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バレて…… 2

 僕のそんな反応を見て、明日美はとうとう一粒の涙を溢す。

 それが最後、左右から止めどなく涙は溢れ続ける。


「『なんで知ってるの?』って顔してるね。なんでだと思う?」


 震えた声で、僕の聞きたかった質問を質問してきた。

 今の心境ではそんな推理さえする暇がない僕は、首を横に振り、分からないことを動作で伝える。


「だよね。うん、それはそうだよね。透はそのことを必死に隠そうとしてたもんね。じゃあ、教えるね。それを教えてくれたのは竜也くんだよ」


 予想すらしていなかった人物の名前が出され、僕は思わず空笑いをしてしまう。

 そうか、竜也か。

 名前を聞いて、僕は思わず納得してしまった。

 僕と明日美の影響でツイキャスを見始め、偶然にも明日美に辿り着いてしまう奴だからこそ、大いにあり得る展開。むしろ、明日美本人にバレないように必死だった僕が招いたミスだと言えるだろう。


 しかし、僕の中にフツフツとした怒りが湧き上がる。

 なぜなら、そのことを明日美に黙っていたら、きっとこんな風に明日美が泣かなかったと思うからだ。

 八つ当たりであることは十分に分かっているが、それでも傷付けないように努力していた僕の努力を水の泡にされてしまったという気持ちが強すぎて、そうでもしないと平静が保てなかった。


「そっか、竜也か」

「八つ当たりはしないでね。すごく怒ってるの分かるけど」

「顔に出てる?」

「うん、出てるよ。最低だね」

「……そうだね、僕は最低だよ。分かってる。分かってるけど、それでもさ……ッ!」


 明日美に言われた『最低』という言葉が突き刺さり、僕も涙が溢れた。

 自覚なんて言葉にしなくても、十分に分かっていたから。

 けれど言われたことにより、それは現実と化し、それを耐え切れることが出来なかった。


「でもね、そんな最低な透でもね、私は好きなんだよ? ううん、簡単に言っちゃダメなんだけど、愛してるんだよ」

「やめてよ。そんな言葉言うの。最低な僕にそんな優しい言葉使わないでよ……。そんなの……自分のことだけしか考えてなかった僕に使う言葉じゃないッ!」

「やだよ。言う。愛してるよ、透。だからさ、なんでこうなったのか教えてよ」

「……ッ!」

「透のことだから、それだけの理由があるんでしょ? 私に隠してまで、そのなちゅさんって人の配信に行き始めた理由を」

「それは……、でも……言ったら、もっと傷付くじゃんか……」

「うん、知ってる。でもね、聞かないと私は前に進めない……。このままいるなんて出来ない……。私の長年の想いがここで終わる形になったとしても……」


 別れる。

 その言葉を言わなくても、明日美がそこまで考えているのが十分に伝わってきた。

 きっと本気なんだろう。

 僕がなちゅさんのことを好きなのだ、と心のどこかで疑っている。だからこそ、先ほどの僕の本音である「好き」という言葉も伝わっていないのだろう。


 じゃあどうするのか?

 そう、素直に話すしかない。

 僕の心がいくら痛もうと、僕の想像が付かないほど痛ませてしませ、泣かせてしまったとしても。

 言い訳することなく、真実を……。


「分かったよ。全部話す。嘘なんて言わないから」


 それだけはっきりと宣言し、僕は震えながらも深呼吸をした。

 明日美もその言葉に頷き、同じように深呼吸をして、覚悟を決めていた。

 それからほんの少しだけ間を置き、僕はゆっくりとあの日以降のことを説明し始める。


 まずはなちゅさんのことについてから話した。

 なちゅさんについては竜也も知らないことのため、まずはそこから大事話さないといけない。そう全てはそこから始まり、そこから再び問題が起こったのだから。

 案の定、明日美も驚いた反応をしていた。

 そして、説明したあとに言われた言葉はーー。


「一回、傷つけられた人に再び戻るなんて馬鹿じゃないの? 最低」


 完全に愛想を尽きたかのような呆れた言い方で言われた。

 それに対し、僕は言い訳すら出来なかった。

 出来ないというより、明日美の言う通りだからだ。

 いくら蔑まされようとも、ここでボコボコに殴られようとも、明日美にはその権利が十分にあるから。


 しかし、明日美はその言葉だけで一応治ってくれた。そのかわり、今の現状になったこと続きを話すように言われる。

 だから、僕はいきなりDMが来たことを話す。もちろん、明日美に相談しようと思ったことも含めて。


「信じていいんだよね? 私のために遠慮したって。邪な気持ちじゃないって……」


 ここまで説明したところで尋ねられた言葉は、僕の想像した通りの言葉だった。

 きっと僕も、明日美と同じような立場なら尋ねかねないと思ったから。


「うん、これは本当だよ。迷惑かけたくなかったし、自分で解決するべき問題と思ったんだ。明日美のおかげで乗り越えられた。だから、同じ問題でまた迷惑かけたくなかった。余計な心配させると思ったから」

「……心配しちゃうどころか、もっと酷い展開になってるけどね」

「……うん、そうだね」


 ぐうの音も出ないほどの反論に頷くことしか出来ない。

 もうここで選択を間違っていることは自分自身分かっているから。


「じゃあ、その日以降のこと教えてよ」

「分かってる」


 そして、今まで一週間のことを話した。

 なちゅさんの配信に行きながらも、どうにかしないといけないと思っていたことを。しかし、いきなり姿を消すことは出来ず、徐々に姿を消す作戦で行こうと模索していたことを。


「そう……なんだ……。一応、去ることは考えてくれたんだね……。それが真実かどうかは別として。それを知る術が私にはないから」


 明日美の涙はもう止まっていた。

 止まっていたけれど、まるで何かを決意したかのような鋭い目になっており、その目で僕をジッと見てきていた。

 正直、怖かった。

 けれど、目を離すことは許されない。


 そんな気がして、明日美の次の発言や行動をおとなしく待つ。

 おもむろに明日美は椅子から立ち上がると、僕の目の前に立ちーー。


「透のバカ! 最低!」


 それだけ言った後、僕の頰を全力でビンタしてきた。

 パンッ!

 そんな軽快な音ともに僕は一瞬、何が起こったか分からないまま、椅子からバランスを崩す。同時にベッドの縁に肩を打ち、そのまま床に転げた。


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