告白した後の問題 4
「竜也だったよ、やってきたのは」
僕が部屋の扉を開け、明日美にそう伝える。
明日美は先ほどまで自分が座っていた場所に戻っており、イチャついていた時の様子など一切見せないほどの雰囲気で視線を勉強に戻していた。
「あ、そうなんだ。それで竜也くんは?」
僕に視線を向け、その後ろへ視線を向けて竜也を探していた。
表情は普通だったが、声はやっぱり笑っていない。っていうより、完全に先ほどのムードを壊れたことを咎めるかのような怒っている感じに近い声。
僕は明日美の言葉に答えるために、一旦視線を扉の外へ向ける。
竜也は階段は上りきっていたが部屋に入るまでの勇気が出せないのか、軽く項垂れている様子だった。
こっちはこっちで過去のトラウマを思い出し、始まる前からダメージを受けているような状態。
その板挟みになる僕の立場になってよ。
思わず二人にそう言いたくなったが、グッとこらえて、
「ほら、竜也。早く来なよ。明日美が待ってるから」
そう言いながら竜也に近寄り、無理矢理腕を掴むとそのまま部屋の中に引き摺り込む。
いつかは部屋の中に入る運命なのだから、部屋の前でうじうじされても時間の無駄以外なにものでもないのだ。
「ちょ、ま……あ、明日美さん、こんばんは……」
軽く抵抗した竜也だったが、部屋に入った瞬間、明日美に向かって挨拶をした。
なんとなく声が震えていたような気がしたが、僕はそれを無視して、僕は自分が座っていた場所へ座る。
「こんばんは、竜也くん。奇遇だね、こんな時間に会うなんて」
「あはは……そうだねー。本当に奇遇だねー……」
「透と一緒に勉強する約束でもしてたの?」
「え? あ、うん……そんな感じかなー……」
そんな適当な返事をしていく竜也。
まるで明日美が来ていることが予想外とでも言いたげな雰囲気を出している。
しかし、実際はその逆なのだ。
ここをつけば明日美の勝利が確定し、また言葉でボコボコにされる運命が目に見えているので、僕はしょうがなくフォローすることにした。
「嘘つかないでよ。竜也が来るって知ってたら、明日美にもちゃんと伝えてるから。いきなり来たのは竜也の方だろ?」
「ば、バカ! そんなこと言わないでいいんだよ!」
「言わなくていいも何も、別に来るって知ってたら、明日美は何も言わないって。ねぇ?」
あらかじめ来ると分かっていたら、明日美だって機嫌は悪くならないだろうと思って話を振ってみる。
しかし、僕の予想とは逆のものだった。
あまり表情的には変わっていないが、少しばかり頰を膨らませているように見えた。
つまり、今の僕の発言は明日美にとって失言となっていたらしい。
嘘でしょ?
今までとは関係が変わっているとは言えど、さすがに他人が来ると分かっていたら、そんな反応を取らないと思っていた僕には予想外の展開だった。
「そうだね。来るって知ってたら、それなりに心の準備はしてたと思う」
そんなことを言って同意はしてくるものの、やっぱり顔は依然笑わないまま。むしろ悪化したような状態だった。
けれど、この状態の明日美に対して、どんなフォローをしたらいいのか分からない僕は、
「だってさ! ほら、竜也も座れよ。一緒に勉強しようぜ」
無理矢理竜也に話を振り、未だに立ったままなので座らせようと試みる。
「お、おう。そうだな……」
さすがに竜也もキョトンとしているようだった。
明日美の雰囲気から的が竜也から僕に移ったことを察したらしく、僕と明日美を交互に見ながら、胡座をかく。
バレた可能性を考えて、ここから恋愛の話に持っていかせるわけにはいかないので、僕は強制的に勉強の話題へと持っていくことしか出来なかった。
「それで竜也は何が分からないのさ」
「分からないって?」
「勉強。分からないところがあるから来たんじゃないの?」
「あー、それか。違う違う。どっちかって言うと一人じゃ集中力が持たないから、二人でしたら集中力が増すかなって」
「……増すわけないでしょ。むしろ低下だよ」
「それも一興じゃね?」
竜也にとって『勉強する』というのが口実であることが十分に分かる発言だった。
結局は先ほど言ったように一番の目的は『ゲームをする』ということだったらしい。
呆れてため息を吐くにはいられない。
「大丈夫だよ。私がいるから勉強に集中出来るね」
以前、不機嫌な状態の明日美が僕たちの会話に入ってくる。
その発言に竜也はビクッと体を震わせ、
「そ、そうだね。ちゃんと勉強出来るねー……」
と現実を突きつけられた。
前回同様、多少の休憩は入れられたとしても、少なくともゲームをさせてくれるまでの休憩は取らしてくれない。それが明日美との勉強会だ。
目的が大外れした竜也は、盛大にため息を吐き、一応持ってきたカバンの中から教科書とノートを取り出す。しぶしぶといった形で。
「んでさ、いきなりなんだけど質問していい?」
竜也はシャーペンをクルクルさせながら、明日美に向かってそう尋ねる。
どうやら勉強モードに入ったらしい。
これで恋愛の話に流れることがないと思って、僕は一安心することが出来た。あとはその流れに二度と流れないように気を付けるだけなので、明日美がボロを出さないことを願うばかり。
「二人とも付き合ってんの?」
しかし、僕の安心をぶち壊すように竜也は突拍子もなく、そんな質問をしてきた。
僕も明日美も硬直してしまう。
心の準備なんてものは出来ていなかったからだ。
思考も完全に停止してしまったため、すぐには答えられず、それが当たっていることを教えてるも同然だった。




