告白した後の問題 2
「なーんだ、やっぱりもう付き合ってたのか」
僕たちが答えられないという状況から、そういう風な答えを導き出したらしく、竜也はニコリと笑い続けていた。
まるで僕たちが付き合っていることを知っていたかのような雰囲気だ。
先ほどの流れから十分に察することは出来るということは分かっているため、もしかしたらカマをかけただけかもしれない。
そう思った僕は一旦、はぐらかすことにした。
「なんでそうなってるのさ。どこ情報?」
「質問した途端、二人が硬直したのが証拠みたいなもんだろ」
「いきなりそんなこと言われたら、誰でも硬直するに決まってるじゃん」
「そうかー? 俺はバレたら、すぐに『そうだ』っていうタイプだからなー」
「それ、自慢したいだけだから。そもそも隠さないでしょ、竜也の場合は」
「あ、それは言えてる! んで、明日美さんどうなの?」
僕がはぐらしにかかっていると思ったのか、竜也は未だに動揺を隠せないでいる明日美にそう尋ねる。
完全に答えを聞き出しにかかってるな。
そう思うには十分な行動だった。
同時に明日美の返答次第ではバレるのも時間の問題と思った僕は、付き合っていることを認める心の準備をしておくことにした。
「つ、付き合ってないよ? なんで私が透と付き合うことになってるの?」
「ふーん。俺の見立てでは透のことを好きだと思ってたんだけど、違った?」
「それは……好意という意味ではあるよ? 恋愛じゃないけど……」
「友達止まりかってやつか……。なんかドンマイだな、透」
そこでなぜか僕の肩をポンポンと叩きながら、同情する仕草をしてくる竜也。
このワザとらしい行動が少しだけ僕を苛立たせるが、何かの罠かもしれないと思い、グッと堪える。
「何がさ」
「やっぱ身分違いはダメだってよ」
「いつ、どこで、そんな流れになった? そもそも、それは僕が『明日美のことを好きだ』って遠回しに暴露してるようなものになってるけど、大丈夫?」
「大丈夫大丈夫。だって振られたようなものだから」
「まだ告白した流れにすらなってねぇよ!」
「してなくても振られたのさ。やっぱり透と明日美とじゃ釣り合わないってさ」
「だから、なんーー」
そこまで言いかけた時、「バン!」と机を叩く音が盛大に聞こえる。
その原因を作ったのは明日美。
今までない以上に明日美は竜也を睨み、怒っているようだった。
「なに、身分違いって? 釣り合わない? どういうこと? バカにしてるの?」
声もまた普段以上に低いものになっており、それだけで背筋が凍るような感じがしてしまう。
僕がそう感じるのだから、竜也もそうなのだろうと思い、竜也を見てみる。
平然とした表情をしていた。
むしろ、この展開を待っていたと言わんばかりの笑顔を作っていた。
「そういうことじゃないの?」
「違う! 私はそんなこと思ってない!」
「じゃあ、なんで友達止まりなの?」
「そんなのもうとっくの昔に終わって、付き合ってるもん!」
「だよな。その言葉が聞きたかっただけだから」
「は⁉︎ な、め……へ?」
ふと我に帰った明日美は、状況を把握し、自分のしてしまった単純な挑発に乗っかってしまったことに顔全体から火を噴くように真っ赤になってしまう。
僕は右手で顔を抑えつつ、ため息を溢した。
覚悟を決めておいてよかった。
心の底からそう思った。
「安っぽい挑発をどうも」
「どういたしまして」
「なんで分かったの。そこだけは知りたいんだけど」
「あーね。そこな」
竜也は腕を組み、「うーん」と唸り始めった後、語り始める。
「ここ最近かな? ほら、二人ほど密着した付き合いじゃないけど、わざと距離感を作ってるようなイメージがあったからだと思う。まぁ、直感ってやつだな。んで、さっきのいきなりの『付き合ってるの?』で確信。でも、やっぱり二人の口から聞きたいじゃん? だから、こういう挑発したらどっちかが簡単に乗るかなって気持ちでやってみた。これが今の流れだ」
竜也の説明を聞いて、僕はちょっとだけ口を開けてしまっていた。
学校でも普通の生活の中でも、そこまで意識した距離感を作っていたという気持ちはない。むしろバレないように自然に過ごしていたと思っていた。なのに見る人が見れば、そんな印象を受けてしまうことに驚きを隠せなかったのだ。
それはただ竜也が鋭いだけなのかもしれないが、もしかしたら何人かの人物にはバレている可能性がある。
そう想像するのは簡単だった。
「なるほどね。納得出来る部分もあるから、なんとも言えないかな」
「でもさ、『身分違い』とかいってごめんな。ぶっちゃけ思ってないから安心してくれよ。俺からすれば、二人の気持ちなんとなく察してた分、嬉しい立場だから」
両手を顔の前で合わせて謝った後、自分の気持ちを伝え始める竜也。
僕はそのことをあらかじめ知っていたため、あまり気にしていなかったが、そのことを初めて聞く明日美を見てみる。
明日美は明日美で色々と自爆してしまったことに対して、恥ずかしさ全開らしく、縮こまっていた。
「ううん。そんな安っぽい挑発に乗った私が悪いから。応援してくれてたんだね、ありがとう」
しかし、受け答えだけはしっかりと返す。
そして、僕の方を見て、
「ごめんね、私のせいで」
申し訳なさそうにそう言ってきた。
僕は苦笑いすることしか出来なかった。
こんな安っぽい挑発に乗るほど、明日美も恋愛関連では盲目になる可能性があることを知れたことが収穫だったとは死んでも言えないだろうが。
「大丈夫。いつかは伝えることだったし。そういうわけで一週間前かな? それぐらいから付き合ってるんだ。今までタイミングがなかったとはいえ、遅くなってごめん」
そう、いつかは伝えることだった。
それが今、このタイミングで伝える状況が来たということなだけ。
だから、僕にとっては実際何の問題もなかった。
「いいさ。伝える気持ちがあったっていうことだけは分かってたから、さっきの挑発を許してくれるならチャラってことにするぜ?」
そう言って、明日美の判断を委ねる。
もちろん、明日美はその判断に対し、首を縦に振ったため、交渉は成立された。




