はこの果樹園を所有しており、リンゴの収穫と味わいを待ち望んでいる。

外圧:(行為は阻害される)山賊が果樹園を襲撃し、収穫を奪う。

行為: 主人公は収穫を取り戻すため、山賊と戦う。

結果: 主人公は山賊を倒し、収穫を取り戻す。そしてリンゴを味わう。


このような構成が実際に描写され読まれた時、読者に「リンゴを食べる事ができてよかった」という感想を与えられれば、その小説は上出来である。

 しかしながら、前掲の例においては、価値観の具体性が強いあまりに、より本質的な事柄が、提示した価値観とは無関係に抽象される可能性が高い。よって、小説として不備らしいものがなくとも、その本意を果たし得ないことも考えられる。また、「よい小説」は、「当の価値観を抽象的に表すのと同時に、具体的な形で過不足なく示」さなければならないから、いまひとつ抽象度を上げるに如くはない。


そこで、例として、「愛は強し」という「価値観」を想定してみる。

(ここでは、愛とは何者かを保護し育もうとする意志および意志による行為とする)


題名:「必ず最後に愛は勝つ」

状況:京東という街には商社が乱立しており、商業的な群雄割拠、弱肉強食の世界が出来上がっている。それがために、弱者から搾取する、或いは弱者を切り捨てるといった、無慈悲な風潮が瀰漫している。

意志:主人公は京東で悲惨な弱者たちの姿を目の当たりにし、彼らを守ろうと決意する。

行為:主人公は搾取構造を破壊しようとする。

外圧:京東の強者に当たる人物たちが、主人公を排除しようと動く。

行為:主人公が助けようとした、乃至は助けた弱者に当たる人物たちが、強者たちの動きに対抗し、主人公を救う。

結果:搾取構造が破壊される。


こちらの構成の方が、前に例示した構成よりも、提示した価値観かそれに近いものが抽象される可能性は高い。何故なら、前者の例ではその具体性ゆえ物語も即物的であり、価値観という抽象的なものを思考せずにも了得可能だが、後者では抽象概念が物語の中心に位置するため、即物的な了解では動機(意志)などの面で明らかに理解が不足することによって、抽象的な理解を読者に要求するからである。

 「よい小説」の条件としては、後者の、抽象的観念を「価値観」に据える構成の方が、よりよく当て嵌まる。但し、抽象能力の乏しい人物にとっては恐らく、前者のように即物的な構成の方が好まれるので、どちらを選択するかは、著者の状況と判断に委ねられる。


 ところで、例のように、価値観の抽象度を上げることによって、より多様な「状況」や構成を想定できる。


 補遺。上記の例では構成要素を大まかに示した事で判然としないが、実際に描写すれば、おそらく、小説の大部分を形成するのは、状況と意志を前提とした行為と外圧の反復である。この要素だけが反復可能だからであり、反復する事に意味があるから。この過程において為されるのは、意志の強さを示す事、或いは、意志を強くしていく事、価値観の強度を高めていく事である。外圧によって意志が測られ、時に意志は挫け、その度に改善する事で、価値観の強度を上げていく、などの表現が可能である。


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