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第拾壱話【最終話】《生》

 紆余曲折あって現世に戻ってきた少年──名は「シン」という──はふと、ここの景色に見覚えを感じていた。



 ──そうか、ここはあの「柏木信治」君だった僕が学校へ通う道の途中なのかもしれないな。しかし、とてつもない違和感が。


「ここは……ほんとに彼処なんだよな!?」


 来るまで普通にあったもの──見慣れていた店や住居の数々が消滅していて、新たなものに置き換わっている。


 きっとこれには三つの可能性がある。シンはそう考えた。

 まず一つは、ここがたまたまあの通学路に似ているだけの説。

 二つ、ここが現世と似通った別世界であるという説。

 そして三つ、冥界に行く直前よりも大幅に時間が進んでいるという説。


 二つ目の可能性はあの神に至ってしないだろう、と思うのでまず一つ目か三つめかを探ればいい。

 一つ目の攻略はいたって簡単。

 建物の隅にある青や緑の住所プレートさえ見てしまえば。


 《恵和五丁目 32-8》

 変わらない……とすると後者――時のずれの可能性、か。

 どうするか? 掲示板のチラシとかで今日がいつかぐらいは知れる。

 来たときは20X1年9月14日だったと覚えているから、本当ならば今日はそれより一週間後の「9月21日」であるはずだ。無論、瞬間から時間が止まってたらそこからスタートも有り得る。が、移動した場所も時間的にもそれは違うし……。


 掲示板は変わらずそこにあった。

 チラシには地区祭りの開催日だったりが……あった。


 《恵和稲荷神社御祭礼》


 問題の開催日はというと……!


 《20X8年9月20日》


 なんと衝撃の事実が判明してしまった。

 ここは、なんと何年後……うん、七年後の未来だ。いやこれは手違いじゃないか? それとも……

「ん?」


 と目の前にひらひらと紙が漂い、何か書いてある面を伏せて落ちた。

 拾い上げて書かれた文字を見ると、

『すまんの、ひとつ言い忘れていたことがあっての』

 とはじまっている。


 ああ、やっぱり何かあるんだな……どこから出てきたんだこの紙は?


 ──時間の流れについてはそちが察した通り、冥界と現世の時の流れ方は違うのじゃ。

 まず、冥界で過ごす一日は、現世では一年過ごすことと同じになるのじゃ……つまりそちは今、その街の七年後に来ている。


 こちらのことが分かっている!? ああ、ムクゲの千里眼で……否、これは文香ちゃんの言っていた、例の現世に送れるという手紙の一種かも知れない。こういう風に送られてくるとは。


 すると驚くことに、紙のまっさらだった部分に新たな文字が現れた。


 ──ああ、其方のことが心配であったからこの紙も持たせよう思ってな。そこにわからないことを話しかけるなりすれば儂が応じる。

 忙しくて反応ができない場合はあるのでの、すぐ応じぬようであれば後で掛け直してたも。


 なんだか古風な時代にあったかもしれない留守電メッセージみたいだ。……それはさておき、ムクゲはなんだかんだお節介焼きな神様だな。


 そしてこの紙はとても役に立ってくれそうだ、いろいろと。


 まずは霊を探さなくちゃならなくて、そしてこのムクゲのくれたお祓いグッズを使って無事に冥界へ送り届ける。

 ──それが僕に託された任務。


 とりあえずここから僕は頑張らなきゃ。

 そう、僕にこんなまで親切にしてくれるムクゲにも……それに僕が憑依してしまったあの少年、柏木信治君に対しても。

 生前や憑依中に関わった人たちにも、僕のように死にたいと渇望した結果命を落とした、なんていう悲劇の顛末を繰り返さないことを願うばかりだがそう綺麗事のようにはいかないだろう。

 しかし、だれもが生ある限りチャンスと平等な愛が与えられて、生きる活力は無限に沸き立っている。



 △▼△



 過去の僕に問い直してみたい。

 なあ、過去の僕──君はどうして死んだんだい。

 近所の人、両親や祖父母、今の友達、いつの日か顔を合わせたい昔の友達……たとえ友達や親がいなくたって君自身が君を愛せばいい。

 それでも君には愛が足りないか? それなら愛を与えてみよう。まずは家族に。そして、近しい誰かに。または他人にその愛を、差し伸べてみたらいいんだ。

 ──そのあとで、愛は巡り巡って自分に戻ってくるんだ。


 見渡すばかりに息づく生命がある。こんな素晴らしい世界で、その生命たちに思う存分、生きている証を見せつける──たったそれだけで良かったのさ。

 死んだ今じゃ、何を言っても響かないだろう。こんな、こんな簡単なことに気づくのが遅かったんだ、間に合わなかったんだ……僕は。



 △▼△



 少年が欲した未来に、もう彼の手は届かない。

 何故なら彼は生きる者の宿命を全うしてしまったから。


 生きる者にあてがわれた宿命、それは「死ぬこと」。

 同時に死んだ者に与えられた宿命は「同じ生命体として生きるチャンスはもう与えられることはない」のだ。


 死ぬことが確定要素だとして、そこまでに何をするか。

 もし死んだら、なんて考える前に生きられたら、と考えなけばならない。

 生きることは死ぬこと。

 当たり前だが死ぬまで生きねばならない。

 その生きる時間を、限られた時間をどう過ごすか。

 宿命に囚われてなお、その囚われの身の状況でも、その瞬間すら儚いものだ。

 もしゼロからやり直せるとしても、その生きた時間そのものを取り戻すことはできない。


 今という時間を過ごすことに快楽と苦痛を見て、過ぎていく時間すら惜しくて退屈なこの今を、美しいと思えるだろうか。


 ──美しいと思えたならば、この人生の限りを、命の鼓動を……己のままに貪り、喰らい尽くして果てようか。【完】




あとがきです。


この度は「単純メイカイ・フクザツ回忌!〜狐神様の棲む郷で〜」をお読みいただきありがとうございました。

この作品は昨年九月一日にカクヨムに掲載した「妖狐冥界譚」をなろう版にリメイクしたものです。


以下私事なので聞きたくない人はスルーして構いません。本の最後のどうでもいい(よくない)作者の独り言コーナーだと思ってください。


この時期(最終話投稿日・五月十三日)……そうです。


私は十七歳。高校三年生。


ええ……周りはもう、気づくと受験生。


スイッチ入れなきゃ……人生終わる(社会的に)……!!


実のところ勉強にも小説投稿にも集中出来ずにいてどっちつかず手付かず。最悪ですね。

もはや内容を付け加えたり削ったりしていく作業しか出来ないと思っていたので、このようにしてみた次第です。


もう一つ並行していた(というよりこちらの作品が突発的に始まったわけではあったのですが)「フウン!?なんなく鑑定団」は書けるところまで書いて一度切ることになりました。

ということではい……もう受験勉強に専念します。気持ち切り替えて。

ではまたいつか。


足羽くるる



~ネタばらしコーナー~

ネタなのかどうでもいいものかヤバいのかわからないものも含んでます。

①ムクゲの語りから入る第零話……本当は第拾弐話である。というかそうする予定だった。(結果印象は良かったみたい)

アナログ時計の要領で0=12の針。


②柏木信治(シン分離後)は腹痛に悩まされていたのが治り、今はストッパ要らずで暮らしている。つまりは憑依したシンの方が腹痛持ちだった……てなわけ。また、3番トイレへの執着は何故か残り中で、回数は減ったものの利用する際は毎度ルーティン化。


③他にも色々あるので各自考察してみてはどうでしょうか。こっそりTwitterにDMを送って頂いたらもしかするとある程度の範囲ではお答えできるかもしれません。あくまで前述の理由により忙しい、を装ってはいるもののほんとうに忙しくなったら(たぶんなる)見れないかも。ごめんなさい。[Twitter] @kurupon_9

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