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相談した結果 2

 なんだこれ?

 僕の意識がはっきりしていくと同時に、ある一つの感触が伝わってくる。

 それは額に置かれた冷たいもの。

 氷嚢(ひょうのう)? 濡れタオル? 冷えピタ?

 ここで考える現実的なものと言えば冷えピタだろう。今の時代、氷嚢や濡れタオルなんてものは時代錯誤すぎるからだ。

 同時に僕の中で『母さんが帰ってきた?』という考えが思い浮かぶ。

 もしかして、野田が仮病を疑い、母さんに電話した可能性が思いついたためだ。


「ん……っしょ……」


 まだ痛む関節と頭痛を堪えながら、僕はゆっくりと起き上がる。

 すると額に置いてあったであろう濡れタオルが、僕の布団の上にボサッと落ちた。

 え、濡れタオル?

 ちょっとだけ予想外のものが置いてあり、一瞬それから目が離せなくなってしまう。


「なんで?」


 布団に落ちた濡れタオルを手に取る。

 もう結構時間が経ったらしく、その濡れタオルは生温くなっていた。

 え、今何時?

 そう思って、窓を見る。

 まだ明るくかった。

 改めて時間を確認するためにスマホを探そうと枕元を見る。

 寝落ちする前に僕は枕の近くに放置して寝たはずだから、周囲を軽く調べるも見つからない。


「なんで?」


 再び疑問の言葉を漏らしてしまう。

 枕を持ち、枕の下に潜ってないか確認する。

 見つからない。

 そして、周囲を確認する。

 スマホは手に取るにはちょっと遠い勉強机の上に置かれてあった。


「寝ぼけて置いた?」


 僕は記憶を探る。

 一切、そんな記憶というものは思い出せない。

 全ての謎は闇の中と言った状況だった。

 ともかく身体に痛みがなるべく走らない程度の最低限の動きでベッドの上を動き、最後は手を伸ばす形でスマホを手に取る。

 ただ、この時僕は掛け時計の存在があることを忘れていた。結局のところ、いつも手に持っているものがスマホである以上、時間を確認する=スマホがデフォルトになっていたらしい。もちろん、LINEなどの通知も気になるため、最終的にはスマホを手に取ることにはなっていたのだが……。

 時間は午後二時ちょっと過ぎたくらいだった。


「通りで明るいはずだ」


 僕はそう呟き、ロック画面に映った通知を確認する。

 明日美と竜也からのLINEとTwitterでフォローしている人からのツイートした情報が通知として来ていた。

 その時、階段を誰かが上がって来る音が耳に入って来る。

 ちょっとだけドアを眺めるも、すぐにスマホのロックを外し、LINEの方を確認。

 竜也の方は「風邪を引いて羨ましい」という竜也からの文句と心配する文章、明日美からは「今日配信したいんだけど?」という内容のものが届いていた。

 明日美の方を先に返事しないといけないと思い、文字を打ち込もうとした時、ちょうどドアのノックが控えめに「コンコン」と鳴る。


 しかし、僕はそれを無視した。

 別に寝ていようが寝ていまいが入って来るのは間違いない事実なので、今さら気にしてもしょうがないと思ったからだ。

 そんなことよりも明日美にしばらく連絡をしないといけない。「風邪を引いて、しばらくは配信は無理」だということを伝えることが先決だと思ってしまっていたからだ。

 僕が必死に文字を打っていると、部屋のドアがおそるおそる開き、


「失礼するよ〜」


 と小さな声で遠慮がちに聞こえた。

 ん?

 僕はその声の主が母さんではないことを理解した。

 母さんはそんなことは言わない。

 言うとしたら、「ちょっと良い?」ぐらいのさりげない言葉だから。

 その言葉に動揺した僕は間違えて、送信ボタンを押してしまう。

 そして、聞こえる小さな通知音が部屋に入ってきた主から聞こえてくる。


「あ、おはよう? 大丈夫?」


 明日美だった。

 なんで平日の昼間に僕の家にいるのか、謎しか浮かばない人物がそこにいた。

 しかも、切られたリンゴとフォークが置かれたお皿を持った状態で。


「な、ななななななな……」


 言葉にならない言葉を上げ、意識のうちから離れていた濡れタオルを思い出す。

 濡れタオルを置いたのは明日美かよぉ‼︎

 なぜか頭の中でよく分からないアニメでよく言われるツッコミがされた。


「『なんで明日美がここにいるの?』って言いたいんでしょ?」


 先ほど、僕が言葉にならなかった続きを明日美はわざわざ言ってくれた。いつも座っているパソコン用の椅子に座りながら。

 それに僕は迷うことなく頷く。


「それはLINEの返事がなくて、竜也くんに尋ねたら、風邪引いて学校を休んだって聞いたからだよ」

「あ、そーなんだぁ」


 余計なこと言いやがって。

 竜也に対して、思わず心の中で毒を吐く。

 そんなことを言わなければ、明日美は来なかったに違いないのだから。

 え? 本当に?

 僕の中でその愚痴に対し、その確認が始まってしまう。

 確かに竜也は僕が休みの報告をした。けれど、報告をしただけだ。何も「僕の家に行って看病をしてあげてくれ」なんて台詞、明日美の口からは聞いていない。つまり、ここにいるのは明日美の独断なのだろう。じゃあ、なんでここに来たのか? 別に来る必要は一切ない。むしろ風邪を移したくないので、来て欲しくないぐらいなのに……。


「あのさ、なんでここに居るの?」


 どれくらい間が空いたかは分からないが、僕はその質問を明日美にする。


「え? 家に一人かなって思って看病しに来たんだけど?」

「うん。結果、一人だったけどさ。別に看病しに来る必要はなかったんじゃあ……?」

「一応、先月と今月でいろいろあったから、またヘラってないかなって。身体が弱ってる時って、心も弱るでしょ?」

「そういうの聞いたことあるけどさ。それより前にどうやって家の中に入って来たの?」

「あ、そうそう! 家の鍵閉めてないとか不用心だよ? 風邪引いてても戸締りはちゃんとしないと!」


 真面目な口調で明日美はそう言ってきた。

 そ、そうだったああああああああ‼︎

 その時、僕はそのことを考えながらも力尽き、寝てしまったことを思い出す。


「本当、私じゃなかったらどうなってたことか」


 子供をまるで注意するような口調で明日美はそう言っているが、実際明日美が僕の家の中に入って来ている時点ですでに問題であることは間違いない。

 そのことを僕は注意するべきか、しないべきか、正直迷ってしまっていた。


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