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バレて…… 3

 明日美は床に転げ落ちた僕を見つめていた。

 肩で息をしながら。


「私を想ってくれたのは分かったけど、やっぱり頼ってくれなかったことの方が私にとっては一番辛いよ……」


 その言葉を聞いて、ようやく僕は違う意味でも明日美を傷付けてしまったことをに気付く。

 結局は独りよがりで解決しようとして、沼にハマってしまったことに。

 もし、明日美に相談していたら、きっと違う結果になっていたに違いない。

 よく分からないけれど、そんな確信が僕の中に生まれる。


 ゆっくりと立ち上がると、僕は明日美の前に立ってソッと抱き締める。拒絶されることも視野に入れつつ。

 しかし、明日美は拒否することはなく、僕の行為を受け入れてくれた。ただ、完全に受け入れるつもりはないらしく、明日美は棒立ちの状態のままだった。


「ごめん。もっと頼ればよかった。こんな風に傷付けてしまうなら……本当に僕はバカだったね……」

「バカなのは前から知ってたけどね」

「……そのバカとはまた違うと思うけど」

「対して変わらないよ」

「そっか。じゃあ、それでいいよ。今の明日美になら何言われても受け止めることしか出来ないから」

「バーカバーカ」


 まるで子供のような言い方をしてくる明日美。

 許してはいないけれど、僕の痛みも理解してくれてるらしく、そこまで追求することが出来ないような感じだった。

 だから、僕は何も言わずに黙って受け止める。

 しかし、急に黙ったかと思うと、顔を上げ、


「ごめんね。痛かったよね」


 僕の左頬にビンタした右手でソッと撫で始める。

 触れられた瞬間、まだ感覚が少し残っているのか、僕の体はピクッと反応してしまう。

 その反応に明日美も反応してしまい、撫でていた右手をすぐに離した。


「大丈夫だよ。僕がしたことに対して比べると、そんなことないから。どっちかっていうと明日美を傷付けてしまったことの方が、こんな痛みより痛いはずだしね」

「それはそうだけど……やっぱりカッとなるものじゃないね」

「それだけのことを僕がしたってことでしょ」

「元も子もないこと言わないでよ。間違ってはないけど……」


 明日美はここでようやく僕の背中に手を回してきた。

 少しだけ許された。

 そんな気がして、僕の心はほんの少しだけ軽くなったような気がした。


「ねぇ、もしさ……私が『もうなちゅさんの枠行かないでよ』って言ったらどうする?」

「行かない」


 間髪入れずに速攻で答える。

 迷うことなんてない。

 だってこれ以上、傷付けたくないし、何よりももっと明日美のことがどれだけ大切なのか再認識出来たから。

 さすがにほんの少しでも悩むと思っていたのか、明日美はちょっとだけびっくりした後、


「答えるの早すぎ。少しは悩んでもよかったのに。逆に信憑性がなくなるよ?」


 と冷静に僕の返答に対してツッコミを入れてきた。


「そうなの? 本当のことだから、すぐに答えられたんだけど」

「……本当はその場しのぎで言ってるんじゃないの?」

「その場しのぎに見える?」

「見えないけどね……もし、感情的のままの人ならそう言うんじゃない?」

「明日美は違うでしょ」

「違わないよ。必死に私は理性で感情を抑え込んでるだけだもん」

「なんで? 僕がしたことは許されないことだと思うから、もっと罵倒してもいいと思うけど」

「……罵倒されたいの?」

「そういうわけじゃないけど」

「じゃあ、いいでしょ?」

「そうだけどさ……」


 僕はあまり納得いかなかった。

 明日美の言う通り、他の女性なら感情的になっても仕方ないと思う。だから、明日美も理性で無理矢理抑え込む必要はないと思うから。もし、それですっきりするなら僕はそれを素直に受け止め、今後こういう過ちをなるべく少なくしたい。

 心の底からそう思ったからだ。

 そこで明日美は少しだけため息を吐いた。

 まるで僕の気持ちを察し、呆れたかのような反応で僕をジト目で見つめてくる。


「あのね、一応だけど許せるところがあるから理性で抑え込んでるんだよ? あくまで『私に迷惑をかけないように努めた』って部分だけで」

「そうなんだ。それは分かるけど、我慢する必要なんてやっぱりないと思うよ?」

「だからビンタしたんでしょ? その痛みは透の頰にも、私の右手にも残ってる。だから、もうこれでいいかなって……。本当はもっとボコボコにしたり、暴言吐いたり、もしくはこのまま家に帰って、連絡を一週間ぐらい絶ってもいいとは思うレベルだけど」

「……ッ!」


 さすがの連絡絶ちという言葉に僕は怯えた。

 けれど、それをされてもきっと何も言えない。

 受け入れることしか出来なかったとしても、それはそれで堪えるものがあり、そこでお互いのために『別れた方がいいのでは?』と考えるには十分にあり得た話だ。

 もしかして、そこまで考えた?

 言われてみて、僕が発した言葉の安易さに気付かされてしまった気分になってしまった。


「あ、やっぱり連絡を絶たれるのは嫌なんだ」

「あ……当たり前じゃんか」

「でも、この一週間、私はそんな気分だったんだよ? 泣きたくなるくらい悲しかった。今も思い出すだけで涙出そうになるくらい」

「あ……う……」

「だからと言って、私がしたらまたお互いに傷付けちゃうだけでしょ? だから我慢するの」

「ありがとう」

「ううん、いいんだよ。それよりも私にはこの罪滅ぼしとして、もっと別のことをしてほしいから」

「嫌な予感しかしない」

「それを思い付いたから我慢してるって忘れないようにね」


 少しだけ明日美の腹黒さが見えた気がした。

 利用出来る展開を利用してるだけなのだろうが……。


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