竜也に相談
翌日。
僕は竜也に明日美の件のことを相談することにした。
正確には相談ではなく、愚痴に近い形の内容なのだが、答えを求めている以上、相談なのだろう。同意はいらないのだから。
それを聞いた竜也も少しだけ真剣な表情になり、考えてくれているようだった。
「なるほどなー。そんなことになってんのか。とりあえず俺から言えることは現在一つだけだわ」
「うん。なに?」
「なんでこんなクソ寒い日に屋上で、その話を聞かないといけないわけ?」
竜也は相談内容ではなく、屋上にいることを言及してきた。
そう、僕たちは今学校の昼休み、屋上にいる。
防寒具もなしで。
防寒具を着ていないの理由は、学校でその防寒具を来て歩いていると、屋上に行くことがバレてしまうという理由からだ。
「人目の付かないところで話さないと意味ないじゃん」
「それは分かる。すげー分かる。けどさ、そんなの後でもいいじゃんかよ! 電話でもいいだろうがッ!」
「いち早く相談したかったんだよ」
「だったら昨日の時点で話せよ!」
「話そうと思えば話せたけどさ、やっぱりそのことを誰かに相談してもいいか分からなくてさ。悩んだ結果だよね?」
「悩むんだったら今日の放課後、家に帰るまで悩んどけよ!」
身体を震わせながら、竜也はそう不満を言ってくる。
正直、これは正論だ。
僕だって寒い。
だけど、少しでも話したくなってしまったのだからしょうがない。
竜也の不満に言い返す言葉が見つからない僕はその話を無視することにする。それ以外の逃げ道なんて思いつかなかったからだ。
「んで、どう思う?」
「無視かよ!」
「さっさと答えてくれたらあったかい部屋に行けるって」
「そういう問題じゃねーよ!」
竜也は大きく一度身体をブルっと震わせながら、そのことに対して文句を言ってくる。
だから僕も少しだけ可哀想になってきたので、
「分かった分かった。ちゃんと答えてくれたら、あとでコーヒーぐらい奢ってあげるから、それでいいでしょ?」
と提案を出す。
「当たり前だ! 無条件でこんな寒いところに来させて、その話の内容の求められた回答を答えるってどういうドMだよ!」
「竜也のことじゃん」
「ちゃうわ!」
「でも来てるじゃん。っていうか、ほら早く! 僕も寒いんだからさ」
「自業自得だろうが!」
「果たしてそれはどうだろうか?」
「うるせー! そうやってボケるから話が進まないだろ!」
「確かに。んで、真面目にどう思う?」
竜也はそこで一旦口を閉ざし、小さく息を吐く。
先ほどまでヒートアップしていた自分を落ち着かせるような行為だった。
「どうもこうも明日美から本当に助けを求められるまで、何も出来なくね? 話ぐらいは聞くから、お前も男としてそこはドンと構えとけよ」
まともな意見が言われる。
僕はその発言に少しだけ驚いてしまっていた。
普段がこういうボケや弄られキャラである竜也から、こんなまともな意見が聞けると思っていなかったからだ。
ギャップがありすぎる変化に僕はついて行けず、思わずしばらく無言になってしまっていた。
「黙んなよ、寒いんだから。納得したなら納得したぐらい言えって」
僕の反応を見ていた竜也は呆れた口調でそう言ってきた。
「ごめんごめん。まさか、本当にまともなことを言ってくると思ってなくてさ」
「おい、どういう意味だよ」
「自分のキャラを考えて」
「だから、どういう意味だよ!」
「間の抜けた発言をすると思ってた」
「うるせーよ! この寒い中、誰がそんなこと言って、自分を潰すと思ってんだよ!」
「竜也」
「してねーだろうが!」
「今はね? 普段は?」
「……ノーコメントで」
ちょっとだけ悩んだ末、竜也の出した回答はそれだった。
どうやら思い当たる節があるらしい。
そもそも、付き合いが長い僕がそう言っているのだから、思い当たる節しかないのは当たり前のはずだ。
けれど、まともな意見を言ってくれたことには素直に感謝するしか出来ない。
だから僕は素直にお礼を言うことにする。
「ありがとう。竜也の言う通りではあるよね」
「どいたま。っていうか、さっさとコーヒーを奢ってくれ。風邪引く」
「風邪引いたら、学校休めるけど?」
「それもそうか。よし、もう少しここにいよう。俺は明日休むわ。んで、明日美に心配してもらって、看病に来てもらう流れを作ろう。それがいい」
「寝言は寝て言えば?」
「寝てねーよ! 起きてるよ!」
「叶わぬ夢を見るのはいいけど、ずっと叶わないままだから悲しくなるけど大丈夫?」
「やめろ。透がこのことを報告すればいいだろ? それで叶う確率が高くなる」
「なんて報告するのさ?」
「そりゃあ、『明日美のことを心配で、竜也に屋上で相談したら、風邪引いちゃったんだ。だから、看病しに行ってあげてくれない?』とか?」
「相談したことを言ったら、僕が怒られるから言うつもりないけど? っていうか、それ言ったら相談した意味ないじゃん」
「……あれ? じゃあ、もしかして?」
「うん、ただ学校を休めるだけ」
「……それだけでもありかもしれん」
竜也は無駄に前向きだった。
どうやら本当に学校を休みたいらしい。
僕が知ってる限りではそれなりに休みを取っているイメージがあるため、単位を落として留年しないか気になるところではあった。
けれど、本人の意思はどうやら固いらしい。
だから僕もその意思を尊重し、もう少しだけ付き合うことにした。




