問題解決? 3
竜也がもうすぐ来て、この話題を話す流れになる以上、きっと逃げ道がないと思い、
「このタイミングで悪いんだけど、実はこの件について竜也にも少し相談に乗ってもらってるんだよね。だから、竜也が来てからでもいい?」
相談したことを白状する。
言い終わった後、僕は自然と目をギュッと強めに閉じ、身を引き締める。
それは自分が勝手な行動をしたことによる説教が始まると思ったからだ。
しかし、しばらく経っても何も起こらない。
それどころか先ほど同じ空気が流れ続けていた。
あれ? 大丈夫っぽい?
ゆっくりと目を開け、明日美の様子を見てみる。
明日美は何事もなかったかのような様子でスマホを操作していた。
「あ、あれ?」
「ん? どうしたの?」
「怒らないのかなぁって」
「何に対して?」
「明日美に黙って、竜也に相談したことに対して?」
「うん……まぁ、想像してた範囲だから怒らないかな? もし、何かで私が困って自分の中で解決出来ない場合は誰かに相談するって分かってたし」
僕の行動は明日美に見透かされているようだった。
何に対して、僕はこんなにも怯えてたんだろう。
まるでこんなことを考えさせられるほどに。
「一応、聞いてもいい?」
「え? 何を?」
「竜也くんが相談した時、なんて答えたか。たぶん、あとでもう一回相談に乗ってもらうかもしれないけど、聞いておいた方がいいでしょ?」
「それはいいけど。明日美が望む答えじゃないよ?」
「いいからいいから」
「確か、『その時がくれば、明日美も僕を頼って来るだろうから、その時に助けになってやれ』だったと思う」
「私の今後じゃないじゃん、それ。透を励ますための言葉になってない? しかも大真面目な返答はとは珍しいね」
「そりゃそうだよ。だって、その時はーー」
僕はその時のことを明日美に説明する。
屋上で話したこと、僕の行動に対しる質問をしたことを。
明日美はそれだけで何か気付いたのだろう。
ちょっとだけジト目で僕のことを睨んで来ていた。
しかし、見なかったようにして話を進めた結果ーー。
「もしかして、その時の屋上で話したことが原因で風邪引いたとか言わないよね?」
目は笑ってないけれど、笑顔でそう尋ねてきた。
「さあ、それは分からないかな。ほら、疲れからくる熱もあるしさ」
僕は目を逸らしながらそう答える。
今、言った通り原因の一つではある可能性が高いのは言うまでもないが、熱が出た原因までは分からない。現に竜也は風邪を引くことなく、元気に学校生活を送ったのだから。
もし、二人とも風邪を引いたのであれば間違いなく、原因だったかもしれないが……。
「ふ〜ん。まぁ、別にいいけど」
明日美は僕の言葉を全然信じていない様子だった。
風邪の原因は間違いなく『屋上で話したことが原因』だと思っているようだ。
僕自身もそう思っているのだから、明日美の反応は最もだろう。
その時、ピンポーンと玄関のチャイムが鳴る。
「あ、竜也来た!」
いい感じで逃げ道が出来たと思い、勢いよく椅子から立ち上がり、部屋から逃げ出す。
ナイスだ、竜也!
部屋から出る時に明日美から「いってらっしゃい」と軽く聞こえたが、視線は間違いなく呆れたものだった。
しかし、僕は気にせずに一階へと降りる。
そして、今まで同じようにチェーンロックを外さず、ドアだけを開ける。
ドアの隙間からは竜也の顔が見え、そこからVサインを見せて来た。
それが見えた瞬間、僕はドアを迷うことなく閉めた。
遅刻したのに息を荒げることなく、余裕の表情でそれをしてくる竜也にちょっとだけムカついてしまったからだ。
「ちょ! なんでだよ!」
外では竜也の喚く声が聞こえてくる。
ここで冷静に考えて、周りの迷惑になってることを理解した僕はしぶしぶドアを開け、
「すいません。人間違いです。あとうるさいので静かにしてください」
と僕が苛立ってることを伝える。
声のトーンがちょっとだけ違ったのか、竜也は少し引き気味になりながら、申し訳なさそうな顔つきになった。
「ごめんって。悪かったよ、遅れて」
「まったく。少しぐらい急いで来たような雰囲気見せてよ。雰囲気だけでもいいから」
「それもそうだよな」
「まぁ、いいけど。開けるから待ってて」
僕はいつも通り、チェーンロックを外して、ドアを開ける。
それを待っていたかのように待っていたかのように竜也が入ってきたので、再びチェーンロックと鍵を閉めた。
「そういや何してた?」
竜也が靴を脱ぎながら、いきなり僕にそう尋ねてきた。
「配信して、前に相談した迷惑な人が誰なのか聞こうとしてた」
「ふーん。そっかそっか。そこまで話が進んだのか」
「進むも何も風邪を引いた理由がバレて、険悪なムードになりつつあるよね」
「マジ? バカ正直に言ったの?」
さすがの竜也もその件に関して、驚いた様子だった。
まるで、それを言うと明日美が怒る可能性があることを知っていたかのような口振り。
僕は自分の間抜けさと竜也にでも分かった出来事に対しての認識の甘さに、嫌気が差し、少しだけ自己嫌悪に陥りそうになってしまっていた。
「口が勝手に動いたの。しょうがないじゃん」
しかし、もう過ぎてしまったことなのでどうしようも出来ない。
竜也にそれだけ言って、僕は先に二階へと上がっていく。
部屋に入れば、また何か言われるのかなぁ……。
そんな不安を心に抱えながら。




