問題解決? 7
僕の嫌な予感は二人もなんとなく察していたらしい。
明日美と竜也も少し気まずいような表情で、二人ともお互いの顔を見つめ合っていた。
そして、先に口を開いたのは竜也。
「そ、そんなまさか……なあ?」
「うんうん。同級生だよ? さすがに私の声分かるでしょ?」
「それはもちろんさ! あんな優しい子が明日美さんのわけがない」
「は?」
明日美のドスの聞いた言い方が放たれる。
それを聞いた竜也は慌てて口を塞ぐ。
日頃の行いから考えば、間違いなく竜也の場合は明日美に優しい扱いを受けているとは言い難い。しかし、それを口に出して言ってしまえば、さらにどうなるか予想が付いただろう。
本当にバカだ、こいつ。
思わず僕はそう思ってしまうほどの口の滑らし方だった。きっと人のことは言えないのだろうけれど。
「ともかくさ、明日美はそのDMを確認してみたら? 竜也だったら、もう謝罪文が書かれているかもしれないし。もしくは別の人が偶然同じタイミングで送って来たのかもしれないから」
竜也を助けるわけではないが、明日美にスマホを確認するように促す。
二人の言い合いを聞いているより、真実を確認する方が大事だと思ったからだ。
「そうだね。そっちの方が大事だよね」
明日美も同意し、自分のスマホを触り始める。
初めは緊張した面持ちだったが、突如青ざめた表情へと変わった。
それだけで僕と竜也は察するには十分な出来事。
「どうしよ……。謝罪文だった……」
犯人がまだ竜也と決まったわけではない。可能性としては十分に高いというだけではあるが、明日美は竜也を鋭い目で睨みつけた。
「ま、待ってくれ! 俺じゃないかもしれないじゃん! たまたま、同じタイミングで謝罪文を送ってきたかもしれないだろッ!」
恐怖に強張った表情で自分じゃないことを竜也はアピールし始める。
その通りだと思う。
思うけれど、問題はそれをどう見極めるか、ということだ。
……簡単だよね、これ。
一瞬、悩んだ真相を暴く方法など簡単なことだった。
「竜也に選択肢を三つ与えるから、好きなの選ぶといいよ」
いきなりの僕の問いかけに竜也は、
「いきなりなんだよ⁉︎」
と少しだけ声を荒げる。
「だから、そのDMが『竜也なのか、そうじゃないのか』の確認をするための方法だよ」
「お、おう」
「違った場合はノーダメージだから。もし竜也だった場合、どっちにしろダメージを負うからことになるから好きなの選ぶといいよ」
「……一応、言ってくれ」
僕の出す提案に怯えているのか、竜也は生唾を僕が聞こえるぐらいの大きさで飲む。
「いいよ。一つ目は『DMの名前を言われる』。これは内容も読まれないし、名前だけでの確認で済むから、一番ダメージが少ないと思う」
「おう」
「二つ目は『明日美にそのDMに来た内容を見せて、僕たちが確認する』。ダメージは負うけど、まだマシかなって思う」
「だいぶ酷くね?」
「酷くない酷くない。まだ普通だって。結局は確認する方法の違いなんだから」
「そうなのか? じゃあ、三つ目はもっと酷いってことじゃないのか?」
「酷いとは言えば、酷いかも?」
「とりあえず三つ目よろ」
「三つ目は『明日美がその内容を朗読する』。これに関しては竜也がもし『自分だ』って思ったら、ストップかけていいことにしてもいいよ。さすがに可哀想だし」
「……その制限があるなら、ワンチャンダメージが一番少ないのかもしれない」
「でも朗読だし、明日美が止まらなかったら意味ないと思うけど」
「……追い詰めるなって」
そう言って竜也は明日美へ畏怖の視線を送る。
まるで様子を伺っているようだった。
しかし、そこには鬼がいた。
右手の親指以外を上げ、数字の四つ目を作っている明日美の姿があった。
「『DMの内容を確認させて、そのまま朗読タイムに持っていく』って流れもあるんだけど、どれがいい? もちろん、それが竜也くんだって分かった場合ね?」
犯人だった場合の晒し上げパターンを提案された。
さすがの僕も晒し上げるつもりはなかったので、「うわぁ」と自然と声が漏れてしまう。
竜也の顔は完全に引きつっていた。
「マジ鬼かよ……」
「私を苦しめた罰ってことでいいんじゃない?」
「何が望みなんだ⁉︎」
「晒し上げ?」
「お金で解決出来ることはありませんか?」
「ないです」
「下僕や犬になるので許してください」
「いらない」
「なんで『晒し上げ』という一択しかないんだよ!」
「え、面白いから? あ、面白いついでにもう一個思いついた! 透、聞いて聞いて!」
「『聞いて聞いて!』とか浮かれた言い方すんなよ!」
竜也の悲痛のツッコミが飛ぶ。
もうびっくりするぐらい必死だった。
しかし、その必死さは明日美はスルーし、僕の同意も得ずに勝手に話し始める。
「『名前を晒した後、DMの内容を朗読、それを透に見せて確認させる』っていう五つ目の選択肢も思いついたんだけど、どうかな? ほら、私が捏造してる可能性もあるから、確認って大事だよね? そう思わない?」
最後はもう圧力だった。
僕に対しても、その拒否権はないようにさえ思えるほどの圧力が伝わってきた。
「うん、そうだね。確認って……大事だよね」
だから、僕も明日美から視線を逸らし、そう頷くことしか出来なかった。
すまん。許せ、竜也。
どこかの忍者漫画の一セリフが思わず脳内に浮かんできてしまうぐらい、心の中で謝罪しておくことにする。
「さて、竜也くんはどれがいい?」
僕の拒否権のない返事を同意を受け取った明日美は、無慈悲にも竜也へと確認を取る。
ほぼ確定された犯人扱いで。
竜也も状況的に逃げ場がないと悟ったのだろう。
涙目を浮かべていた。
そして、竜也の出した答えは一つしかなかった。
「もう五つ目でいいです。名前から言ってください。俺じゃないことを祈るけど」
弱々しくそう言った。
もう弱々しすぎて、こっちまで泣きそうになってしまう。
今度、何か奢ってあげよう。
そう心に誓う。
そして、運命の瞬間が幕を開ける。




