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バレて…… 4

「ちなみにその思いついたことは教えてくれるの?」


 教えてもらう気はしないけれど、あえてそう尋ねてみる。

 何事も心構えというものは大事だと思うからだ。


「んー……教えない!」


 意地悪そうな言い方で明日美ははっきりとそう言った。

 そこで何を思ったのか、僕から離れるとパソコンの近くにおいてある自分のスマホを手に取り、操作し始める。そして、一人で「ふむふむ……」と頷いていた。


「何してるの?」


 きっとその思いついたことについての日程みたいなものを組んでいるのは、なんとなくだが察することが出来た。しかし、それを認めたくなかった僕は、あえて違うことをしていると思い、そう聞いたのだ。


「秘密。まぁ、でも……近いうち思いついたことは実行する羽目になるかもね。期末テストのご褒美の件もあるし」

「あぁ……そんなこともあったなぁ……」


 すっかり忘れていたこと。

 僕は最後の最後でダメだっため、ご褒美を貰える立場ではない。それはテストの結果を聞かれた時に、明日美にはっきりとそう言われた。

 しかし、明日美は僕とは逆でしっかりとご褒美を貰える立場になっている。というより、まず明日美自身がその結果に驚くほどの有終の美を飾れていたのだ。


「忘れてたの?」

「忘れてはないけどさ。結局、僕はそれを貰える立場じゃなかったから、残念感しかないよね」

「他の女にうつつを抜かしてたからだよ」

「その通り過ぎて返す言葉もない」

「そういうわけで、そっちのご褒美もよろしくね?」

「……やっぱり、それは別物だよねぇ」

「もちろん。これはこれ、それはそれだし」

「いったい、何をねだられるんだろ……」


 ちょっとだけ僕の中で怖くなっていた。

 今のところ金銭的にも心許ない。何か高額のものをねだられたとしても、簡単には買えない。だからと言って、今回の件もあるのでそのことで僕は罪滅ぼしをしないといけない以上、断る権利もない。つまり、精神的にやられかねない状態だった。

 明日美のことなので無茶なお願いはしてこないと思うが、それでもやっぱり今回の件に関しての罪滅ぼしを考えると、やっぱり断る権利はないのだろう。


 そこで僕は自然とため息を溢してしまう。

 けれど、今まで吐いていたため息とは違うことに気付く。

 今までのものは心の底から疲れていたりする時に出るものだったが、今出てしまったため息はまるで幸福感があるような「仕方ないか」のような軽いもの。ため息には違いないのだろうが、僕はそのため息の差から、心の軽さを伺えるような気がした。


 しかし、そんな僕の心境の違いを知らない明日美からすれば、ため息はため息で違いないらしく、ジト目で見られていた。

 文句あるの?

 言葉にはしてないけれど、そんな言葉が目から放たれているような気さえする。


「そんなに嫌なら、私のご褒美か罪滅ぼしのお願いの一つを『一週間連絡絶ち』にする?」

「それはマジ勘弁」

「じゃあ、ため息吐かないの」

「はい、すみませんでした」


 謝った瞬間、明日美はクスッと笑う。


「なんてね、そんなお願いはしないよ。だって、そんなお願いしたら透だけじゃなくて、私も辛いでしょ?」

「それはそうだけどさ……」

「だから安心して。本気で怒った時にしかしないから」

「あ……、やる時はやるんだ」

「もちろん。そうじゃないと反省しないでしょ?」

「それはそうだけどさ……」

「とりあえず、今回は違うお願いを二つ用意してるから安心して」

「あ、うん。はい」


 ホッとするようなホッとしないような物言いだったが、僕には頷くという選択肢しか残されていないため、こういうことしか出来なかった。

 けれど、明日美の機嫌は治ったらしく、楽しそうに笑っている。

 たったそれだけのことだったが、僕は心の底から安心することが出来た。


「あ、そうそう。聞きたいことがあるんだけどいい?」


 まるで何かを思い出すかのように明日美は僕にそう聞いてきた。

 顔は依然と何かを企んでいるような状態で。


「何?」

「透がもし期末テストで有終の美を飾れ立てた場合のご褒美ってなんだったの?」

「ご褒美? んー……正直、考えてない。というより、有終の美が飾れるかどうかも分からなかったし、最後は最後でドタバタしてたから……」

「ふーん、そうなんだ。てっきり考えたのかと思った」

「なんで?」

「根拠はないけど……ほら、思春期の男子が考えることは一つかなって思って」

「……いや、ちょっと待って? いきなり何を言い出してるの?」

「ん? もしかしたら『私とえっtーー』」

「わー! わー! ストップストップ!」


 僕はその言葉を言い終える前に必死でストップをかける。

 いきなり何を言い出してるのか、僕には全く理解出来なかった。

 なんでそうなってしまうのか、分からなかったから。

 言っていない僕の顔が真っ赤になってしまっていた。


「なんで?」


 明日美は意地悪く、顔を真っ赤にしながらそう尋ねてくる。

 きっと僕が途中で静止をかけることは分かっていたらしいが、羞恥心には勝てなかったらしい。


「なんでじゃないって! いきなり何を言い出してるのさ!」

「空気を変えようかなって思って」

「下手な空気の変え方はやめようね! お互いのためにならないから!」

「は〜い」

「分かったならいいけどさ」


 僕はもう遠慮せずに今回はため息を溢す。

 内容が内容だけに怒られることもないだろうと思って。

 案の定、明日美は怒ることはなかった。


「でも、別にそれでもよかったけどね……」


 その代わり、ボソッとそんな言葉が僕の耳に入ってきた。

 正直、反応に困ってしまう。

 明日美の言う通り、そんなことを考えてないわけではない。けれど、そんなことをご褒美にするのは何か違うような気がして、なるべくは考えないようにしていただけだ。

 こんな時にどうしたらいいんだろう。


 僕はその言葉の意味を必死に考える。

 据え膳食わぬは男の恥……。

 つまり、食べないといけないのだろうか?

 そんなことよく分からないことまで考えた始めた時、不意に僕のスマホから通知音が鳴り響き、現実に引き戻される。

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