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基本的要素


「著者」にとって「小説」とは「価値観の提示」であり、

「著者」にとって「よい小説」とは「効果的に価値観を提示できた小説」である。


よって、よい小説を書くには、価値観とそれを効果的に提示する手法が要求される。ここで価値観とは「よし悪しを決定する目的」であり、それを効果的に提示するというのは、当の価値観を抽象的に、即ち本質的に表すのと同時に、具体的な形で過不足なく示すことである。これを効果的とする理由は、第一に、価値観とはそれ自体では抽象的な事柄であるから、それを抽象的に示すことはそれをそのまま示すということで簡潔であり、価値観を提示するという目的に適当である。第二に、一方で抽象的観念の理解には高度の思考能力や想像力といったものを必要とし、それらは万人に等しいものではない。そこで、価値観が具体的に適用される事柄を描くことによって、抽象能力によってではなく、経験的な事柄として当の価値観を理解する余地を生む。これによって、抽象能力の低い人物も、目的の射程に収めることができ、いっそう目的を達し得ることになる。以上が、効果的な価値観の提示という目的において、当の価値観を抽象的に表すのと同時に、具体的な形で過不足なく示すことを、その手段とする理由である。


 価値観は、具体的、実際的には、絶対的に事柄に係るものである。よって、価値観を具体的に示すには、提示しようとする価値観に基き、相応しい事柄を想定する必要が有る。例えば、「リンゴを食べるのはよい」という価値観を提示しようというとき、この価値観に相応しい事柄というのは、「リンゴを食べる」という行為や、「リンゴを食べられない」という状況である。前者のような行為を祝福したり、つまりこの場合「リンゴを食べる」という行為をよいこととして扱ったり、「リンゴを食べられない」という状況を努力によって、即ち意志的に克服することで、「リンゴを食べるのはよい」という価値観を表示できる。或いは、「よい」ことは一般的に「悪い」こととの二項対立として受容されるので、当の価値観に悖る行為や状況を悪いこととして扱うことによって、価値観を表示することもできる。

 ところで、よし悪しを客観的に提示することはできないので、そこには必ず意志が介在することになる。何者かが「それはよい」「あれは悪い」という意志表示をしない限り、価値観を示すことはできない。これは、生理的な現象や感覚も当て嵌まる。例えば空腹の如きは、生理的な感覚としては避けたいものだが、断食を尊ぶ文化は古今東西に有る。性欲や苦痛の類も同様である。

 また、価値観の強さ、強度のようなものは、自然、その価値観に基いた意志の強さによって測られる。生理的欲求や感覚、社会的な評価等、外圧にも挫けない意志は、その意志を生む価値観の表現たり得る。つまり、その価値観が、言い換えれば目的が、他のなによりも優先される、即ちよいものであるという表現が可能である。


以上のことから、小説には、以下の要素の有ることが望ましい。


・或る価値観を表し得る状況

・或る価値観に基いた行為

・行為の根拠となる意志

・意志を挫こうとする外圧


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