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不穏な通知 2

 その通知に明日美はちょっとだけ反応し、近くに置いていたスマホを手に取り、通知の内容を確認する。内容を見た瞬間、「あ……」と小さく声を漏らし、スマホを操作することもなく元の位置に戻した。

 僕はその反応に少しだけ違和感を覚える。

 まるで見たくないものに蓋をするような感じだったからだ。

 他の人は分からないけれど僕の場合だと、その通知内容を見たところで声を漏らさないし、漏らした場合は何かしらの重大な内容だと思うため、即座に返信をする。

 だからこの流れの場合、僕はスマホを操作する方が正しい形だと思った。

 明日美が何も気にしてない風を装い、マウスを操作しているため、本来は気にしない方が正しい選択肢なのかもしれない。


「ねぇ、何かあった?」


 けれど、僕はその選択肢を選ぶことが出来なかった。

 気になってしょうがなかったのだ。

 明日美は僕の質問に身体をピクッと反応させる。

 今までの明日美ではあまり見なかった光景。

 だから、何かあったのだと確信を得るには十分な反応すぎた。


「何にもないよ。DMが来ただけ」

「DM? それってTwtterの?」

「うん。ただそれだけのこと」

「それって配信用でしょ? つまりリスナーからじゃないの?」


 明日美には個人用と僕が作って渡した配信用の二つがあるのは知っている。

 ただ、個人用の方は何に使っているかはさておき、そんな反応をするほどの相手と連絡を取るぐらいであれば、すぐにでも返事を返すはず。そもそも、明日美がそんな相手とわざわざ連絡をするぐらいなら即座に縁を切っていると思う。

 つまり、それが簡単に出来ない相手だと考えるのが妥当な流れだ。

 だからこそ、そんな良い顔をして相手しないといけないのであれば、間違いなくリスナーの誰かだろう。


「ううん、個人用だよ? 何の心配してるの?」


 しかし、明日美の返事は僕とは違うものだった。

 でも、いつもと違う感じでもある。

 それは少しだけムキになったような言い方。

 そのことに触れて欲しくないような雰囲気での返事だった。

 ただ、現実は残酷だ。

 明日美の反応とは裏腹にまた通知音が鳴る。間髪入れずに三回も。

 けれど、明日美はそれを確認しようとはしなかった。

 いや、しなくても誰から通知が来たかのような感じでスマホで確認するつもりも、反応をするつもりもないらしい。


「見ないでいいの?」


 僕は改めて確認する。

 もちろん意地悪で言っているつもりはない。

 もしかしたら別の人かもしれないという気持ちで尋ねているだけなのだ。


「うん。いいの」


 そう言って冷たく返される。

 本当にそのことに触れて欲しくないような感じだった。


「そっか。じゃあいいけどさ、もし困ったことがあるなら相談してよね。少なくとも僕もあの時の件で恩感じてるから、力になりたいと思ってるしさ」


 ただ、僕の純粋な気持ちを伝えておく。

 この言葉が実際ちゃんとした意味で伝わるのは分からないけれど、言っておくに越したことはないのだから。

 明日美はその言葉に反応する様子は見せない。

 黙々と画像を探していた。

 だから、僕も自分のスマホを触ることにする。

 明日美がこうやって画像を探している以上、僕はすることがない。だから、スマホで買っている電子書籍を読むぐらいしか出来なかった。


 しばらくの間静かだったが、また明日美のスマホから通知が鳴る。

 今回は一回だったが、先ほどと同じく返事を急かしているようにしか聞こえなかった。

 不意に明日美は「はぁ〜」と疲れたような息を吐き、スマホに手に取り、操作し始める。

 どうやら根負けして、返事を返しているらしい。


「ねぇ、透。聞きたいことがあるんだけど聞いていい?」


 明日美はそう言いつつ、スマホを片手に椅子を回転させ、僕を睨むように見つめる。

 見つめ方もだが、その聞き方もちょっとだけ怒ったような言い方だった。

 八つ当たりされるのかな?

 今まで見たような拗ねるような怒りではなく、本当の怒り方のような物言いだったため、そう思ってしまった。

 けれど、先ほど僕の気持ちを伝えた以上、それに対して受け入れることしか出来ず、


「いいよ。どうしたの?」


 と返事をすることしか出来ない。


「あのさ、透は配信用のTwitterって、今も見れるの?」

「いや、見れないよ。パスワード覚えてないし」


 今言った言葉に嘘はない。

 確かに僕が配信用のTwitterは作り、明日美に渡した。渡した後、二、三日はそのままだったが僕の電話番号を使用していたため、それを削除してからログアウトした。

 そのため、今ではそのパスワードすら覚えていないため、ログインすることも不可能なのだ。


「本当に?」


 まるで僕の言葉を信じてないかのように、尋ねてくる明日美。


「本当だって。もしかして今、スマホ触ってるから疑われてる感じ?」

「そういうわけじゃないけど」

「画面見てみる?」


 そう言って、僕は自分のスマホの画面を明日美に向け、漫画の部分を見せる。

 こんなことで証拠にはなっていないのは分かっているが、確認をさせることは大事だと思うため、念のための行為だ。

 案の定、明日美の疑いの目は治らなかった。

 そこで僕はそれを証明する方法を考える。

 ちょっとだけ考えた後、あることを思い出す。


「あのさ、今までのDMの履歴覚えてる? 履歴っていうより、メールボタンをタップした後の連絡主が分かる最初の画面」

「うん。それは分かるよ」

「じゃあ、既読したのと既読してない部分では色が違うのは?」

「まだ見てない人には色が違う形で表示されてるよね」

「そうそう。もしあの時僕が見てたら、その色が既読された時の色になってると思うんだよね。だから、あのタイミングで僕がまだそのDMを見てたら通知音も届かないし、既読された状態になってると思うよ?」

「……そっか。今までもそういう様子もなかったし、本当にログアウトしてるんだ……」


 さすがにこれには納得したらしく、明日美の様子は少しだけ穏やかなものになる。

 しかし、僕の中で何かあったということだけは確信になっていた。

 そのことをどうやって尋ねるか。

 僕はそのことに頭を必死に悩ませる。

 相手は僕以上の切れ者のため、簡単にはボロを出さないのだから。

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