過去の問題 1
テスト二日目の夜。
僕は自分の部屋でテスト勉強をしていた。
テストは明日で最後のため、今日さえ乗り切れば、あとは自由になれる。
たったそれだけのことを考えながら、僕はテスト勉強を進めていく。
しかし、言うほど真面目にはしていない。
なぜなら、明日美がテスト勉強を真剣にするのは、それまでの期間の間だけでよく前日などは見直す程度の方がちょうどいいと言っていたからだ。
前回のテストで、その言葉を聞いて半信半疑ではあったが実際やってみると本当だった。少なくとも一夜漬けしてないおかげか、目覚めはよくむしろ頭が冴えていたと言っても過言ではない。だからこそ、テストの良い成績が残せたと思う。
だからこそ、今回もそれを実践し、見直す程度に留めている。
そんな時だった。
僕のスマホの画面が光ったのは。
見直しとはいえ、テスト勉強をしているのだから通知音自体は切っているため、音が鳴るはずがない。そのためテスト勉強が終わるか、通知が入ってきたときに画面が点灯したときに気付くことしか出来ないのだ。
「誰だろ?」
明日美ではないことは確実だった。
なぜなら勉強する前まで連絡を取っており、勉強をするからという理由で連絡を取り合うことを一旦やめておくことにしたからだ。もちろん、テスト勉強が終わったら、「また連絡する」と送信しておいたので少なくとも僕が反応するまでは、よっぽどのことがないと明日美から連絡は来ないはずだ。
そこで次に思いつくのが竜也。
竜也とは明日美と違い、そういう会話をしていない。
だからこそ、突発的にLINEを送ってくる可能性は十分にある。
しかし、竜也は竜也で自分の目的のために必死に今も頑張っているはず。だからこそ、つまらない内容が送られてくることはない。
また分からないところでもあった?
少なくとも今回の件で明日美と竜也はLINEの交換をしていることは知っているため、何かあれば僕ではなく、明日美のところで連絡が行くはずなのだが、可能性としては十分にあり得る。
そう思った僕は仕方なく、スマホのロックボタンを一度押して、通知を確認する。
「え……? DM?」
通知画面に表示されているのは、TwitterのIDとその人からDMが来たという内容だった。
たしかに明日美がツイートした時など、すぐに反応来るようにお知らせの設定してある。あとはこうやってフォローしていない人から来るDMが来るとき用に一応解放してある程度。
ただ、それが今回来ただけに過ぎないのだが、僕はそのDMのIDにある違和感を覚えてしまっていた。
なんとなくだが、そのIDに見覚えがあった。けれど、フォローをしていないため、名前を確認するためにはDMからその人物のアカウントへ飛ぶ必要がある。
一瞬だが、僕はそれに躊躇してしまう。
勉強の見直しがまだ終わっていないからだ。
もし、ここでそのDMや送り主を確認してしまえば、そこで集中力が途切てしまい、ここで終わってしまう。
しかし、気になってしまい、勉強を続ける自信もない。
ちょっとの間、悩んだ末、僕はDMの件をサクッと終わらせてから、再び勉強に戻ることにする。
結果的にそっちの方が効率的にもいいと思ったからだ。
僕はロック画面を解錠すると、Twitterのアプリを起動させ、DMの画面へ飛び、リクエストの画面をタップした。
「……ッ⁉︎」
思わず、生唾を飲み込む。
息も止まり、世界の時間すらも止まったような感覚に陥る。
それぐらい驚愕的な人物からのアイコンとDMの内容だったから。
「な……んで……?」
自然とその言葉が漏れてしまっていた。
なぜなら、その人物との交流は終わり、二度と会話することがないと思っていたからだ。
その人物のTwitter名は、『なちゅ』。
僕が元推していた人物の名前とアイコンだった。
内容もまた全部は確認してないけれど、『ステルトンだよね?』という直球の内容のもの。
「どうしよ?」
ここまで来ると、なんとなく嫌な予感しかしない。
あの件以降、僕はなちゅから離れた。しかし、そのことは本人には伝えず、いきなり消える方向を取ってしまった。内容が内容だけに、このことを説明して推しを辞めて離れるなんてことは出来なかった。そもそも配信というものはそうやっていきなり消えようがリスナーにはリスナーの自由があるのだから、誰か何かを言われる筋合いはない。だから、行動的には間違っていないのだ。
しかし、こうやっていきなり別名を名乗っていることがバレ、DMが来てしまった以上は話をしないといけないのだろう。
そこで不意に『明日美に相談した方が良いのでは?』という考えに至る。
現状、僕は動揺してしまっている今、明日美の言葉はきっと精神を落ち着かせ、それなりの対処方法を考えついてくれると思ったからだ。
けれど、僕は……それをすることは出来なかった。
これは僕の問題であり、明日美には関係ないこと。
だから自分で解決しないといけないと思ってしまったからだ。
「覚悟決めるかな……」
深呼吸した後、そう呟き、僕はそのDMをタップし、画面を開く。
そして、一番に下にある『許可』ボタンを押し、そのリクエストを受け付けた。




