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悲劇で喜劇な物語  作者: Jessica
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プロローグ

どうも。

"なろう"初投稿です。

よろしくお願いします。



"たとえ幾千幾万の兄があり、その愛情すべてを寄せ集めたとしても、おれ一人のこの愛には、到底、およぶまい"


出典はシェイクスピア作『ハムレット』第5幕第1場。

狂死したオフィーリアに対する遅過ぎた熱烈な愛の告白。ハムレットを責める彼女の兄への反駁でもあり。


『ハムレット』とはシェイクスピア作の悲劇の物語。


僕には主人公"ハムレット"の気持ちが分からなかった。

なぜ恋人"オフィーリア"が死んだだけでそんなに悲しむのか。


昔から悲しいという気持ちがよく分からなかった。

飼い犬が死んでも、友達が死んでも、両親が死んだとしても


両親の葬式。

たくさんの人が泣いていた。

でも僕は涙一つ出てこなかった。

それどころか悲しいという感情すら湧いてこなかったのだ。


両親が嫌いだったわけではない

むしろ大好きだった。


大好きだった人との別れの時、"悲しい"という感情を持てないことがどれだけ苦しかった事か。


"すべてのことには(わけ)がある。

日々起こる悲劇も不幸も、いつか起こる最良の結末のための価値ある出来事。"


いつか出会ったあの子が口癖のように言っていた。


訳がある...か


本当にこんな事に意味はあるのか。


両親が死んだこと、その両親の遺影を見て涙を流せないことも。


「お兄ちゃん....」


妹が涙を堪えながら言う


「立派な大人になろう。そしたら、お父さんもお母さんも天国で幸せに暮らせるはずだよ」


「うん...」


そうだ。

僕達は生きなければならない。

この不合理で、不平等な世界で。





葬式も終わり、時刻は午前一時。

今は親戚同士で話し合っているみたいだ。

内容は、遺産の配分。

そして、僕達を誰が引き取るのか。


先程から、後者の方でかなり揉めているらしい。


親戚A「ウチは無理よ!上の子は春から高校生よ!?もう1人住まわせろなんて。そんな余裕あるわけないじゃない!」


親戚B「お、俺だって!金もねぇし、なによりあんなガキ養って俺になんの得があるってんだよ!」


親戚C「たく、なんであんなガキ共生まれてきちまったんだ。アイツらの両親と一緒に死ねばよかったのに。」



.....ここに居てもハッピーエンドは訪れない。

逃げないと。


「お、お兄ちゃん...怖いよぅ」


「....逃げよう。2人で。大丈夫、天国でお父さんとお母さんが見守っていてくれるはずだ。そんな僕達に怖いものなんてないだろ?」


「う、うん!みんなで頑張れば無敵だね!」


親が死んでからずっと暗かった妹の表情。

久しぶりに笑顔を見たかもしれない。


「あぁ、家族みんなで頑張ろう。」


そうして僕たち兄妹は親戚の家を飛び出した。


親戚の家を飛び出して一時間近くがたった。

僕達は今、高台にある公園のベンチに座っていた。

かなり遠くまできたな...

一時間近く歩きっぱなしだったから、足が棒のようだ。


親戚の家がある所は結構な田舎で、僕たちが住んでいた東京ではなかなか見れない美しい星空を見ることができた。


それは僕達が今居るところも同じ。

頭上には満天の星空。


「...綺麗だな。」


「うん。本当に綺麗...」


「この星に誓って、ずっと仲良しでいよう。たった二人だけの家族なんだから。」


「うん!ずっと仲良しだよ!お兄ちゃん!」


妹は満面の笑みでそう言った。


僕達は手をつなぎながら生涯忘れないであろう約束をした。






グゥー


誰かの腹の虫が鳴った。


「お腹、空いたのか?」


「うん...」


今の時刻は二時半。

夜中ってお腹空くよね。


「うーん。でも、食べ物なんて持ってきてないしなぁ」


食べ物どころか何も持ってきていない。


「えぇ...お腹すいたよぉ、お兄ちゃん...」


「んー、困ったなぁ。」


どうしよう。


水は公園で飲めるけど、食べ物となると買うか貰うしか...

お金持ってないから買えないし、貰うにしても時間が時間だし。


??「あなた達、こんな時間にどうしたの?」


思考の海に浸かっていると誰から声が掛かった。


「....お構いなく。」


??「そんな事言わないで、お姉さんに事情話してくれない?」


事情を話してどうなるんだ?

大人なんて信用できない。

僕達は二人で生きていくって決めたんだ。


グゥー


「お兄ちゃーん、お腹空いたぁ」


??「あらあら、それは大変。これ、どうぞ。」スッ


「わーい!メロンパンだぁ!お姉ちゃん、ありがとー!」


メ、メロンパン....


??「あなたもどうぞ?」


グッ...


「....いただきます。」






食べてしまった....


「お姉ちゃん!ごちそうさまでした!」


「ご、ごちそうさまでした...」


??「はい。お粗末さまでした。」


??「それで?お話、聞かせてくれるわよね?」


食べ物をもらった手前断れない。


「は、はい。」


それから僕は両親が死んだ事、親戚の人達が話していた内容、そしてここまで二人で逃げてきた事を話した。



??「そう。もうひとつ聞かせてちょうだい。あなた達はこれからどうするつもりなのかしら?見たところ何も持っていないようだし、頼れる大人もいない、かなり厳しいんじゃないかな?」


「そ、それは....」


情けない。

何も言い返せない。

やはり無謀なのだろうか

僕は妹一人幸せにすることもできないのか。


??「そんな哀れな子羊ちゃん達に提案!私と一緒に暮らさない?」


「...え?」


まさかの提案。

さすがに驚きを隠せない。


たしかにこの人について行けば...


い、いや!ダメだ。

信用できない。

どこか遠くへ売り飛ばされるかもしれない。


「え!?お姉ちゃん、いいの?」


??「えぇ、イイわよ。でもあなたのお兄さんは反対みたいねぇ」


「お兄ちゃん、お願い!」


「んー、でもなぁ...」


「メロンパン。食べさせてもらえるかもよ?」


グッ...メロンパン....


「お兄ちゃん...」ウルウル


「わ、わかったよ!あの、お姉さん。よろしくお願いします。」


月奈「はい、よろしくね。あと、私はお姉さんじゃなくて"月城月奈"(つきしろつきな)よ。」


夏羽「わ、わかりました。僕の名前は"日向夏羽"(ひなたなつは)です。」


冬歌「妹の"日向冬歌"(ふゆか)です!」


月奈「ふふふっ、よろしくね夏羽くん、冬歌ちゃん。私のことはお母さんって呼んでね!」


夏羽「は、はい。お母さん。」


冬歌「うん!お母さん!」



次回は本編突入かな?

ありがとうございました。

Jessica

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