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告白した後の問題 5

 先ほどの挑発がチャラになったことに、竜也は少しだけホッとしたような表情を浮かべる。

 さすがに言い過ぎた、と思うことがあったのだろう。


「それがチャラになったんならいいや。しかし、二人が付き合い始めたのかー。なんか俺だけ取り残された気分だわ」


 自分だけ青春を味わっていないことに、少しだけショックを受けているような反応を取る竜也。

 僕はその点だけは少し同情してしまっていた。

 親友が付き合い始めたのに、自分だけ独り身であることの辛さは計り知れない。きっとこれからは気を使って、僕たちが気にしなかったとしても距離を作り始めるからだ。


「別に僕たちに気を使わなくていいからさ。何かあったら、また遊ぼうよ」


 だからこそ、こう言って距離を作られることを拒否する言葉を伝えておく。


「気を使うねー。そんなことより俺の望みは一つしかない!」

「望みは一つしかない?」

「何さ?」

「透じゃ何も出来ねぇよ。出来るのは明日美さんだけだ」


 急に真面目な口調でそう言いながら、明日美を見つめる。

 口調だけではなく、視線も真面目そのものだった。

 さすがにそんな真面目な視線で見つめられている明日美も、少しだけ緊張してーーることは一切なく、むしろ呆れた様子で見つめ返していた。

 どうやら竜也が言いたいことが理解出来たらしい。


「私に女子を紹介してほしいだけでしょ?」

「正解! 誰でもいいから頼むよ! そしたらダブルデートとか出来るじゃん!」


 両手を合わせて、拝むように頼む竜也。

 付き合っている側としてその様子を見てる僕としては、まるで滑稽に映ってしまう。いや、付き合ってなかったとしても、その光景は滑稽に映っていただろう。


「ダブルデートを別に望んでるわけじゃないけど、さすがにそれはどうなのさ」

「うるせーよ! 彼女持ちに俺の気持ちが分かるのか! このどうしようもない悔しさがッ!」

「悔しさ……ってだけでは分からないわけではないけどさ……」

「今の俺にはすがれるものはすがりたいんだよ! つーわけで明日美さん、お願いします!」


 そのうち土下座までしてしまいそうな勢いで頼む竜也に、明日美はちょっとだけ引いているようだった。

 そんな状態で明日美は僕の方へ視線を送ってくる。

 『どうすればいい?』

 こんなことを言っているような気がした。


 さすがに土下座までする様子は見たくないので、首を縦に振り、竜也のお願いを聞いてあげるように頼んだ。

 明日美もこれだけで僕の意図が分かったように、小さくため息を溢す。本当に()()()()()()といった様子で。


「いいよ。もしかしたら一人ぐらいは紹介出来るかもしれないから」

「マジで?」


 それだけ竜也は目をキラキラさせ始める。

 まるでお菓子を買ってもらい、喜ぶ子供のように。

 正直、キモい以外のなにものでもない。

 引き気味だった明日美はさらに引いているようだった。


「で、でもね? 一応、紹介はするけど、どうなるかは分からないからね?」

「それでもいいよ! それだけでも助かる!」

「それでいいならだけど……。あとはもう一つだけ条件つけてもいい?」

「どんな?」

「簡単だよ。さすがに赤点を取るような人を私も紹介したくないの。だから、学校最後の期末テストぐらい赤点なしにしよう? 私が勉強教えるからさ」

「……マジで言ってる?」

「うん、マジ。それだけで私も紹介するの頑張るから」

「……おい、透! ボケっとすんな! 勉強の時間だ! ゲームとかしてる場合じゃないぞ!」


 竜也はたったそれだけのきっかけで一気に勉強モードに入る。

 現金すぎるって。

 さすがにこの変貌ぶりに僕は驚くどころか、ちょっとだけムカついてしまう。

 まるで僕が竜也の勉強の邪魔をし、ゲームを誘った立場になっているような気がしてしまったからだ。


「全部、竜也が言い出した言葉のくせに……」

「うるせぇ! 今はそんな友情より勉強だ!」

「勉強じゃないから。女目的だから!」

「いいんだよ! ご褒美は必要だろ!

「ご褒美……ねぇ……?」


 その発言を聞き、僕は明日美を見る。

 もしかして僕も勉強を頑張ったら、明日美に何かご褒美をもらえるのでないか?

 そんなことを思ってしまったからだ。


 僕の発言から、明日美もなぜかチラチラとこちらに視線を送り始める。

 まるで僕から頑張るご褒美が欲しいかのように。

 どうやら貰う側としてお互い欲しいらしい。

 そのことをなんとなく理解した僕は思わず苦笑いを溢してしまうと、


「イチャついてるんじゃねぇよ! 俺は必死なんだよ! 俺の青春はここに掛かってるんだ! お前らも集中しろ!」


 竜也からそんな注意が飛んできた。


「はいはい、分かった分かった」


 僕はその言い方にムッときてしまったが、実際勉強をしないといけないのは事実のため、同じように勉強を再び再開させる。

 しかし、竜也ほど集中して勉強をすることは出来なかった。

 なぜなら、僕がしてほしいご褒美のことを考えたり、明日美がしてほしいご褒美などについて考えてしまっていたから。

 竜也ほどではないが、間違いなく心を邪心でいっぱいだった。


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