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バレて…… 5

 その音に反応し、僕と明日美はほぼ同時に僕のスマホを見つめる。

 僕もだが、明日美もこの通知音の主が誰なのかを察したらしい。

 それは言わずもがななちゅさんだ。

 見てない以上、他の人物かもしれないが、それでも頭に即座に浮かび上がるのは彼女であることは間違いないだろう。


「見ないの?」


 そんな僕の想像を分かって、明日美は挑発するかのように言ってくる。


「見たほうがいいの?」


 そんな明日美の挑発に対し、あえてそう聞き返してみる。

 正直、今の僕にとってなちゅさんからのDMだろうがどうでもよくなっている。

 ただ、明日美の機嫌が少しよくなったのに、この通知のせいで機嫌が再び悪くなる方が問題と思うからだ。

 僕にそんな風に聞き返されると思っていなかったのか、明日美はちょっとむくれ気味だったが突如として驚いた反応をし、困った様子を浮かべている。


 本当はあまり見ないでほしい。

 そう心が言ってるのは明白な反応。

 きっと僕が「見ないよ」という言葉を待っていたのだろう。

 でも、予想外の反応をしてしまった以上、もう戻ることは出来ない。だから、


「うん、いいよ。見ても」


 明日美はこう答えることしか出来なかった。

 その言葉通り、僕は勉強机の上に置いていたスマホを手に取ると、ロックボタンを押して、ロック画面を解除。そして、通知内容を確認する。

 予想通りの展開と言うべきなのか、相手はなちゅさんだった。

 ここで明日美にこの相手を見させるべきか、悩ましいところだったが、明日美自身も相手が誰だったのか気になってることは分かっているので、


「相手はなちゅさんだったよ」


 素直に名前を言って、スマホを差し出す。

 明日美はそれをおそるおそるといった様子で受け取ると、その通知内容を確認して、画面越しに相手がいるかのように睨みつけていた。


「どうするの?」


 そして敵でも見ているかのような今まで聞いたことがない低い声でそう聞いてきた。


「返事するよ」

「なんで? しなくてもいいんじゃない?」

「無視は面倒だし、何よりもう送る内容決まってるからさ。だから、それでいいかなって結論」

「ふ〜ん、なんて送るつもりなの?」

「もちろん見せるよ。でも、それは送った後でもいいよね? ……あ、そうだ。一応、今までの会話内容見とく?」


 そんな僕の提案に明日美はちょっとだけきょとんとした反応で、今まで重苦しくなっていた空気が少しだけ軽くになる。

 ちょっとだけ困ったような反応とともに、


「見てもいいの?」


 遠慮がちにそう言ってくる。

 しかし、目は敵意に満ちうつつも興味には勝てないようで輝かせているという不思議な状態になっていた。


「見たいなら……だけど。少なくとも、そのことでもう怒らないならいいよ。反省してるから」

「内容による」

「そこをなんとか……」

「……努力する」

「それならいいよ。……って、僕はそれを言う権利なんてないけど。ともかくちょっと貸して」


 僕は明日美が持っている僕のスマホを返してもらうとロック画面は解除し、Twitterの画面を開き、なちゅさんとのDMの画面を開く。

 そこまでした後、僕は明日美に再びスマホを渡す。


「いいよ、見ても」

「あ、うん。ありがとう。じゃあ、見せてもらうよ?」


 おそるおそる受け取った僕のスマホを手に取りながら、明日美はそう言って、右手の人差し指でスクロールさせていく。

 どうやら本当に最初から見るつもりらしい。

 その間、僕は再び勉強用の椅子に座り、明日美からスマホを返してもらうまで静かに待っておくことにした。


 僕となちゅさんの会話内容を見ている明日美の表情は真剣そのものだった。

 下手したら勉強をしている時以上の真剣さを見ているような、そんな雰囲気さえあった。同時に何か気に入らないところもあるのか、たまにムッとした表情になったかと思えば、「ふふん」となぜか勝ち誇ったような反応を取ったりと色々変わったりしている。

 そんな反応をする内容を書いた部分などまるで思いつかないのだが、いろいろと反応が変わる明日美を見ているのは少しだけ面白かった。もちろん、そんなことは顔にも言葉にも雰囲気ですら出すことは許されないため、僕は澄まし顔でいることしか出来なかった。


 しばらくして、明日美にスマホを無言で差し出される。

 どうやら、最後まで読み終えたらしい。

 最後の反応はあまりいいものではなく、どうやらこれからの僕の行動次第で決まってくるところがありそうだった。


「判決は?」

「アウト寄りのセーフ」

「アウト寄りなんだ」

「うん。女の勘で、なちゅさんも透のこと好きだって伝わってきたから」

「……寝言は寝て言え」


 あっさりと僕はその言葉が出てきた。

 あの件のせいで僕は傷付いたというのに、明日美がそう言ってきた意味が全く分からないからだ。

 その言い方に明日美もさすがにムッときたらしく、


「本当だよ! じゃなかったら、『また枠来て』とかこうやってDMしてくるわけないでしょ⁉︎」


 その根拠となるものを大声で伝えてくる。


「そっか。そうなんだ。でもさ、それで僕がその言葉にドキッとしたらどうなの?」

「……いや」

「でしょ? だから、これ以上変なこと言わないでよ。揺らぐことはないけど、今この場でそんなこと言われても、もう遅いんだよ」

「そうだけど……」

「じゃあ、もうこれで終わりにしよう。僕も明日美だけを見てたいし」


 僕はそう言って、なちゅさんが送ってきてくれた内容の返事を書き始める。

 ちなみになちゅさんが送ってきた内容とは『今日も配信するから見に来てくれると嬉しいな』という親しげがあるものだ。

 ここ一週間のDMでここまで打ち解けられるぐらい仲良くなってしまったのだろう。

 心に余裕があるせいか、僕はそんな風に受け止めることができた。


 しかし、昔の僕ならまだしも現在(いま)の僕にとって、何の意味も持たない。

 淡々と内容を書き、僕はそれを明日美に見せることなく送信。

 そう、これでなちゅさんとのDMは終わった。

 あとは最後の仕事をして全てを終わらせるのみとなった。


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