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親友との真面目な話 2

 僕の思考は竜也のそれを聞いて、思わず停止してしまう。

 竜也が言おうとしていたことは最初から分かっていた。間違いなく、恋愛感情に関与した流れの話ではあることを。そもそも、こういう話をすると、どういう反応を取ってたらいいのか分からなくなる。だからこそ、僕は冬休み前から竜也との会話でこの話題を出さなかったのだ。


「な、なんでそんなことになってるの?」


 だからこそ、僕はトボける。

 この気持ちを知られたくないし、何より竜也が明日美のことを好きだった場合のことを考えると、簡単には頷くことは出来ないから。

 そんな僕の反応を見て、竜也は一瞬目を丸くした後、苦笑し始める。


「なんだよ、その下手嘘。全然誤魔化しきれてないじゃん」

「誤魔化すも何も、そんな気持ちーー」

「はいはい。どうせ、透のことだから『俺が明日美さんのこと好きだったらどうしよー?』とか間抜けなことを考えてるんだろ?」


 見透かされていた。

 しかも、間抜けなことを考えてる発言をされてしまった。

 勝手な考えをしてることは認めざるを得ない。けれど、それはお互いのためを思って考えていることなのだから、さすがにそこまで言われる筋合いはない。

 だからこそ、僕はイラッとしてしまう。


「竜也も明日美のこと好きなくせによく言うよ。早く告白すればいいじゃん」


 だから、同じように言い返す。

 後半は興奮に任せた勢いでの発言だったため、言ってしまった後に僕は後悔してしまう。


「なんで、そんなことになってんの?」


 竜也の返事は、僕が竜也に返した返事と全く同じものだった。

 しかし、返事が同じなだけで言葉の雰囲気そのものは違っていた。

 僕のものは動揺が混じっていたが、竜也の返事はあっさりとしたもので「意味が分からない」という言葉が後ろについてもおかしくないほど。


「いや、ほら……あのDMの時に気を使われて……」


 僕が思うきっかけなんて、それぐらいしか思い付かず、そのことをとうとう口に出してしまう。

 きっかけがあるとすれば、それ以外思いつかなかったから。


「あー、あの時? もしかして、二人っきりになった時に俺がそうなったとか思ってる?」

「え? DMでも『会いたい』とか言ってたんじゃないの?」

「それは否定出来ない事実ではあるんだけど、ちょっと違うんだよなー」


 竜也はその時のことを思い出すのが恥ずかしいのか、僕から視線を外しながら、後頭部を掻き始める。


「どういうこと? 恋愛感情とか抱いているから、会いたいって思ったんじゃないの?」

「間違ってはない。ワンチャンあるかも? とも素直に思ったさ。でも、結局はなんだかんだ恋愛感情とかじゃないんだよ。出会い厨の域ではあるけどさ」

「……最低じゃん」

「うるせーよッ! 珍しく本心語ってんだから、茶化すなッ!」

「それ、なおさら最低じゃん」


 竜也は言い方をボカしてはいるものの、完全にオフパコとかヤリ目の部類ではあることは間違いない。

 男の願望としてあることは否定出来ない(さが)だとしても、それを親友である僕に曝け出してどうするのだろうか。

 考えがやっぱり読めない。


「そこらへんはほっとけ。話が進まねぇから!」

「分かったよ。続きをどうぞ」

「とりあえずさ、そこの時点で恋愛感情はないだろ?」

「まぁ……その部分を聞くだけではないね」

「んで、問題は『そのことがバレて、透が部屋から出て行った後の行動』なんだよな。そもそも、透が勘違いしてるのって」

「勘違い? 慰めてもらってないの?」

「慰めてもらったといえばもらったけど……うーん……」


 歯切れが悪い竜也。

 なんて表現したらいいのか、まるで分からないと言った様子の反応を取っている。

 そんな竜也を見ていると、僕の方がモヤモヤしてしまうので、


「分かったよ。あまり聞きたくなかったけど、何をしてもらったのか教えてよ。それで僕も僕も判断するから」


 僕自身も嫉妬とか全て受け止めるつもりで、覚悟してそう口にした。


「……そんな風に言うなら言うけどさ」


 その一言を待っていたかのような言い方で竜也はその時のことを話し始める。


「ほら、なんか気を使って部屋からっていうか、家から出て行ったじゃん。たしかに頭は撫でてもらったけど、それどころじゃなくなったんだよな」

「それどころじゃなくなった?」

「だって透、病み上がりだったろ?」

「うん、そうだったけどさ」

「それなのに、『この家の主の一人を追い出してまでやることか?』ってなって、俺と明日美さんは反省会始めちまったの?」

「……反省会とは」

「さっき言った通りだよ。原因は俺で、それを悪化させたのが明日美さんって流れになったじゃん。『その原因を作らなければ、そんな流れをしなければ……』っていうことになって、二人とも落ち込んだんだ」

「落ち込むの辞めてもらえます? 僕が気を使った意味ないじゃん」

「気を使ってくれた人に言う言葉じゃないんだけど、それが余計だったんだよ」

「やめて⁉︎ 僕の気持ちを踏みにじるのやめて⁉︎」

「にじってはないだろ? すぐに『戻って欲しい』っていうLINE送ってないんだから」

「そうだった」


 言われてみれば、竜也の言う通りだった。

 僕が気を使ったことを把握してか、三十分ほど連絡が来てはない。つまり、竜也たちも竜也たちで僕の行動に対して気を使ってくれていた。

 けれど、僕だけが空回りの行動をしていたみたいになっているので、納得出来るものではなかった。


「でも、しょうがないじゃん。あの時、僕がいたら竜也も泣きそうだったのに泣けないし、明日美も慰めること出来なかったじゃん」


 だからこそ、その時の不満だけは口にすることにした。


「それに関してはなぁ……原因である俺に関してはなんとも言えないよな。泣く権利もないし、ネットでも晒されても仕方ない立場だったんだから」

「そうだよ、その通りだ!」

「煽るな! まぁ……でもさ、これだけは言えるんだぜ?」

「何さ?」


 あまりも納得出来なくて、僕はふてくされ気味にそう尋ねる。

 竜也は少しだけ言いにくそうに、頰をポリポリと掻きながら、


「ありがとう。気を使ってくれてさ。その気持ちだけでも嬉しかったんだ」


 珍しく素直な気持ちの感謝の言葉を言ってきた。

 なぜだろう。

 それまで(すさ)んでいた僕の気持ちは、その言葉を聞いた時点ですっきりしてしまったような気さえした。

 別にその言葉を望んでいたわけでもないのに。


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